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「男子ってバカだから」で済ませる危うさ。弁護士・太田啓子が語る、子育てで気をつけたいこと

  • 2026.10.31
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2020年に刊行した著書『これからの男の子たちへ』で、太田啓子はこの家父長制の社会に浸透している“男らしさ”が、男の子に呪いをかけ生きづらくさせていると指摘。性差別やジェンダーのゆがみの構造を理解し、それを変えていく人間に育つよう、当事者や親たちに呼びかけた。

「あれから6年がたち、講演に伺うと中学高校の先生方が、性やジェンダーの問題をどう生徒たちに伝えようかと試行錯誤している様子が見えるなど、変化を感じます」。本の中で、アニメや広告など子どもが日常的に接する表象から、ゆがんだ女性観や性的同意についての誤った感覚を刷り込まれることに問題意識がある、と記しているが、表象の問題について以前と比べれば世間も敏感になってきた。

「人間は子どもの頃から社会の中で生きている存在で、家庭から一歩外に出ると、他者との関わりの中でさまざまな価値観に触れて社会性を身につけていきます。社会の中の価値観自体にゆがんでいるものがあっても、それに適応し、そのまま受け入れて育ってしまうことがある」。

性差別的価値観にあちこちで無自覚にも接してしまう社会で子育てをする難しさ、とりわけ男の子を育てる難しさについて、さまざまな声が聞こえてくる。例えば外の世界に触れ始めると、偏見や有害な男性性など、家庭内とは別の規範を吸収してくるなど。「男の子同士で仲良くするのが悪いわけではないのですが、ホモソーシャルなノリ、例えば仲間意識を高めるために暴力的で露悪的な行動を競い合う、あるいは女性や性的マイノリティを排除するような行動の萌芽は、低年齢のうちから注視しておきたい。近年は若い男性を主な視聴者層とする動画チャンネルなど、ミソジニーをあおって視聴回数を増やすことで金儲けをするマノスフィアが、ネット上でかなり存在感があり軽視できません」。

また、家庭内にジェンダーバイアスが根ざしていることもある。「授業参観に来るのは母親ばかりとか、母親が家事をしている間、父親は自分の趣味を楽しんでいることはよくあるのに逆はほとんどない、というような状況を子どもが日常的に見るのはやはりよくない。子どもは大人のすることをよく見ていて、反面教師とすることもありますが、まねをすることもあります。男女の役割分担はそういうものなんだという、マイナスの意味での『教育』になってしまうことも。大人たちが対等な関係性を、家庭でも社会でも子どもに見せることこそ大切な教育です」

❝講演に伺うと中学高校の先生方が、性やジェンダーの問題をどう生徒たちに伝えようかと試行錯誤している様子が見えるなど、変化を感じます❞

右:<strong>『男と女、どっちがずるい?10代のジェンダー、49の疑問と悩み』</strong>▶作家のアルテイシアとの共著。10代のジェンダーに関する悩みを、二人の対談形式で答えていく。(集英社) 左:<strong>『これからの男の子たちへ「男らしさ」から自由になるためのレッスン』</strong>▶韓国や台湾などでも翻訳出版されているロングセラー。(大月書店) Hearst Owned

仕事で離婚事件を多く扱ってきて感じるのは、母親の息子への接し方についての問題だと太田。その背景には、育児が極端に母親に偏らされてきたという構造がある。「『男子ってバカだよね』は実際に母親たちからよく聞かれる言葉です。愛情を込めて発せられるものですが、立ち止まって考えてみる必要があります。男の子は幼いままでいい、多少乱暴なのも仕方がない、そういう発想で接することが積もり積もったらどうなるのか。そこを可視化して変えていきたいところ」。

今春出版した共著『男と女、どっちがずるい?』では、「女はいつも配慮されてずるい」「女性専用車両は逆差別」と考える男子生徒の話題が出てくる。「性別問わずいろいろな生きづらさがあり、解決されるべき課題に優劣はありません。でも性差別を変えていこうとする動きについて『女ばかりずるい』と捉えてしまうのは、社会構造が見えていないということ。男性は、女性であることに起因する暴力や差別は受けません。例えば女性のほうが性暴力被害にあいやすいとか、男女収入格差の大きさなど、年齢が上になるほど身近で具体的な話をします。自分も不完全な社会の中の一構成員でありつつ、でも変えていくことはできるし、おかしなことは変える責任もあるよね、と」

太田啓子

弁護士。神奈川県弁護士会所属。家族関係の問題を主に手がける。関心事はジェンダーと憲法。明日の自由を守る若手弁護士の会(あすわか)メンバーとして「憲法カフェ」を各地で開催。単著に『これからの男の子たちへ』、共著に『男と女、どっちがずるい?』『いばらの道の男の子たちへ』(光文社)など。

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Illustration: HiromiI Chikai, Editor: Mina Oba From Harper's BAZAAR November 2026 Issue

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