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【中学受験】「第一志望がダメなら公立」の夫に絶望… 1月の不合格で感じた夫婦の温度差

  • 2026.10.29
cocreco写真:Paylessimages/イメージマート

「中学受験は、親子の受験」とよく言われます。でも、実際に多くの保護者を取材していると、もうひとつ見えてくるものがあります。

それは、「夫婦の協働が求められる受験」でもあるということ。

今回お話を伺ったのは、今年中学受験を終えたCさん(仮名)。娘さんは大手中学受験塾に通い、難関校を目指して努力を続けてきました。

しかし、Cさんが一番苦しかったと振り返るのは、夫との、あまりにも大きな「温度差」だったのです。

佐野倫子(さの・みちこ)

東京生まれ、早稲田大学卒。現在、東京大学大学院情報学環教育部在学中。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。おもな著書に『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)。2人の男の子の母。現在中受伴走2周目中。

「公立でもいい」が口ぐせの夫

──Cさんご夫妻は、ひとりっ子でいらっしゃる娘さんの中学受験はいつごろから考えていたのでしょうか。

Cさん:夫も私も中学受験を経験しているので、子どもに受験をさせるのは自然な流れでした。入塾は新小2からで、歩いて通える近所の大手塾にしました。

娘は穏やかな性格で、ちょっぴり積極性に欠けるところがあります。自分から「質問しよう」「自習室へ行こう」というタイプではありません。だからこそ、親が環境を整えてあげることが大切だと思っていました。

一方で、夫とは「中学受験だけが人生じゃない」という考えも共有していたので、公立中学校の説明会にも一緒に足を運びました。

「子どもにはさまざまな選択肢を与えてあげたい」。それが夫婦共通の考えでした。

cocreco写真:Trickster/イメージマート

──それでは中学受験の勉強を始めながらも、公立に行くという選択肢もご夫婦の頭の中にあったのですね。

Cさん:はい。ところが、受験が本格化するにつれ、その「選択肢」という言葉が、私には違って聞こえるようになっていきました。

夫は、学年が上がり、テストや模試の結果が返ってくるたび、「第1志望じゃないなら意味がない」「そこへ行くくらいなら、公立でいい」という言葉を繰り返すようになりました。

いくつかの志望校が具体的になっていくと、それに伴って毎回そのセリフが出てきます。

私は毎日、塾の宿題を確認し、学習スケジュールを考え、志望校を調べ、学校説明会へ足を運び、娘の小さな変化に一喜一憂していました。

その現実を見ていない人から、「公立でいい」の一言だけで片づけられることが、どうしても苦しかったのです。

一番苦しかったのは「夫と話すこと」

──娘さんは順調に勉強を進めていたかと思われたものの、6年生の夏前に成績が下がり始めたとのことで、さぞ心配だったことと思います。

Cさん:はい、猛烈に焦りました。「何につまずいているんだろう」 「どう立て直せばいいのだろう」「志望校を変える?」など、毎日考えてばかりいました。

実は私自身、中学受験、大学受験、国家資格試験を経験しています。比較的試験や入試が得意だったので、娘に対して「どうしてここでつまずくんだろう」と理解できないこともありました。

娘と私は違う人間だと頭ではわかっているのに、感情が追いつかないんです。

そんな私を見て、夫は「のめり込みすぎじゃない?」と言いました。その言葉に、とても怒りを覚えましたね。誰かが娘のサポートをしなくては、中学受験は立ちいかなくなります。

私が学校説明会へ行き、夜遅くまで併願校を調べ、塾へ相談し、模試の分析をしているのは、娘のため。

「のめり込んでいる」のではなくて、母親として、必死だっただけです。それなのにそんなふうに言われて、憤りを覚えました。

cocreco写真:maruco/イメージマート

──6年生の後期、パパのほうはもう少し冷静になれと伝えたかったのだとは思いますが、それまでの「貢献度」によっては神経を逆なでられたように感じてしまいますね。

Cさん:娘が5年生になったころに、私は仕事を辞めて専業主婦に。だから伴走は私の仕事だという意識もありましたし、大黒柱の夫に、強く意見を言うのは気が引けていました。

結局、夫は「ある一定の偏差値以上の学校じゃないなら公立でいい」と、偏差値表に引いたボーダーラインを最後まで動かそうとはしませんでした。

私は夫と話すたびに、ひとりぼっちになっていくような気持ちでした。

「栄東不合格」それでも夫は変わらなかった

──夫婦の結論が食い違ったまま、受験本番期に突入したのですね。

Cさん:そのまま夫が主張するボーダーより上の学校だけを配置した受験本番が始まりました。1月の前受け校はひとつだけ。唯一受けた栄東中は、五分五分という想定でしたが、不合格。

この結果に、私は激しく落ち込みました。1月は栄東中のみの受験と決めていましたから、次は2月・大本命の学校の入試です。私は気持ちを切り替えようと必死でした。

一方で夫は、相変わらず冷静でした。冷静というより、感情が見えませんでした。「ダメなら公立」その考えは最後まで揺らぎませんでした。

cocreco写真:mapo/イメージマート

Cさん:私は、「どうしてそんなことが簡単に言えるんだろう」とずっと思っていましたね。何年も積み重ねてきた努力も、本人の思いも、挑戦してきた日々も、もし夫が認めた学校に合格できなかったらすべて無駄になってしまうように感じたからです。

もちろん、公立中学校が悪いという話ではありません。問題だったのは、「子どもの気持ち」ではなく、「学校の名前」だけで線引きをしているように見えたこと。

娘はそんな親の空気を敏感に感じ取っていたと思います。それでも最後まで、とても気丈に受験会場へ向かってくれました。親よりも、ずっとたくましかったですね。

「第1志望は不合格」今、思うこととは?

──結果的に、お子さんの第1志望は不合格だったとお聞きしています。でも今は併願校で合格した学校に楽しく通っているそうですね。

Cさん:2月校は、なんとか1日午後に進学したいと思える学校に合格できました。夫はあまり納得のできない学校だったのですが、そこで合格したおかげで、残りの日程は全部チャレンジ校を受けることができました。

そして結果、唯一合格したのが1日午後の学校だったので、家族全員、納得して進学することができました。

とはいえ、本当に紙一重の受験で……。

夫は、「2日の夜まですべての学校の合否は見ない、なぜならその結果で受験校を変えることはないからだ」という理論を譲りませんでした。

でも、私はとてもそんなふうには思えず、実はこっそり1日の夜に合格発表を見ていたんです。

それで午後校の合格を知ったので、夫が組んだとおりのラインナップに乗りましたが、実際は、もし不合格だったらこっそり出願して、2日の午後にとある安全校を受験させようと思っていました。

そこは夫の主張する線引きの下の偏差値でしたが、全滅だけは絶対に避けたい、という一心でした。

今振り返ると、夫は夫なりに、「受験が人生のすべてではない」と伝えたかったのかもしれません。

ただ、もう少し寄り添ってほしかったと今でも思っています。まあ、我が家ほど極端じゃなくても、夫婦がまったく同じ方向を向くことは、案外難しいですよね。

だからこそ大切なのは、意見を一致させることではなく、子どもの幸せだけは見失わないことなのだと思います。

───◆───◆───

中学受験では、親子の関係性だけでなく、夫婦のタッグも試されます。夫婦の温度差に苦しむ保護者は決して少なくありません。

それは中学受験が、家族それぞれの価値観と向き合いながら、子どもの未来を一緒に考える貴重な時間であることのひとつの証左なのかもしれません。

取材・文/佐野倫子

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cocreco『中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと』(講談社+α新書)著:佐野倫子
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