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この秋注目の映画『汝、星のごとく』の作者・凪良ゆうさんが語る創作秘話

  • 2026.10.9
©2026 「汝、星のごとく」製作委員会 ©凪良ゆう/講談社

シリーズ累計170万部を突破! 映画も公開される『汝、星のごとく』の著者、凪良ゆうさんに独占インタビュー。原作の映画化、創作の秘密について伺いました。

凪良ゆうさん YUU NAGIRA <strong> PROFILE </strong>小説家。2007年にデビュー。『流浪の月』で2020年の本屋大賞、『汝、星のごとく』で2023年の本屋大賞を受賞。両作とも実写映画化される。最新刊は『多類婚姻譚』(講談社)。 © CEDRIC DIRADOURIAN

人は誰しも不完全なもの大人だって例外じゃない

編集部 2022年に発表した『汝、星のごとく』とそのスピンオフ作品『星を編む』が出版不況にあって異例ともいえるヒット作となりましたが、今のお気持ちをお聞かせください。
凪良ゆうさん(以下、凪良)
作品を執筆していた当初はまさかこんなに多くの読者に受け入れていただけるとは考えておらず、とても嬉しいです。続編の『星を編む』のほうは初めから予定していたものではなかったんです。編集の方と打ち合わせを重ねていくなかで、キャラクターの人物像を話したところ、これも作品にするべきなのではということになり。確かに限りあるスペースのなかですべての人物を詳細に表現することができず、おのおのにストーリーがあっての『汝、星のごとく』だったので、それを描き切ることができたのはよかったと思います。
編集部
物語の主役の青埜櫂(あおの・かい)、井上暁海(いのうえ・あきみ)の両親はそれぞれ問題を抱えており、お互いが複雑な家庭環境のなか出会います。作中にはこうした“不完全な”大人たちが多く登場するのが印象的でした。
凪良
そうですね、小さい頃は大人というと完成された人間というようなイメージだったのですが、いざその立場になってみたら全然違う(笑)。これは大人たち皆が感じることなのではないかなと思っています。でも、人は誰もが完全ではなく、不自由や不都合を抱えながら生きているのだと思います。そういうことも含め、頭に浮かんださまざまなピースをはめ込み、紡ぎ合わせることで、この物語が出来上がりました。

横浜流星さんから届いた直筆の手紙を読んで

編集部 10月には『汝、星のごとく』の映画も公開となります。映画化はどのようにして決まったのでしょうか。
凪良
多方面から映画化の話をいただいていたのですが、主役の俳優のひとりでもある横浜流星さんから直筆のお手紙をいただいたのがきっかけでした。横浜さんとは映画『流浪の月』でもご一緒していて、そのときから役に向かい合うひたむきさや真摯さを感じていたので、彼になら託してみたいと思ったのです。

青埜櫂の人生を生きたいと、凪良さんに直接手紙を書いたという横浜流星さんの演技は圧巻。 ©2026 「汝、星のごとく」製作委員会 ©凪良ゆう/講談社

編集部 映画のなかでは横浜さん、広瀬すずさん共にハマり役ともいえる好演でしたが、原作者という立場から見ていかがでしたか。
凪良
物語を書く上で、キャラクターの背景や人物像は詳細に決めるのですが、俳優のこの人をモデルにしようなど、実際の人物には当てはめていません。また映画は監督のものですし、私からこうしてくださいとか、そういった希望やリクエストはしないようにしています。監督や制作の方にお任せしたほうが、きっといい作品が出来上がると思っていたので。完成した映画を見てみたら、確かに私が書いた櫂と暁海なのですが、横浜さんは櫂の脆さや危うい部分を、広瀬さんは暁海の芯の強さみたいなものを、あの短い時間のなかでくっきりと浮かび上がらせてくれました。私の知っているふたりを、違う面から見せてくれたというか。とても感慨深いものがありましたね。

自身を取り巻く環境、境遇に翻弄されながらもひたむきに生きていく井上暁海には、広瀬すずさん。特にこの画像のシーンは凪良さんに強い印象を残したそう。 ©2026 「汝、星のごとく」製作委員会 ©凪良ゆう/講談社

編集部 物語のキーパーソンともいえる北原先生を演じた長谷川博己さんについてはいかがでしたか。
凪良
本当に素晴らしかったです。難しい役どころだったと思いますし、櫂や暁海と違って主役ではないので出番も少ないのですが、限りある時間のなかで北原先生のキャラクターをよく表現してくださったと思います。

寡黙でありながら、どこか曲げられない信念のようなものをもつ北原先生。難しい役を、長谷川博己さんが熱演。 ©2026 「汝、星のごとく」製作委員会 ©凪良ゆう/講談社

編集部 最新作『多類婚姻譚』も直木賞候補作になり、発売3カ月で早くも14万部を突破。ヒット作を立て続けに出されています。
凪良
ありがたい限りなのですが、一冊を出すのにとても時間がかかってしまいまして、『多類婚姻譚』も前作から2年8カ月ぶりの発表でした。実は私、筆がとても遅いんです。書いては消し、消しては書いてを繰り返して、やっと出来上がって眠りにつく。でも翌日見てみると、なんでこれがいいと思ったんだろうと考え直してまた全部消すの繰り返し。書いたものの7割は、消してしまっているような感覚です。それでも発表したものを皆さんに楽しんでもらえるのが嬉しいですし、次回作ももう書き始めているんです。ネパールのクマリという少女の神をモチーフにした物語なのですが、やはりああでもない、こうでもないと苦労しておりまして(笑)。でもやっぱり書くことは生きがいのようなもの。うんうん苦しみながら、楽しんでいます。

創作に対するあくなき情熱とひたむきな姿勢が印象的だった凪良さん。そんな彼女が紡ぎ出す新たな世界に期待が膨らみます!

凪良ゆうの世界を堪能する3冊&1本

〈左〉映画『汝、星のごとく』 15年にわたる愛と選択の物語。瀬戸内の島で生まれ育った井上暁海、転校してきた青埜櫂。家庭に恵まれず、孤独を抱えるふたりは互いに唯一の心の支えとなり恋に落ちるが、さまざまな問題に直面する。監督/藤井道人 主演/横浜流星、広瀬すず 10月9日 東宝系にて全国公開 <中左>映画の原作となった超ベストセラー。■著/凪良ゆう講談社文庫 ¥990 <中右>『星を編む』 『汝、星のごとく』のスピンオフ作品。本編では描き切れなかった登場人物の物語を3編収録。北原先生、櫂を担当した編集者の植木と二階堂、そして暁海と周囲の人々の、物語のその後。それぞれの幸せを、繊細に、静かにつづる。■著/凪良ゆう 講談社文庫 ¥990 <右>『多類婚姻譚』 現代の結婚のかたちとは。ジェンダー、金銭感覚、世代間格差、成育環境など、さまざまな価値観のなかで現代を生きる私たちは、果たして分かり合えるのか。結婚をめぐる5つの恋愛模様を収録。■著/凪良ゆう 講談社 ¥2,090 ©2026 「汝、星のごとく」製作委員会 ©凪良ゆう/講談社

Photo : CEDRIC DIRADOURIAN(Portrait)
Realization : NONOKO HATA
25ans(ヴァンサンカン)11月号掲載(2026年9月28日発売)

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