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ガストロノミーは現代アートのひとつ、アンヌ=ソフィ・ピックのレストランとバーがオープン。

  • 2026.10.22

アンプレニャシヨン(浸透)を哲学に、素材の香りとテクスチャーが相互に影響しあって生まれる味わいを探求するアンヌ=ソフィ・ピック。世界最多の星を持つ女性シェフである彼女の新しいレストランとバーが、パリ・リヴォリ通りのカルティエ現代アート財団内にオープンした。

9月初め、カルティエ現代アート財団内に、待望のレストラン&バーをオープンしたアンヌ=ソフィ・ピックとチーム一同。©epicurian

ミクソロジーに捧げられたバー「ユトピック」

中央のバーカウンターではチーフバーマンのマエル・ジェゴが腕を振るう。レストランとは入り口は分かれている。©Jacques Pépion for Moinard Bétaille

9月4日に扉を開けたのは、バー「ユトピック」。ユートピアとシェフの名前を組み合わせた名のバーは、飲み物に捧げられた空間だ。長年にわたってスパイスやアンフュージヨン、蒸留、発酵、スピリッツを対話させながら独自のミクソロジーを追求し、ワインを超えた料理と飲み物のマリアージュを提案してきたシェフは「ユトピックは私が何年も前から作りたいと夢見てきた理想のバー。料理とミクソロジー、おもてなしの美学が対話する新しい場所です」と語る。5種のノンアルコールを含む22種のカクテルとともに、フランスの伝統料理を再解釈したコンテンポラリーなフィンガーフードも提案するバーは、彼女のクリエイションのエスプリを手軽に体験できるアドレスでもある。

左:リンゴ、黒豆、マッカラン ダブルカスク12年をミックスした「Le Clair-Obscur」6cl 28ユーロ。©epicurian 右:ニヨンの黒オリーヴ、シャルトルーズ・ヴェルト、バニラ、ジンの「Le Sacrilège」9cl 20ユーロ。©epicurian
左:「Les Escargots de la Vallée de l’Eyrieux」エリユー渓谷産のエスカルゴのクロメスキ。エストラゴン風味で中には黒ニンニクがとろり。16ユーロ。©epicurian 右:「Le Croqu’Utopic」トリュフ風味のハムコンテチーズのモルネーソース、スモークバニラのクロックムッシュ。19ユーロ。©epicurian

バーではレジデンス制でアーティストを招聘していく。ファーストシーズンは、オルガ・プラデール、ダヴィッド・ヴァランス、アリス・ジョノーがアイデンティティビジュアルを手がけた。

ウィンドウやメニューにはオルガ・プラデールのイラストが描かれて。©epicurian

料理とアートが対話するレストラン

バーに続いて18日にオープンしたのは、ガストロノミーレストラン「アンヌ=ソフィ・ピック・パリ」。14年間パリジャンを迎えた「ダム・ドゥ・ピック」に代わる、新しいチャプターの幕開けとなる。

厨房と境目なくつながっているレストランフロア。中央の長いターブル・ドットは厨房で立ち働く料理人の息吹を感じる特等席だ。©epicurian

レストランに足を踏み入れると、中央に大きなターブル・ドット「ラ・ターブル・リヴォリ」に迎えられる。その奥には完全に開かれた厨房が広がり、美しい料理を仕上げていく料理人たちの姿が、まるで舞台で繰り広げられるドラマのように展開する。

バーと同様、この場所をアーティストレジデンスと捉えるシェフ。マルセル・デュシャンやピエト・モンドリアンといった20世紀のアーティストにインスピレーションを求め、アーティスティックなビジュアルにもこだわり抜いた。

塩でマリネし、軽くフュメしたマグロにベルガモットの香りのソースをかけた一皿。食べ終わると、お皿にジャクソン・ポロックの絵画を思わせる跡が残る。©epicurian

「レストランはもはや素材のシーズン性のリズムとともに生きるだけではありません。私たちはそこにカルチャーシーズンを導入し、アーティストを招待し、この場所で私の料理と対話してもらうことにしました」とシェフは語る。

左:シェフのアイコニックな料理ベルランゴは、ここでは燻製したカマンベールを包み込んで。ヘッドフォンから流れるアンヌ=ジェームズ・シャトンのポエムとともに味わう。©epicurian 右:ヴィクトル・ヴァザレリーにオマージュを捧げたデザート。©epicurian

2026−27シーズンの招待アーティストは詩人で音響パフォーマーのアンヌ=ジェームズ・シャトン。料理の解説をポエムの形で朗読するナレーションに耳を傾けながら味わう料理は、新しい体験。現代アートを鑑賞し、アートと対話するクリエイティブな料理とカクテルを味わう。料理もまたアート表現のひとつなのだと実感させてくれるアドレスの誕生だ。

text: Masae Takata (Paris Office)

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