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【エッセイスト広瀬裕子さん・61歳】120㎡から45㎡・1LDKへのダウンサイジングで、本当に必要なモノ、好きなモノだけの暮らし

  • 2026.10.18

【エッセイスト広瀬裕子さん・61歳】120㎡から45㎡・1LDKへのダウンサイジングで、本当に必要なモノ、好きなモノだけの暮らし

東京、葉山、鎌倉、瀬戸内……。実家を出て一人暮らしを始めてから、10回以上の引っ越しを経験してきたエッセイストの広瀬裕子さん。その間に結婚と離婚も経て、3年前に愛猫と共に東京に戻ってきました。住居の大幅ダウンサイジングと親の介護施設入所などをきっかけに、身の回りのモノの量の見直しを始め、試行錯誤しながら行きついた現在の状況は?

Profile

広瀬裕子さん

ひろせ・ゆうこ●1965年東京都生まれ。エッセイスト、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、瀬戸内での暮らしを経て、2023年より再び東京へ。瀬戸内時代の1/3の広さの都心の賃貸マンションに愛猫「あめ」と暮らす。『60歳からあたらしい私』(扶桑社)、『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)ほか、著書多数。最新刊は『50代からのグレイヘア』(PHP研究所)。

大きな家具を思い切って手放した理由

両親を見送り、数年かけて実家じまいを終えた広瀬さん。自身が身の回りのモノを減らしているのは、このとき体験した片づけの大変さが影響しているという。

「50年近く前に建った広い一軒家でした。父が施設に入って空き家になったため、実家じまいを前提に片づけを始めました。一見、片づいて見える家でしたが、たっぷりあった収納に使っていないモノがぎっしり詰まっていました」

結果的に片づけに3年を要した。最初はひとつひとつ思い出をたぐりながら自分で手放していたが、それではいつまでたっても終わらない、と最後は業者の手を借りた。

「そうした体験から、自分は使うモノ、思いがあるモノだけで暮らしていこうと思うようになりました。いつか誰かが引き継いだり片づけたりするときに、モノの多さにわずらわせたくないからです」

3年前、生まれ育った東京に20年ぶりに戻ってきた広瀬さん。

「以前の瀬戸内の住まいは120㎡ありましたが、東京のマンションは約45㎡の1LDK。約1/3のダウンサイジングです。食器や道具などの多くを整理し、家具は前の家で使っていたソファ、寝台、テーブル、チェストなどを運び入れました。新居にきちんと収まったので、しばらくそれで暮らしていました」

ところがその後、体調を崩したときに感じた違和感があった。

「元気なときは問題なくても、体が弱るとよろけて家具にぶつかったりするんです。多すぎるモノをよけながら動くのは危険だと感じました」

「住まいは弱っているときに合わせたほうがいい」と考えた広瀬さんは、3人掛けのソファ、寝台、テーブル、チェストなどの大きな家具を手放すことに。使いたいと言ってくれた人に全部、譲ることにした。

「すでに50代半ばでベッドは手放していました。ひとり暮らしの私は、今後、大きなベッドを移動したり、処分したりすることが大変になると思い、布団生活に切り替えていたのです。そして、高さを出すために布団を敷く寝台をつくってもらいました。でも、小さな家ではそれがかなりのスペースをとっていて、体調を崩したとき、移動の障害になったため、手放すことに決めました」

今は布団を作りつけのクローゼットにしまい、毎晩、出して敷いている。

「もっと年を重ねたらベッドがないとつらいかもしれませんが、そうなったら買えばいいと思っています。今後、変化する可能性も含めて、今は何が自分にとって心地いいのかを実験しているところです」

次に使ってくれる人が見つかりやすい家具を選ぶ

ダイニングテーブルはアルネ・ヤコブセンデザインの「スーパー円テーブル」に買い替えた。小ぶりだが、最大で6人座れる。

「今後のことを考え、ひとりで動かせる大きさと軽さのものを選びました」

さらに今年になって、同じスーパー円テーブルのコーヒーテーブルを買い足した。

「仕事は大きいテーブルでしているので、これだけしかないとお茶を飲むときに一度片づけなくてはいけないので」

ソファの代わりは25年使用しているひとり掛けのアルネ・ヤコブセンのスワンチェア。読書をしたり、映画を見たりくつろぐときはここで。

「ホールド感があるのでゆったりできます。長い時間読書をするときはふたり掛けのソファがあったほうがいいなと思うこともありますが、まぁいいか、と」

大きな家具を手放したら、手狭だと思っていた部屋も「心地いい」と感じるようになった。そして、持っているモノの量に比例して心も軽くなったという。

「手放すことはストレスですが、それよりも必要ないモノを持っているストレスのほうが自分にとって大きいことがわかりました。モノが多いと出し入れや掃除が大変だし、使いきれないことや、管理しきれないこともストレスになります。ひとり暮らしなので、自分基準で“今”必要な、本当に好きなモノを少しだけ持つようにしています」

実家を片づけたとき、ほとんどの家具を捨てることになり、それがとてもつらかったという広瀬さん。

「最終的にはそうするしかなかったので仕方なく処分しましたが、できれば誰かに使ってもらいたかった。気に入った家具を選んでおくと、次に使ってくれる人も見つけやすいので、手放しやすさにもつながるのではないかと思っています」

将来も見据えた、コンパクトな部屋で快適に暮らす工夫

「瀬戸内に住んでいた頃、出張でよく東京のホテルに泊まっていましたが、そのとき、コンパクトな空間も工夫すれば快適に過ごせることを実感しました。数年前に亡くなった父が暮らしていた高齢者施設の部屋もワンルームで、ベッド、椅子、タンスにチェストという必要最低限のモノだけの部屋で快適でした」

しかし、その家具類は不本意なものだった。

「父が施設に入るとき、使いなれた家具を持ってきていいと言われたのですが、大きすぎて持っていけるものがなかったんです。結局、施設の家具を使うことになったので申し訳ないと思いました」

それもあって、広瀬さん自身はコンパクトな部屋にも収まりのいい家具を選ぶようにしているという。

「将来のことはどうなるかわかりませんが、『このサイズなら持っていけるかな』と思える家具を選ぶようにしています。終の住み処では、自分の気に入ったモノに囲まれていたいので」

北欧では、高齢者施設に入るとき、自分の使っていた家具を持って行き、亡くなった後にリユースされると聞いた広瀬さん。

「それで、昔の家具が市場に出回るらしいんです。使い捨てではない、循環型のシステムが当たり前にあるのはいいなと思います。私も、『長く大切に使われるモノ』という視点で選んでいきたいと考えています」

コンパクトな住まいの快適さを知った今、次の家があるとしたら、「また、同じ広さがいい」と考えている。

「あと10㎡あれば独立した寝室が持てますが、それも必要ないかな」

窓からの眺望がよく閉塞感がなければ、「35㎡でもいい」とすら思っているという。

服や食器、日用品など、生活に必要なモノは作りつけの収納に入るだけを持つ。ダイニングテーブル近くの収納にゆったりと並べられている食器。

「今はほとんどをロイヤルコペンハーゲンの器にして、普段の食事やお茶の時間にも使っています。丈夫で扱いやすく、買い足しもしやすいので。数はかなり絞っているため、お客さまが何人かいらしたとき食器は揃いでは出さず、大勢の場合は紙コップを使うこともあります」

誰かと食事をするときは外食をすることも多いので、来客用の器は持たないことにした。洋服は「40代の頃に比べると5分の1以下」の量だという。本棚も持たず、本は玄関の靴箱用のスペースに収めている。防水加工が施された紙袋をゴミ箱代わりにして、マンションの各階にあるゴミ捨て場にこまめに捨てている。だから「ゴミ箱も不要」だとか。

広瀬さんが自分のために作り上げているコンパクトで、居心地よく、気に入ったモノだけに囲まれた住まい。それは今、心穏やかにストレスなく過ごせる場所であると共に、将来も同じように心穏やかにストレスなく過ごすための布石でもある。

撮影/佐山裕子(主婦の友社) 取材・文/依田邦代

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