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「大事なものは貸金庫にある」と言い残した80代父→死後、1,500万円の通帳を取りに行くが…50代息子を襲った“思わぬトラブル”

  • 2026.11.1
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出典元:PIXTA(※画像はイメージです)

皆さん、こんにちは。現役銀行員ライターの加藤隆二です。

大切なものを守る場所といえば、何を思い浮かべますか? 家の金庫や、タンスの引き出しなど、ご家庭によってさまざまでしょう。なかには、銀行の「貸金庫」を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

銀行の貸金庫は、火災や盗難への備えとして非常に安全な保管場所です。しかし、使い方を誤ると、いざという時にご家族が大変な苦労を背負うことになります。

今回は、ある銀行窓口で実際に起きた、貸金庫にまつわる「想定外のトラブル」のエピソードをご紹介します。

頼れる父親が遺した「安心の言葉」

貸金庫はセキュリティが厳重であるがゆえに、契約者ご本人以外が触れるハードルは想像以上に高いものです。

ある日の午後、私が担当する銀行窓口に、50代の男性・Aさんが血相を変えて飛び込んできました。

お話を伺うと、数日前に80代のお父様が急逝されたとのこと。お父様は生前、「実家の土地の権利証や、預金1,500万円ほどの通帳、そして遺言書など、大事なものはすべて銀行の貸金庫にあるから安心しろ」と口癖のようにAさんに伝えていたそうです。

Aさんは「父の貸金庫を開けて、遺言書と通帳を取り出したいんです!」と窓口でおっしゃいました。お父様の言葉を信じ、貸金庫さえ開ければ相続手続きがスムーズに進むと考えていらっしゃったのです。

貸金庫の扉を開くための「高い壁」

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

しかし、契約者が亡くなられた後、ご家族がすぐに貸金庫を開けられるわけではありません。そこには厳格なルールが存在するのです。

私は心を痛めながらも、銀行のルールとして事実をお伝えしなければなりませんでした。

「申し訳ございません。お父様がお亡くなりになった現在、貸金庫を開けるには『法定相続人全員の同意』と、それを証明するための『相続人全員の印鑑証明書』、そしてお父様の出生から死亡までがわかる『連続した戸籍謄本』などが必要になります」

これを聞いたAさんは「なんでだ! 大事な遺言書がその中にあるんだぞ! それがないと誰が相続人か確定しないじゃないか!」と絶句し、肩を落とされました。

Aさんはご兄弟やご親戚と連絡を取り合い、遠方に住む相続人からも書類を取り寄せるため、大変な時間と労力を費やすことになりました。遺言書を取り出すために、遺言書がない状態で相続人を確定させるという、矛盾した「デッドロック」に陥ってしまったのです。結果として、貸金庫を開けるまでに数か月もの時間を要し、Aさんは銀行窓口でただ途方に暮れるしかありませんでした。

大切な家族を困らせないための「正解」とは

このような悲劇を防ぐためには、生前の「保管場所の選び方」が何よりも重要になります。

今回のAさんのケースでは、お父様は「遺言書は安全な場所に」という親心から貸金庫を選ばれたのだと思います。しかし、こういった場合は、ご自身が亡くなった直後に必要になる書類(遺言書や葬儀費用のための口座の通帳など)は、貸金庫に入れないように注意すべきでした。

では、このような状態を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。以下のような制度を活用することで解決できます。

  • 法務局の遺言書保管制度を利用する:自筆証書遺言(ご自身で書いた遺言書)の場合は、法務局の「遺言書保管制度」を利用するのがおすすめです。紛失や改ざんを防げるうえ、ご本人の死後にご家族が法務局で手続きをすれば、スムーズに遺言書の内容を確認できます。
  • 公正証書遺言を作成する:公正証書遺言(公証役場で作る遺言書)であれば、原本は公証役場で保管されるため、ご自宅に控えを置いておいても紛失や隠匿のリスクをカバーできます。

銀行の貸金庫は確かに安全ですが、「開けやすさ」という点ではご家族にとって不便になることもあります。皆さんも、ご自身の財産や遺言書をどこに保管するか決める際は、「残された家族がどうやってそれを取り出すのか」までセットで考えてみてくださいね。


執筆者:加藤隆二
現役銀行員ライター。保有資格:FP2級(個人資産相談業務)。銀行勤続30年以上の豊富な融資・預金業務の現場経験を活かし、生活に直結するお金のリアルな事情を発信し続けています。

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