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はやぶさ2の快挙から6年……、さらなる高み、次は火星周辺へ

  • 2026.10.20

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第494回)

■MMX探査機を載せたH3ロケット打ち上げ……、ひときわ響いた「成功」の歓声

MMX探査機を搭載したH3ロケット打ち上げの瞬間(JAXA公式YouTubeから)

小惑星「リュウグウ」から探査機「はやぶさ2」が砂を持ち帰ってからはや6年。時が経つのは本当に早いです。次は世界で初めて火星衛星からのサンプルリターンに臨みます。

「MMX(Martian Moons eXploration)計画」と名付けられた今回の計画は、欧米の主要宇宙機関とも連携した日本主導の国際探査です。10月20日午前4時41分。探査機を載せたH3ロケット10号機が鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、70分あまり経った後、無事に所定の軌道に投入されました。通常、ロケット打ち上げ成功の時、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の管制室では歓声や拍手がわきますが、今回はひときわ大きく感じました。

「信号が来た瞬間に息が抜けるといいますか、やっと約束が果たせたという感じ。安堵すると同時に肩の荷が下りた」

こう話すのはロケット開発責任者の有田誠プロジェクトマネージャ(以下 プロマネ)。H3ロケットはこれまで2回失敗し、MMX探査機の打ち上げスケジュールにも少なからぬ影響を与えてきました。有田プロマネの心境は偽らざるものでしょう。

打ち上げ成功で歓喜にわく管制室(JAXA公式YouTubeから)

一方、探査機の開発責任者、川勝康弘プロマネは打ち上げで管制室に入るのは初めてだったと言います。

「いろんな画面が出ていて、わからない部分もあったが、節目節目で『よし!』とか『オッケー!』とか話していたので、だんだん大船に乗った気持ちになってきた。分離後、急に通信を確保してちゃんと運用しなければいけないというプレッシャーがきてドキドキしたが、計画通り行ったのでかなりホッとしている」

川勝プロマネもこの時ばかりは笑顔を見せました。ただ、これはさらなる高みに向けた第一歩。約5年の“長旅”がひかえています。

■採取量10g以上! グッとハードルが上がったミッション

MMX探査機(JAXA提供)

探査機が向かう目標は「フォボス」と呼ばれる火星の周辺を回る衛星です。火星にとっては「地球に対する月」のような存在、「Martian Moons」と呼ばれる所以です。発見されたのは1877年で、来年には発見から150年という時を数えますが、宇宙のレベルで見れば、歴史は浅いと言えます。衛星としては非常に小さく直径20~30km、重力は地球の2000分の1とされています。地球からフォボスまでの距離は約5~6億km。これまで火星周辺の本格探査はなされておらず、太陽系で最も重要な「未踏峰」とも呼ばれています。

火星表面からの高度は約6000km。離れているように感じますが、地球と月との距離約38万kmに比べると約1.5%。火星に隕石や小天体がぶつかった時に巻き上げられた砂や小石がフォボスに届いているのではないかと考えられています。この砂や小石を採取することが最大のミッション。フォボス表面から2cm程度をえぐり、10g以上の採取を目指します。

この量は科学研究サイドからの要求だそうですが、はやぶさ2がリュウグウから採取した砂粒は5.4g、当時、JAXA関係者から「どっさり入っていた!」と歓喜の声が挙がったのを思い出しますが、今回の目標はその2倍近くとなります。探査では砂や小石の採取のみならず、火星周辺に行って帰ってくる「往還技術」「通信技術」などの情報を取得します。これにより、火星の起源を探るだけでなく、将来は火星の有人探査も視野に入ってきます。

打ち上げ後記者会見(写真中央がJAXA山川宏理事長 オンライン画面より)

今後の日程は約1年後の2027年8月~9月ごろに火星圏へ到着、その後3年間を火星圏で過ごします。2030年には火星圏を出発し、地球への帰還は2031年の予定です。

キモになるのは火星圏に滞在する3年間。大半はフォボス周辺に滞在しますが、まず、フォボスの“正体”を観測するため、“先遣隊”として観測機器が搭載された約30kg、大きさにして電子レンジほどのローバー(小型探査車両)を投下。表面の状況を把握した上で、探査機が最大2回の着陸を試み、砂や小石を採取します。採取にはロボットアームを活用します。終盤は「ダイモス」と呼ばれるもう一つの衛星を観測します。こちらは表面に着陸はせず、周辺をぐるぐる回ってデータを獲得します。

そして、火星圏を出発後、地球の大気圏突入の際は砂や小石の入ったカプセルが、はやぶさ2の時と同様、オーストラリアの砂漠に到着。カプセルを回収する算段です。

地球到着という“大目的”のために、探査機は推進、探査、復帰の3つのモジュール(構成要素)からなります。カプセルが入っているのは復帰モジュール。火星周辺に到着した後、燃料がほぼ空になった推進モジュールは切り離され、フォボスを離脱する時には観測機器を積んだ探査モジュールが分離されます。とにかく重量を節目節目で抑え、燃料を節約するのが目的です。総重量約4.5tの機体は、復帰モジュールのみになった際は燃料含めて半分以下の約2tになり、50kg程度のカプセルが地球に到着します。

■探査機を支えたH3ロケットも10機目の節目

左:有田誠プロジェクトマネージャ右:川勝康弘プロジェクトマネージャ(いずれもオンライン画面より)

探査機を載せて所定の軌道に届けたH3ロケットも今回が10号機。前述の通り、紆余曲折を経ましたが、今回で3回連続の成功で、安定感が出てきました。30形態、22形態、24形態……、3つのタイプのうち、今回は24形態、液体燃料によるエンジン2基にブースター4基を使って打ち上げるもので、重い物を積むのに適しています。さらに今回は「24L」と呼ばれるロングフェアリング(搭載物を覆うカバーの高さがより長いもの)を採用しました。探査機の大きさは、はやぶさ2の約9倍です。

今回の打ち上げでエンジン、ブースター、そしてフェリング……、H3ロケットを構成するすべてのバリエーションが揃ったことになります。ロケット開発責任者の有田誠プロジェクトマネージャは「強力な武器が一つ増えた」と胸を張ります。そして、打ち上げ成功を受け、「非常に歴史的かつ世界的に注目されるMMXの打ち上げの第1幕を、最強の24形態で開けることができたということを大変嬉しく思っている」と話しました。

■5年後の帰還まで……、様々なハードルに立ち向かう

火星を背景にしたMMX探査機(イメージ JAXA提供)

一方、JAXAのトップ、山川宏理事長は記者会見で改めて決意を示します。

「火星圏探査ミッション実現に向けて第一歩を踏み出した。人類初の火星圏からのサンプルリターンまで約5年間にわたる長い道のりが始まった」

川勝プロマネも「日本の先人たちが積み上げてきた数々の探査技術を結集し、この壮大な計画を実現するスタートラインに立てたことをうれしく思っている」と話しました。

そう、いまはまさに5年後の帰還に向けたスタートラインです。特にフォボス到着に先立つ、火星周回軌道の投入が“超難関”の一つ。秒速1km=時速3600kmもの減速……、“急ブレーキ”をかけて軌道に入れなくてはなりません。「はやぶさ」「はやぶさ2」のみならず、月面探査機「SLIM(スリム)」、金星探査機「あかつき」と、失敗を含めた実績と知見、技術をフル活用します。

川勝プロマネによれば、MMX計画が本格的なプロジェクトとして立ち上がったのが2020年。約6年間でプロジェクトに関わった人はJAXA内部だけで100人以上。関連機器などの協力会社も加えると延べ1万人に上るといいます。多くの人たちの夢と期待をのせて、今回のプロジェクトは進んでいきます。

(了)

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