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“退職金2,000万円”を受け取った60代男性→「早く返そう」住宅ローンを一括返済したところ…6ヶ月後、直面した“予想外の事態”

  • 2026.11.8
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPで住宅ローンと老後資金の相談を数多く受けてきた柴田です。

「借金は早く返すのが正解」。多くの方がそう考えますし、間違いではありません。ただ、退職金で住宅ローンを一気に返すと、思わぬところで困ることがあります。

今回は、退職金で住宅ローンを完済した60代のAさんのお話です。

完済で「これで肩の荷が下りた」

Aさん(60代男性)は今年の春、勤めていた会社を退職し、退職金2,000万円を受け取りました。住宅ローンは残り10年、残高は約1,200万円。金利は年1.3%の固定です。

「利息を払い続けるのはもったいないし、気持ち的にも借金は完済しておきたい」と考え、Aさんは退職金で住宅ローンを一括返済しました。手元に残ったのは約800万円です。

ところが半年のあいだに、築20年を過ぎた家の屋根と外壁の修繕に約280万円、古くなった車の買い替えに約250万円がかかりました。通帳の残高は約270万円。「老後の資金がこれだけになってしまった」。Aさんは通帳を手に不安を感じ、しばらく悩んだそうです。

減らせた利息は思ったより少ない

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

相談に来られたAさんに、私は一括返済の損得を計算してみました。

残高1,200万円・残り10年・年1.3%のローンを最後まで返した場合、これから払う利息は約80万円です。一方、同じ1,200万円を年0.5%の定期預金に置いておけば、10年で税引き後約48万円の利息が付きます。差し引きすると、一括返済で得をした金額は約30万円ほどです。

退職すると給与という収入がなくなり、年金だけでは毎月の生活費が足りない世帯も少なくありません。そのうえ、家の修繕や車の買い替えは数百万円単位、介護が始まれば毎月の費用がかかります。

こうした出費は、住宅ローンのように毎月決まった額ではなく、ある日まとめてやってきます。ローンは毎月少しずつ返せますが、修繕費や介護費はそうはいきません。手元のお金が少ないと、そのたびに残りの貯蓄を大きく取り崩すことになるのです。

低い金利で借りているローンほど、早く返して減らせる利息は小さくなります。今のように預金金利が上がってくると、その差はさらに縮まります。

一括返済で手放したもの

一括返済で失ったのは、手元のお金だけではありません。

住宅ローンを借りるときに加入する団体信用生命保険(団信)は、借りた人に万一のことがあったとき、残りのローンを保険金で返してくれる仕組みです。ローンを完済すれば、この保障もなくなります。Aさんの場合、もしものときに家族に残るはずだった「ローンのない家」という安心を、自分で先に買い取った形になりました。

また、住宅ローン控除の適用期間中であれば、ローンが残っているうちは所得税などが軽くなります。Aさんは控除の期間がすでに終わっていましたが、期間中の方は一括返済の前に必ず比べておきたい点です。

私がAさんにお伝えしたのは、借金は「金利」だけで見るのではなく、「手元の現金」とセットで考えるのが基本だということです。特に退職後は収入が年金中心になり、まとまったお金を新たに用意するのが難しくなります。だからこそ、現金をどれだけ手元に残せるかが、何より大切になるのです。

無理に一括で返さなくても、必要な分だけ返して、残りは生活費や予備費に回しておく。そのほうが、よほど安心できる老後になるというのが私の考えです。

返すなら「一部だけ」も選べる

住宅ローンの繰上げ返済は、全額でなく一部だけ返すこともできます。退職後の生活費や、家の修繕・車・介護といった数年以内に必要になりそうなお金を先に確保し、それを超える分だけを返せば、手元資金を残しながら利息も減らせます。

一部繰上げ返済には、返済期間を短くする「期間短縮型」と、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」があり、退職後は返済額軽減型を選べば、年金生活の毎月の負担が軽くなるでしょう。ただし、住宅ローン控除を受けている方が期間短縮型を選び、残りの返済期間が10年未満になると、その年から控除を受けられなくなる点には注意が必要です。

なお、銀行によっては一括返済に数万円の手数料がかかることもあるため、事前に確認しておくと安心です。

まとめ

Aさんは「借金がなくなれば安心だと思っていましたが、お金が出ていく予定のほうを先に考えるべきでした」と話していました。今後は年金と残った貯蓄で、出費の予定を立て直すことにしたそうです。

退職金で住宅ローンを返す前に、これから5〜10年で出ていくお金を書き出してみてください。ローンを返すかどうかは、その後に決めても遅くありません。


参考:
繰上返済(個人住宅融資の場合)(独立行政法人住宅金融支援機構)
機構団体信用生命保険特約制度(独立行政法人住宅金融支援機構)

執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,500記事以上の執筆実績あり。

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