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襲名記念『四代小川長樂展』日本橋三越本店にて開催

  • 2026.10.27
「白流し練込赤茶盌」W12.2×D12.2×H8.3cm / Yasuo Kubota(bowpluskyoto)

樂焼の伝統を、いまに受け継ぐ「長樂窯」

京都五条坂の地に1906(明治39)年に開かれた「長樂窯」。開窯以来、120年間にわたり、千利休の美意識を反映した樂焼の伝統を受け継ぐと同時に、「小川長樂」を名乗る代々の当主が、新たな作風を生み出してきました。2024(令和6)年、父である三代小川長樂さんの跡を受け、長男の小川裕嗣さんが四代小川長楽を襲名。京都で開催された昨年の襲名記念展に引き続き、東京の日本橋三越本店で襲名記念展が開かれます。

轆轤(ろくろ)を使わず、「手づくね」と呼ばれる手法で一碗一碗を両手で成形し、やはり一碗一碗を小さな窯で焼く樂焼は、まさに「一期一会」のやきもの。四代長樂さんは、こうした伝統の黒樂・赤樂に加え、自身の個性を存分に発揮した作品にも挑戦してきました。そんな作品のひとつが「焼貫(やきぬき)茶盌」です。

固く焼き締まった、独特の表情を持つ「焼貫茶盌」

「通常は、窯の内部に内窯と呼ばれるもうひとつの窯を仕込み、その中に作品を入れ、炎が直接当たらないようにして焼きます。私は内窯を使わず、備長炭の炎に直接作品を当て『焼貫』と呼ばれる従来の手法より、さらに高温で焼成しました。その結果、備長炭の灰をかぶり、固く焼き締まった、独特の表情を持つ作品が誕生しました。この独自の手法を用いることにより、これまでの樂焼には見られない、プリミティブな力強さと現代的なシャープさを持ち合わせた茶盌になったと思います。その一方で、一服のお茶を飲んだらさぞ美味しいだろうと思わせるような器であることを、この作品に限らず、どの茶盌でも大切にしていきたいと考えています」

長樂さんは、「焼貫」の手法で、壺も手掛けました。硬く焼き締まった感のある肌に、複雑な表情をもたらす釉薬の流れ。艶やかでしっとりとした黒樂や赤樂とは異なる、作家としての長樂氏の個性が存分に発揮されています。

「焼貫茶盌」2026年 W12×D11×H8.4cm Yasuo Kubota(bowpluskyoto)
<strong>「</strong>焼貫壺<strong>」2026年 </strong>W30×D30×H28.5cm Yasuo Kubota(bowpluskyoto)

後に続く代のために、よい土を確保しておく

「よい土を使う。やきものは、まずそれが必須条件です。私が使っている土は、祖父が後の代のためにと確保し、50年以上寝かせておいた土です。今回の茶盌には、高台から少し上の部分まで、あえて釉薬を掛けず、土味がそのまま見えるようにした作品が幾つかあります。茶盌を持ったとき、てのひらに直接触れる土の素朴な感触は、やきものが土からできていることを思い起させてくれます。よい土を残しておいてくれた祖父に感謝すると同時に、私自身もこれから続いていく代のために、よい土を探さなければならないと思います」

「赤貫入茶盌」2026年 W12.2×D12.2×H8.7cm Yasuo Kubota(bowpluskyoto)

ひとりの作家として、時代が求める「樂焼」を追い求めていく

展示作品は茶盌を主に、壺と花入が加わった計60点。とりわけ、焼貫茶盌、白流し練込赤茶盌、藍釉黒茶盌、礫釉赤茶盌など、用いる釉薬や焼成方法の違いによって生じるさまざまな表所の茶盌が並ぶさまは圧巻です。

「先代が存命中に『長樂』の名を襲名したのは、じつは私が初めてです。祖父や父の背中を追いかけてきた私にとって、『長樂』の名前を引き継ぐことは身の引き締まる思いです。長樂家は、千利休以来の樂焼の伝統を守る一方で、代々が新たな手法を生み出してきました。今回の展覧会で用いた『藍釉(ぐすり)』もそのひとつです。日本人に馴染深い色である藍を、なんとかして樂焼で表現できないかと試行錯誤し、ようやくたどり着いた色です。作品名は『藍釉黒茶盌』。漆黒のなかに、微かに感じられる藍の兆し。それは黒をより引き立てると同時に、藍という色がもつ美しさを、際立たせています。新たな釉薬や焼成方法に代々が立ち向かっていったように、私もひとりの作家として、時代が求める『樂焼』を追い求めていきたいと思います」

「藍釉黒茶盌」2026年 W12.8×D12.6×H8.8cm Yasuo Kubota(bowpluskyoto)
©Mitsuyuki Nakajima

おがわちょうらく〇1978年三代目小川長樂の長男として京都に生まれる。名古屋造形芸術大学(彫刻)・京都市産業技術研究所工業技術センターを卒業。2013年の京都での初個展を端緒に、日本橋三越本店をはじめ、日本各地はもとよりケルン、ポートランド、ニューヨークなどで個展を開催する。また、華道や能などの伝統芸能とのコラボレーション、あるいは伊藤若冲をテーマにしたインスタレーションなど、伝統の世界だけでなくさまざまな分野で活動。2024年建仁寺小堀泰巌猊下より「無隠軒」の軒号・長樂の字を賜り、四代長樂を襲名する。2025年京都にて「襲名記念四代小川長樂展」開催。

■『襲名記念 四代 小川長楽展』

伝統的な樂焼を手掛ける窯として知られる京都の「長樂窯」。2024年、四代小川長樂を襲名した当代による作品展。樂焼の伝統を守りつつ、一人の陶芸家として土と向き合うことによって生み出された、“現代の樂焼”と呼ぶにふさわしい作品が並びます。
会期/2026年10月28日(水)~11月3日(火・祝)
時間/10時~19時(最終日~17時)
tel.03-3241-3311(大代表)
◎ギャラリートーク/11月1日(日)13時〜13時45分 「四代小川長樂×株式会社銀座もとじ代表取締役社長 泉二啓太氏 対談」
会場/日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊
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東京都中央区日本橋室町1-4-1

日本橋三越 公式サイト

撮影=久保田康夫(bowpluskyoto) 編集・文=櫻井正朗

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