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【CHANEL GRAND PARFUMEUR】シャネルの香りを創る人 SPECIAL INTERVIEW

  • 2026.10.26

自社で香料を管理しているから、自由な創作を行える

現代の科学ではたいていの香りが解析でき、科学的に作り出すことも可能だ。そうしたテクノロジーを駆使する一方で、シャネルは自然に敬意を払い、天然の花と香料にこだわりを持ち続けている。調香師であるオリヴィエもしばしばグラースの畑に足を運び、生産者と緊密な連携を図ることに労をいとわない。オリヴィエはこう語る。

「フレグランスをつくるための花が足りないからという理由で農業に関わるようになったわけではなく、私たちは農業そのものに自分たちの時間と知識を投資する必要があるという考えにいたったのです。香り創りにおいて原料は何にもまして重要なものです。原料そのものと深く関わり、時間をかけて取り組むこと。長年にわたり、知識を蓄積してきたからこそ、現在では世界中にパートナーと呼べる生産者がいて高品質な原料を調達できるのです。自分たち自身で道具(=原料)を持っているからこそやりたいことを実現できる、クリエイションの自由が保障されるのです」

その人の肌と共に生きている。一日の中の香りの進化を楽しんで

フレグランス創りにおいてシャネルは時間の制限をかけないことはよく知られた話だ。クリエイターとしてオリヴィエ自身は時間をどのように捉えているのだろうか。

「フレグランス創りにおいて時間はとても需要です。例えば毎年、収穫があります。その年の収穫量を見ながら、その後1年間にどれだけのローズが必要になるかを考えなければいけません。そしてレ ゼクストレ ドゥ シャネルについて言えば、香りを“発見するための時間”というものがあります。試香紙につけて一瞬、嗅いで終わるのではなく、肌につけて一日を過ごしてみる。パルファムは一日を通して、その人と共に生きています。ある香りが次第に強くなったり、別の香りが前に出てきたり。フレグランスには一日の中での“進化”があるのです」

様々なフレグランスのボトル
©CHANEL

伝統を守りながら、挑む。新しいクリエイション

さらに「シャネル グラン パフューマー」の2つのコレクションについてオリヴィエはこう続ける。

「レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネルはシャネルにとって重要な側面を取り上げたコレクションです。オードゥ コローニュを除いてすべてオードゥ パルファムで濃度やテクスチャー、香りのシグネチャーという意味で興味深いバランスを持っています。パルファムで展開するレ ゼクストレ ドゥ シャネルはまた別物。最初期のクリエイションに立ち返り、よりリッチな原料を用い、フォーミュラをさらに深みのある香りへと発展させました。 レ ゼクストレ ドゥ シャネルはよりフォーマルでドレスアップするような感覚。スプレーするのではなく、ほんの数滴を肌にそっと置くようにつける。とても親密でパーソナルな所作です。二つのコレクションはどちらが優れているという話ではなく、それぞれに役割が異なるのです」

香りを文化たらしめるものへ昇華するシャネルの矜持がここにある。

オリヴィエ ポルジュさん
©CHANEL

「フレグランスとは単なる原料そのものを超えていくもの。フォーミュラの構成や原料そのものへの取り組みなどのすべてがシャネルのフレグランス創りに繋がっています」

シャネル専属調香師

オリヴィエ ポルジュ

シャネルの4代目専属調香師。3代目専属調香師である父、ジャック ポルジュを父親にもつ、フレグランス界のサラブレッド。世界的フレグランスメーカーで研鑽を積み、数々のヒット フレグランスを手がけた後、2015年に現職に就任。以降、レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネルのミシアを皮切りに同1957やガブリエル シャネルなどを調香。

シンプルなデザインほど、完璧でなくてはなりません

「常に引き算を。余計なものをつけ足さないこと」という言葉を残したガブリエル シャネルのデザインはシンプルの極み。シャネルのデザイン コードを忠実に守りながら、現代にマッチするプロダクトデザインを成功させてきたシルヴィは語る。

「シンプルであることとラグジュアリーであることは矛盾しているように思えるかもしれません。ラグジュアリーと聞けば、大きなオブジェやたっぷりと使われたガラスやゴールドなどを想像する人もいるでしょう。しかし、シャネルのデザインはとてもシンプル。私たちのDNAであり、これからも守り続けていくものです。複雑なパッケージなら欠点を隠すことも可能。でもシンプルなものは何も隠せないし、嘘もつけません。シンプルなデザインだからこそ完璧でなければならないのです」

レ ゼクストレ ドゥ シャネルのボトルは前作よりも格段にガラスの透明感が際立っている。

「ボトル ストッパーのデザインそのものは変えていません。だからこそ、このボトル ストッパーに私たちが実現できる限りのエクセレンスを注ぎこむことが重要でした。ボトル ストッパーのすべてをガラスがまるでクリスタルのように完全に透明に見え、フレグランスそのものを美しく引き立てるようにしたかった。そのためには、すべての面を丁寧に再研磨する必要があり、その仕事ができるガラス職人を探したのです」

レ ゼクストレ ドゥ シャネルのボトルのデザイン画
レ ゼクストレ ドゥ シャネルのボトル

時代が変わっても形を変える必要がないものもある

こうして磨き上げられた透明なガラス製のボトルに収められた美しい香り。レ ゼクストレ ドゥ シャネルには、パルファムを開封するときに使う小さなハサミが同梱されている。

「パルファムのデザインは今でも時代に合っていると思います。N°5のボトルがそうであるように、形を変える必要がないものもあるのです。デザインをいじるのではなく、クオリティをさらに高いところまで押し上げたのです。このパッケージのクオリティを守りたいと考えたときにあるアイディアが浮かびました。日本で裁縫をするときに使うような糸切りハサミです。ヨーロッパではあまり見かけないこの形がとてもエレガントだと感じました。このハサミを使う所作も美しいですよね。服作りにも関係する点もクチュール メゾンとしてのシャネルとの繋がりを感じさせますよね。私のチャレンジは、どこにでもあるようなものであるハサミを、美しいものに仕上げることでした。技術的な道具でありながら、非常にデリケートで美しい。けれど同時に、あくまでハサミは主役ではありません。主役はフレグランスなのですから」

シルヴィは自身のことをよく「神殿の守護者」に例える。

「私には2つの使命があります。ひとつは過去を守り、尊重すること。ガブリエル シャネルや前任者が生み出したものを尊重し、そのストーリーを続けていく。過去を尊重しているからこそ、反対側では大胆なイノベーションができるのです」

パルファムと共に発表された、ガラス製のパース スプレイはアートピースのような美しさと実用性を兼ね備え、現代の女性のライフスタイルに即したものだ。変わらないものと進化を遂げるもの。両方を最高の形で届けてくれるシャネル。だから私たちは常に魅了されてしまうのだ。

シルヴィ ルガストゥロワさん
©CHANEL

「もう何も足す必要も引く必要もない。完成だ! と思うパッケージはただ直観でこれが求めていた形だと感じるもの。取り組み続けて、ようやくたどり着けます」

パッケージ・グラフィックデザイン制作責任者

シルヴィ ルガストゥロワ

パリのデザインスクール、E.D.P.Iを首席で卒業し、ベルギーの装飾絵画学校で学んだ後、1984年にシャネルに入社、93年より現職。デザインのみならず、細かな調整、検証、モデルメーカーとの折衝などあらゆる工程に携わる。ガラス製ケースの口紅、トランテアン ル ルージュや香水ガブリエル シャネルなどを手掛けた。

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取材・文/平輝乃

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