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変革のミラノ。受け継がれる美学と新たな挑戦【2027春夏コレクション】

  • 2026.10.19
Hearst Owned

この1年、クリエイティブ ディレクターの交代が相次ぎ、大きな転換期を迎えたミラノのファッションシーン。ブランドが培ってきたコードを見つめ直し、デザイナー独自の感性を掛け合わせることで、その美学をさらに深化させる動きが鮮明になっている。今季も、継承と革新が交差する興味深いシーズンとなった。

創業100周年というアニバーサリーを目前に控えるメゾンもあれば、長年ブランドをけん引してきたデザイナーが最後のショーを飾り、新たなクリエイティブ体制へと移行するブランドも。就任2シーズン目を迎え、独自のビジョンをより鮮明に打ち出すデザイナーの姿も印象的だった。それぞれが異なる局面に立ちながら、受け継がれてきた美学をどう更新していくのか。今のミラノの面白さを映し出す、注目の5ブランドを紹介する。

フェラガモ(FERRAGAMO)

来年、創業100周年を迎える「フェラガモ」。これまでブランド創業期の’20年代に着想を求めてきたクリエイティブ ディレクター、マクシミリアン・デイヴィスが、今季その視線を向けたのは’40年代。女性たちが社会へと進出し、自らの人生を切り拓き始めた時代だ。なかでも彼の心を捉えたのは、写真家リー・ミラーをはじめ、既成の価値観にとらわれず世界を旅した女性たち。その自由で大胆な精神を、当時のユニフォームやワークウェアに宿る力強さとともに、現代の装いへと映し出した。

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LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

肩を強調したテーラリングに、ウエストをきつくマークする太いベルト。’40年代のミリタリースタイルを彷彿とさせる力強いシルエットに、ミリタリーポケットを配したペンシルスカートやサファリジャケットが続く。それらは決して懐古的ではない。半透明のラバーで仕立てたトレンチコートやドレスが肌をほのかに透かし、身体のラインを際立たせる艶やかなレザーが、装いにモダンな色香を漂わせる。さらに、肩から流れ落ちるシルクのドレープや長く引きずるレザーのトレーンが、構築的なシルエットに流麗な動きを与えた。実用性と官能性の絶妙なバランスに、デイヴィスの感性が光る。

LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
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ブランドの原点であるシューズは今季、造形美をさらに研ぎ澄ませた。1947年に創業者が生み出した“F”ヒールを再解釈し、優美な曲線を描くスティレットやスリングバックへと昇華。ヴァラ・リボンやアールデコ調の装飾が、その美しさを引き立てた。歴史的なコードを丁寧にひもときながら、現代的な強さとセンシュアリティを重ねたデイヴィス。100周年を目前に、彼が築き上げてきた「フェラガモ」の美学は、一層の説得力と輝きを放っている。

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エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)

新たな時代へと歩みを進める「エンポリオ アルマーニ」。今季は、シルヴァーナ・アルマーニとレオ・デルオルコが手がける最後のシーズンとなった。テーマは“時の痕跡”。年月を経て変化する素材の表情に着目し、着込まれた服だけが持つ味わいや、時の流れが刻む美しさを探求した。会場となった安藤忠雄設計のアルマーニ/テアトロには、ルックをまとったマネキンが整然と並び、繊細な素材使いや仕立てを間近で堪能できるプレゼンテーションとなった。

Courtesy of Emporio Armani
Courtesy of Emporio Armani

ドライな質感のリネンやシアサッカーのジャケットは、布のベルトでゆるくウエストを結び、シアーなタンクトップや柔らかなベストを重ねる。ワイドパンツは身体の動きに合わせてしなやかに揺れ、テーラリングの硬質さとパジャマのような心地よさが溶け合う。色落ちしたデニムや、かすかにムラのあるタイダイ染めには’70年代を思わせるボヘミアンな趣も。さらに、塩の結晶を模した刺しゅうや、ほつれた糸をあえて残したニットが、完璧に整えられた服とは異なる、味わい深い表情を醸し出した。

Courtesy of Emporio Armani
Courtesy of Emporio Armani

グレーの濃淡を幾重にも重ねたカラーパレットは、ときに淡いブルーやクリームへと移ろい、最後は深いブラックへ。メンズとウィメンズの境界も軽やかに越え、着る人の個性に委ねられた自由なワードローブが広がった。来シーズンには新クリエイティブ ディレクター、ダリオ・ヴィターレ率いる新生「エンポリオ アルマーニ」がベールを脱ぐ。変化の時を迎えた今だからこそ、力まず、飾らず、それでいて揺るぎなく美しい。そんなアルマーニらしさが、ひときわ心に残った。

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ディーゼル(DIESEL)

グレン・マーティンスによる「ディーゼル」は、2000年代においてブランドの再生を成功させた好例の一つ。マーティンスは変革に満ちた6年間の任期を終え、今季のショーで有終の美を飾った。テクノクラブを模した会場には、マルセイユを拠点とするアーティスト集団“(LA)HORDE”の200人のパフォーマーが登場。ゲストの座席で官能的なダンスや抱擁を繰り広げ、快楽と自己表現、インクルーシビティを掲げるブランドの精神を体現した。

LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
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約90ルックからなるコレクションでは、マーティンスが得意とするデニムへの実験的なアプローチが際立った。パンツとソックスを一体化した“パンタソックス”や、異なるアイテムを融合させたハイブリッドな服、レザーと見紛うコーティングデニム。ランの花をかたどったカットアウトや、布地をねじり、裂いたような構築的なディテールが、ストリートウェアに官能性とシュールレアリスムを吹き込んだ。

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ショーが進むにつれて肌の露出は大胆になり、極小のホットパンツや、裂いたデニムをレースのように仕立てたドレスへと展開。フィナーレには、マーティンスの「ディーゼル」でのデビューショーにも出演したトランスジェンダーのモデル、エラ・スナイダーが登場した。デニムブランドを快楽主義的なライフスタイルブランドへと進化させた彼は、今後「メゾン マルジェラ」に専念する。「ディーゼル」に取り戻した自由で挑発的なエネルギーは、次なる時代へと受け継がれていく。

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マルニ(MARNI)

「取り除くことで、見えてくるものがある」。メリル・ロッゲが「マルニ」での2シーズン目に掲げたのは、“変化”というテーマ。会場はデザインスタジオ「FORMAFANTASMA」と協働し、壁の内側に潜むコンクリートや金属の骨組みをむき出しにした空間に。建築の構造をあえてあらわにする演出は、服の内側に目を向け、その本質を探ろうとするコレクションの姿勢と呼応していた。

LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
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細長いシルエットのシフトドレスを軸に、レザーや重厚なサテンを大胆にカットアウト。裏地や縫い目をあえて見せ、下着の痕跡を服の表面に浮かび上がらせるなど、内と外の関係を軽やかに覆した。拡大されたボタンやバックル、プラスチックのディスクが遊び心を添え、壁紙のようなプリントを施したウインドブレーカーにはレザーのカプリパンツを合わせる。レトロな色彩と意外性のある素材使いが、ブランド特有のエキセントリックな魅力を引き立てた。

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足元では、透けるソックスとサンダルの組み合わせや、肌をのぞかせるシューズを打ち出した。フィナーレを飾ったのは、ブランドの歴史を象徴するモデル、マリアカルラ・ボスコーノ。アクアマリン色のビーズ刺しゅうを施したブラックレザーのドレスをまとい、新旧の「マルニ」をつないだ。創業以来の自由な色彩感覚と実験精神を受け継ぎながら、ロッゲならではの視点で再構築。世代や既成概念を超え、装うことの純粋な楽しさを呼び覚ますコレクションは、ロッゲ率いる「マルニ」の新章が確かな手応えとともに進んでいることを感じさせた。

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オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)

「ホンダ」とのコラボレーションによる、オニツカイエローに染まった2台のバイク。そのとどろくエンジン音が、ショーの開幕を告げた。「オニツカタイガー」が今季の舞台に選んだのは、意外にもガソリンスタンドだった。“ENERGY STATION”をテーマに、洗車場や売店、給油機まで備えたセットを再現。人々が行き交い、エネルギーを補給する日常の風景を、遊び心と高揚感に満ちたファッションの舞台へと一変させ、冒頭から会場を熱気で包み込んだ。

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コレクションを要約するなら、スポーツの躍動感と都会的なエレガンスの意外な出合い。タイムレスなシャツや身体に沿うTシャツには、マイクロショーツやバイカー風のミニスカート、ムエタイに着想を得たウールショーツを組み合わせて。グラフィックトップスにフリルスカートを重ね、軽やかなドレスにはシルクのフリンジを揺らす。スポーティーな軽快さにフェミニンな感性を織り交ぜ、日常のワードローブに軽やかなひねりをプラス。

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足元にも大胆な発想が光る。アイコンの“メキシコ 66”はミュールへと姿を変え、バイカーブーツには鮮烈なイエローやメタリックピンク、シルバーのウェッジヒールを採用。フィッシャーマンサンダルやレーシングカラーをまとったキトゥンヒールも顔をそろえた。ノスタルジーにとどまることなく、ヘリテージを未来へと加速させる。そんな「オニツカタイガー」の勢いを感じさせるショーだった。

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