1. トップ
  2. 食空間プロデューサーが披露! 家族の思い出が詰まった器たち【受け継がれるテーブルウェア】

食空間プロデューサーが披露! 家族の思い出が詰まった器たち【受け継がれるテーブルウェア】

  • 2026.10.15
NAOKI MATSUKUMA

自身が受け継いだ器を次世代へ。日本だけでなく、本場ヨーロッパの食卓文化をミックスして、文化の継承をテーブルに表現します。

NAOKI MATSUKUMA

器を受け継ぐことは、家族の思い出を未来へつなぐこと

器好きのご両親のもと、幼い頃から九州の窯元を巡り、器への教養を育んできた山野舞由未さん。ご実家は来客が多く、お母さまはいつも心づくしのお料理でゲストをもてなしていたと語ります。「人を招くのが好きな母でした。私もその思いを受け継ぎ、自分のためでなく、家族のために、お客さまのために、集える場所を作りたいと思い続けてきました」

山野さんが本格的にテーブルコーディネートに取り組んだのは、子育てが終わってから。お子さまの留学先であるフランスやイギリスに同行、本場の食卓文化に触れ、魅了されたと言います。「ヨーロッパの紅茶やテーブルの文化をきちんと継承し、伝えたい」とテーブルスタイリストになることを決意。留学先の貴族などの邸宅で、欧風のテーブル文化を学びました。独立後、またたくうちに仕事のオファーが増え、教室も開くように。その背景には、骨董が趣味だったお父さまや、洋食器のフルセットでゲストをもてなしたお母さまから受け継いだ器に対する審美眼がありました。「父や母が器と共に遺してくれたメモを見ると、まるで彼らと会話をしているような感覚に。この気持ちを娘にも味わってもらいたいと、器のリスト作りを始めました」と山野さん。お嬢さまは「今は忙しすぎて、母のようにテーブルコーディネートを楽しむ時間がなくて…」とはにかみますが、山野さんは「人生のどこかで一段落ついたときに楽しんでもらえたら」と語ります。

「ひとつひとつの器には、使っていた人の姿や言葉が宿っています」と山野さん。器を受け継ぐことは、家族の思い出を未来へつないでいくことにほかなりません。

〈写真〉有田焼の名窯、柿右衛門のセットが主役のアペロのセッティング。ル・ジャカール・フランセのナプキンや、ブルーをアクセントにしたフラワーアレンジメントが“柿右衛門ブルー”に呼応して。

NAOKI MATSUKUMA

食空間プロデューサー・山野舞由未さん

PROFILE
お子さまの留学に伴い、渡欧。主ににイギリスにて紅茶文化と食卓芸術を学ぶ。帰国後は、欧米の高名な食器ブランドや地元九州の窯元のスタイリングを手掛ける。

NAOKI MATSUKUMA

お嬢さまに引き継ぎたい、柿右衛門のセットでアペロを

四国の造り酒屋に生まれ、福岡に嫁がれた山野さん。「幼い頃から『柿右衛門さんの器は触ってはダメ』と母から言われてきました」と語るように、代々、柿右衛門窯の器を大切にしてきたそう。17世紀創業の地元・九州を代表するこの窯元が、洋食にも使えるようにと製作した“縁地文”シリーズを用いてアペロ用のセッティングを。磁器の白さを強調する“柿右衛門ブルー”が際立つプレートと蓋ものを、バカラのクリスタルやクリストフルの銀器とコーディネート。さえわたる“柿右衛門ブルー”を生かしたクロスやフラワーアレンジメントは、お嬢さまも大のお気に入りなのだとか。

〈左〉柿右衛門様式の特徴、発色の美しい赤と青、余白を生かしたデザインのプレートをトップに。

〈右〉アペロのおもてなしの一皿はキャビア。柿右衛門の丸紋の蓋ものが、特別感を演出。

NAOKI MATSUKUMA

バカラのショットグラスにサーモンやピクルスなどを盛り付けて、パテなどと一緒にクリストフルのシルバーのトレーに。柿右衛門の柿をかたどった箸置きで季節感を。

NAOKI MATSUKUMA

お母さまが愛したティーセットをコーディネートのメインに

英国の紅茶文化を受け継ぐのも、山野さんの使命。「紅茶には、歴史に裏付けされたストーリーがあります。それをきちんと伝え残したい」と山野さん。特に使用する銀器は時代を揃えることが大切だと、留学先である男爵の家庭で学んだそう。このティーのセッティングはそんな英国式ルールを基本にしながら、モダンなインテリアに溶け込むようアレンジ。「母が愛してやまなかったロイヤル コペンハーゲンの“フローラ ダニカ”が映えるように」と山野さん。“フローラ ダニカ”のプレートは、いずれも手描きの一点もので、お嬢さまもほれ込んでいるとか。「娘には、紅茶文化も含めて受け継ぎたい」と語ります。

〈写真〉ピアッシングの3段スタンドにメロンシェイプの銀製ティーポット、カップ&ソーサーとプレートは“フローラ ダニカ”。バカラのワイングラスを添えて。小ぶりのナプキンはアフタヌーンティー専用で、英国で購入したアンティーク。

NAOKI MATSUKUMA

お母さまが大切にしていた“フローラ ダニカ”のカップ&ソーサーとプレート。朝顔などの植物が手描きされており、繊細な金の縁取りと相まって優美な表情。

NAOKI MATSUKUMA

主役級の存在感を放つスターリングシルバーのポットはジョージアン時代の品。

NAOKI MATSUKUMA

家宝として伝わる漆器を中心にした煎茶のテーブル

煎茶のおもてなしのシーンを演出するのは、山野さんが代々受け継いできた器。主役に置いたのは、お父さまから受け継いだ貴重な骨董品「屈輪漆器」。博物館では香合に分類されることも多い屈輪漆器ですが、お父さまが菓子器としてもてなしの席で使っていたことから、今回もメインの菓子器に。その脇を支えるのは、1830年代後半の京都・一力茶屋を描いた煎茶器。長命でいらしたおばあさまが最後まで大切に使っていた骨董です。「いずれも娘に引き継ぎたい」と山野さん。ラリックやアンティークシルバーとの取り合わせには、骨董を現代の空間で楽しむためのヒントが詰まっています。

〈写真〉屈輪漆器とスターリングシルバーのトレー、ラリックのガラスで組んだ煎茶のアフタヌーンティーコーディネート。

NAOKI MATSUKUMA

〈左〉天保時代の京都祇園・一力茶屋の様子を描いた煎茶器。芸妓を描いたものは、かなりレア。おばあさまから受け継いだ骨董品。

〈右〉お父さまが「家宝」とメモを残した漆器。同等の品が「ぐり」として各所の博物館で展示されているそう。

Realization:KYOKO TOMIKAWA
25ans(ヴァンサンカン)10月号掲載(2026年8月28日発売)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ