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「通帳がないし管理が楽だよ」70代父にネット銀行を勧めた40代息子→父の死後、直面した壁に“途方に暮れたワケ”【銀行員は見た】

  • 2026.11.2
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さんこんにちは、現役銀行員ライターの加藤隆二です。

最近はスマホ一つで残高照会や振込ができる便利な世の中になりました。「記帳の手間が省けるから」と、ご自身の口座をアプリで管理している方も多いでしょう。中には、ご高齢の親御さんにも「通帳レスの方が管理が楽だよ」と勧めたご経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

確かに便利なサービスですが、実はお金に関する“あるタイミング”で、その便利さが思わぬ足かせになることがあります。今回は、良かれと思って親にネット銀行を勧めた結果、親御さんが亡くなられた後に絶望的な壁にぶつかってしまった40代男性のエピソードをご紹介します。

なぜ便利なはずのデジタル管理が事態をややこしくしたのか。そして、残されたご家族が困らないために私たちができる対策について、現役銀行員の視点から優しく解説していきます。

便利さの裏に潜む落とし穴

デジタル技術の進化により、私たちの生活は劇的に便利になりました。しかし、金融サービスにおいては、その「見えない化」がリスクを伴うこともあるのです。

都内の会社に勤める40代のAさんは、実家で暮らす70代のお父様が、毎月わざわざバスに乗って銀行へ記帳に行き、生活費を引き出していることを気にかけていました。

「お父さん、今はスマホで残高が見られるし、ネット銀行の方が通帳がないし管理が楽だよ」と、Aさんは親切心からネット銀行の口座開設を手伝いました。

お父様も「わざわざ銀行に行かなくて済む」と喜び、年金の受取口座もそのネット銀行に変更したそうです。これで親の負担が減ったと、Aさんは安心していました。

突然の別れと見えない遺産

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

数年後、お父様が急激に体調を崩し、帰らぬ人となってしまいました。悲しみに暮れる間もなく、Aさんは相続の手続きを進めることになったのですが、ここで予期せぬ事態に直面します。

遺産分割協議を進めるためには、お父様の全財産を把握し、財産目録を作成する必要があります。実家の片付けをしていたAさんは、従来の銀行の紙の通帳は見つけましたが、数年前に開設を手伝ったはずのネット銀行のキャッシュカードや、口座情報が書かれたメモをどうしても見つけることができませんでした。年金の書類も、片付けの途中で処分してしまったのか見当たりません。

ネット銀行は紙の通帳が発行されないため、口座の存在を証明する物理的な手がかりが極めて少ないのです。「たしかあの銀行だったはず」と見当をつけても、お父様のスマホはロックが解除できず、どの銀行のアプリが入っていたのかさえ確かめられません。

Aさんは途方に暮れ、「親父の口座にいくら残っているのか、そもそも本当にあの銀行だったのかすら確認できない……」と頭を抱えてしまいました。

銀行側の厳格な手続きの壁

なんとか銀行のカスタマーセンターに連絡を入れたAさんですが、事態はそう簡単に進みません。私たち銀行は、お客様の大切な財産とプライバシーを守る義務があります。そのため、電話口で安易に口座の有無や残高をお答えすることは、銀行の守秘義務や規定上できないのです。

口座の有無を照会するだけでも、お父様が亡くなったことや、Aさんが正当な相続人であることを証明する公的な書類(戸籍謄本など)を郵送で提出し、厳格な手続きを経る必要がありました。手探りで複数の銀行に照会をかける手間と時間は膨大で、Aさんは「便利なはずのネット銀行が、よもやこんな形で残された家族を苦しめるとは思いもしなかった」と深く後悔することになりました。

相続放棄をするかどうかは、原則として亡くなったことを知った日から3か月以内に決める必要があります。相続税がかかる場合は、10か月以内に申告と納税をしなければなりません。財産の全体がわからないまま、期限だけが迫っていきました。

「エンディングノート」や情報の共有が家族を救う

Aさんのようなケースは、デジタル化が進む現代において決して珍しいことではありません。ご家族が同じような苦労をしないために、今からできる備えについてお伝えします。

このような事態を防ぐための有効な対策は、「口座情報のリスト化」と「ご家族間での情報共有」です。すべての銀行名、支店名、口座番号を「エンディングノート」や紙のメモに書き留め、ご家族のどなたかがわかる安全な場所に保管しておくことを強くお勧めします。

年金の受取口座にしている場合は、毎年届く年金振込通知書にも金融機関名が載っています。こうした書類もノートと一緒に保管しておくと、ご家族の手がかりになります。

ログインIDやパスワードは本人だけが使うものなので、書き残す必要はありません。亡くなった後に家族がログインしてお金を動かすと、ほかの相続人とのトラブルのもとになります。相続の手続きは、口座がわかれば銀行の手続きで進められます。

便利なデジタルサービスも、家族の絆と情報共有というアナログな備えがあってこそ、最後まで安心して利用できるものです。相続の手続きは、口座のある金融機関ごとに行います。ネット銀行の場合は、相続専用の電話窓口や受付フォームが用意されているので、まずはそちらに問い合わせてください。

ぜひこの機会に、ご家族でお金や口座の管理について、少しだけ話し合ってみてはいかがでしょうか。


執筆者:加藤隆二
現役銀行員ライター。保有資格:FP2級(個人資産相談業務)。銀行勤続30年以上の豊富な融資・預金業務の現場経験を活かし、生活に直結するお金のリアルな事情を発信し続けています。

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