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【豊臣兄弟!】秀長(仲野太賀)は大和をどう治めた? 寺社と商いに挑む「秀長の国」

  • 2026.10.9

【豊臣兄弟!】秀長(仲野太賀)は大和をどう治めた? 寺社と商いに挑む「秀長の国」

2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。今まであまりスポットライトの当たることのなかった豊臣秀長を主人公に、戦国時代がどう描かれるのか? ここでは、ストーリー展開が楽しみな本ドラマのレビューを隔週でお届けします。今回は、第37回「秀長の国」と第38回「和を以(もっ)て、大和をなす」です。

関白となっていよいよ天下一統の道を駆け上り始めた羽柴筑前守秀吉(ちくぜんのかみひでよし/池松壮亮)。激しい戦いを制した後に待ち受けていたのが、己の周囲の地固めだ。天正13(1585)年閏(うるう)8月(旧暦において通常の8月の次に追加された13番目の月)、秀吉は諸将に対して、改めて畿内近国の領地配分を行ったのだ。秀吉は織田家以来の諸将をことごとく遠ざけ、羽柴一門衆と家臣によって足場を固めた。

とりわけ羽柴美濃守秀長(みののかみひでなが/仲野太賀)には、「四国での総大将としての差配見事なり」ということで、これまでの紀伊・和泉に加えて、大和国を与え、秀長は羽柴家最大の重臣となった。今回の第37・38回は、その秀長が、与えられた所領の大和国をどう改革し、盛り立てていくかということが描かれていて興味深い。

第37回「秀長の国」

一夜城をともに築いた古くからの功労者である家臣・蜂須賀正勝(まさかつ/高橋努)にも、「四国での軍功、比類なし」ということで、阿波国が授けられることになったが、正勝はそれを辞退する。息子の家政(いえまさ)に譲って、自らは隠居したいと言う。秀吉は正勝の真剣な表情を見て受け入れざるを得ず、了承する。

その夜、ひとり酒を飲んでいる正勝のもとに秀吉、秀長兄弟と、前野長康(ながやす/渋谷謙人)が入ってくる。4人で酒を酌み交わしながら、秀長は「戦働きをせずともよいゆえ、もう少しわしらのそばにいてくれんか」と説得を試みる。しかし正勝は、逆に明るく皆を励ます。「ただの川並衆だったわしが、城持ちどころか、大名にまでなるとはのう。この上ない幸せじゃ。おぬしらにわしの人生をかけてよかった。礼を言う」

正勝の心からの言葉に、ついに秀吉も「わかった」と承諾する。「隠居したとて、わしらの仲間には決して変わりはない。この後も、わしが治める日の本をしかと見届けよ」。今宵は我らの門出を祝おうと言ったところで、外で待ち受けていた残りの一門もなだれ込んできて、にぎやかな酒宴が始まった。そして、寂しいナレーションが一言流れるのだった。「この後、蜂須賀正勝は病に倒れ、半年後にこの世を去りました。これが一夜城をともに作った者たちが顔を合わせた最後の一夜でございました」

天正13(1585)年9月、秀長がいよいよ大和郡山城に入った。家臣たちに威勢よく「皆で力を合わせてよき国を作ろうではないか」と意気込みを語った秀長だったが、側近数名との場になると、いきなり弱気な本音が顔を覗かせた。その脳裏を、大坂で兄から言われた「大和は最も厄介」の言葉がかすめる。すなわち、古い歴史と伝統に根差した土地だけに、因習もまた根深いということなのだ。特に寺社の僧や神職たちが、独自の法によって一国を意のままに支配し、莫大な利を得て国主同然のふるまいをしている。過去の国主も手を焼いてきた土地だった。

「奈良に都があった昔から連綿と続いた古き枠組みを打ち壊し、再生させるのじゃ」という秀吉の命が、今さらながら秀長に重くのしかかってきた。

秀長の家臣・小堀正次(まさつぐ/萩原護)によると、「興福寺は広大な所領を有しており、百姓たちは年貢などをもっぱら寺のみに納めておりまする」とのこと。もう一人の家臣・吉川平助(へいすけ/松岡広大)も、「それだけではござりませぬ。勝手に関を設け、銭を取り立てておりまする」と告げる。力ずくで攻めてもかえってこじらせるだろうと判断した秀長は、家臣たちにそれぞれの働きを命じる。

寺社との攻防の一方で、秀長は城の普請も始めていた。藤堂高虎(たかとら/佳久創)、羽田正親(まさちか/平埜生成)、平助、桑山重晴(しげはる/住田隆)らが互いに意見を戦わせて手順を算段するが、言い争いになってなかなかまとまらない。そこへ慶(ちか/吉岡里帆)がやってきて指示を出す。さらに秀長と慶の娘・末(すえ/池端杏慈)が握り飯の差し入れを持って現れる。一同大喜びでとびつくも、一様に渋い顔になる。慶が慌てて自分も食べてみたところ、なんともまずい。末によれば、蔵にあった米はこれだけで、少しでもよくしようと塩加減をしてみたということだった。

一方、秀長は早速、興福寺一乗院の防官・磐覚(ばんかく/坂口涼太郎)と相対していた。この坂口が演じる磐覚、今回の最大の見どころと言ってもいいぐらい、インパクトがあり過ぎる。ややコメディに流れ過ぎではないかと思う節もないではないが、とにかく「奇怪」な感じや「腹黒い」オーラが全身から放たれていて、目が離せない。

新しい国主のもとを訪れた磐覚の一行は、挨拶とともに、箱に詰められた金子(きんす)を差し出してきた。「どうかこれからも、筒井殿の時と変わらぬおつき合いのほどをお願い申し上げまする」。それを秀長は、きっぱりと切り捨てた。「それはなりますまい。お見受けしたところ、興福寺には手に余るほどの所領がおありのようじゃな。今後はこの羽柴が大和の全土を治め、興福寺にはしかるべき年貢をお渡しする所存」

眉をひそめる磐覚に、秀長は重ねて申し渡すのだった。「政や商いにおいても、これよりは我らが一切を取り仕切りますゆえ、興福寺をはじめとする諸寺の方々には、安んじて仏道に専念していただきたく」。「そのような横暴、御仏がお許しになるとお思いか」。「御仏のお心はわかりませぬ。しかし、従っていただけなければ、関白殿下がお許しになりませぬ」

「大和のまことの主が誰か、百姓どもはわかっておりまする」。しばし睨み合った末、磐覚は捨て台詞を残して金子もろとも引き揚げていった。秀長は、家臣に興福寺の所領への検地に備えるよう命じた。

その頃、末は村の百姓の庄屋を、侍女・むぎ(信川清順)を連れて勝手に訪ねていた。むぎの止めるのも聞かず、末は「どなたかおりませぬか」と呼びかける。声に気づいて出てきたのは、村の庄屋・石川清兵衛(せいべえ/伊藤健太郎)だった。米を分けてほしいと言う末に、まずさはどこでも同じだ、分けられないし、見せられないと突っぱねる。

そこへ、末を探して秀長と慶らもやってくる。秀長は身分を明かして、その上で米を見せてほしいと頼む。米を見た秀長は、「もしや無理に詰めて、苗を植えておるのか。そのせいで肥しが行き届かず、育ちが悪くなってしまったのじゃな」と見抜く。その眼力に驚いた清兵衛に、「わしも元は百姓だで」と笑う秀長は、「一所懸命、田を耕す者の立派な手じゃ」と清兵衛の手から、その真面目な仕事ぶりを察する。興福寺領であるその田は、広さに見合わぬ年貢を取り立てられていると知った秀長は、改めて検地をすると伝えるが、清兵衛は反対する。仏罰が下るというのだ。これまでも、寺に逆らった者は皆命を落としてきたと。

大和郡山城では普請が続いているが、足場が一部緩んでいる。一方、興福寺では、磐覚が呪うように読経を続けている。その時、検地を進めようとしていた正次が賊に襲われたという報が入ってくる。

秀長一行は、興福寺一乗院の磐覚のもとを訪れた。そこには、清兵衛たち村の百姓もいた。「わしは喧嘩ではなく、検地をしに来たのだ」と言う秀長に、磐覚は激しく抵抗する。そこへ、高虎と正次が取り押さえた賊を引っ立てて入ってくる。顔色が変わる磐覚。彼らは、磐覚の差し金で襲ったことを白状したのだった。清兵衛に「これが仏罰の正体じゃ。まことの御仏は、一所懸命に田を耕す罪なき民に罰をお下しにはならん」と諭す秀長。高虎らは、そこにある地蔵などの石像を片端から担ぎ出していく。「城の石垣の石が足りぬゆえ、国主としてこれらを頂戴つかまつる」

「わしは認めぬ!」と逆上する磐覚だったが、そこへ興福寺一乗院権別当(ごんのべっとう)・兼深(けんしん/赤星昇一郎)が入ってきて、磐覚の過ちを叱責する。「これより先のことは国主様の御意のままに」と言う兼深に、秀長は「しかと承知つかまつった。この羽柴美濃守、身命をとし、必ずや豊かな大和国をおつくりいたしまする」と誓うのだった。

ある日、普請中の城を訪れていた秀長は、声をかけてきた慶のもとに歩み寄ったときに、城の足場が崩れ、間一髪で危機を逃れた。慶が持ってきたのは、秀吉からの祇園社の御札だった。「さすがは関白殿下じゃなぁ」と、離れた地にいる兄を思う秀長だった。

第38回「和を以て、大和をなす」

寺社のあと、新たな戦いをすることになったのは、長く奈良に根付いた商人たちだった。大和国の財政があと半年ほどで立ち行かなくなると正親から告げられた秀長は、商いを盛んにすることで、国の財政を根本から建て直そうとする。その手始めとして、さびれて誰もよりつかなくなっている郡山の城下の商いを活性化することにしたのだ。

ところが、その頃の大和の商いは、寺社の集まる奈良に集中していた。豪商たちの専売組合である「座」が、商いを独占していたのだ。秀長は奈良の豪商たちを訪ね、郡山への移転を促すが、既得権益を守りたい豪商・川窪清俊(きよとし/カトウシンスケ)らは、郡山への移転を頑なに拒むのだった。

古い国ならではの「しきたり」に、これでもかと悩ませられる秀長だったが、慶が城下でよい筆を買い求めたと報告する。何でも奈良からきた職人が作ったものらしい。「奈良の仲間と袂を分かってこちらへ来たのなら、何か力になってくれるやもしれません」という慶の言葉に、秀長は期待を寄せる。

秀長は郡山の城下町を家臣たちとともに歩いてみたところ、改めて空き家が目立つことに驚く。その中に、慶が筆を買い求めたという筆屋が見つかる。店主の才蔵(さいぞう/間宮祥太朗)が現れて、奈良では座に縛られて、いいものを作りたいと思っても数をそろえるように急き立てられ、しかも見合わぬ値がつけられている。座に加わっていなければ、筆のもととなる軸や毛も手に入らなくなってしまって、思うようにできなかったと言う。そこに「お殿様が郡山での商いを認めてくださいました。今しかないと座を飛び出した」と言うが、郡山は閑古鳥が鳴いていて、もう商いそのものを半ばあきらめている状況だ。

秀長は奈良の筆屋の座の面々と会った。しかし、彼らは自分たちは古よりのしきたりを守りたいだけだと、頑なに聞き入れない。この国を動かしているのは武家でも寺社でもなく、我ら商人であると言うのだ。秀長はひとつ提案をする。「一月で郡山を人が集まる栄えた町にしてみせよう。そしてその目で奈良と郡山、どちらが商いに適した町か見極めるがよい。もし一月で何も変わらなければ、そのときはそなたたちに従おう」

無茶な提案に側近たちは反対するが、秀長は「郡山を商いに適した町にするため、商人らの店の借り賃を免除し、当座の商いに入り用の金を貸し付ける」と宣言する。「銭を産む者に銭を貸すのじゃ。さすれば町は富み、民もわしらも潤うというもの、まさに万事円満じゃ」

そのためにも才蔵の筆が必要なのだと、改めて秀長は才蔵に協力を頼む。才蔵も秀長の心意気に、「精一杯励みまする!」と応える。さらに、皆が商いをしやすい土地にするために、買い手のことも考えて、同じ商いをひとところにまとめることを正親が提案する。「一理あるな!」と秀長も賛成する。

その日から家臣も家族も一丸となって、筆の売り込みに、奈良、京、大阪、堺と飛び回る。秀長は千宗易(そうえき/吉岡秀隆)を呼び寄せる。そして堺の商人たちに郡山への移住を勧めてくれないかと頼むが、「無理強いをされても人はなかなか動かれへん」と断られる。だが、宗易はあることを思いつく。それは、今をときめく絵師・狩野永徳(えいとく/片岡鶴太郎)に筆を勧めてみるということだった。ただし、永徳は屏風の端から端まで線を引いてもかすれないで引ける、そんな筆でないとダメだ、そんな筆があればいくらでも買うと言う。

何としても永徳に認められる筆を作りたいと思う秀長たちは、家臣たちがあらゆる獣の毛を集め、才蔵に片端から作らせる。だが、さまざまな配合を試みるも、なかなか屏風の長さ分かすれずに書ける筆が出来上がらない。

そんな時、慶と末が陣中見舞いを持って訪れる。慶は自らが手習いを見ている子どもたちが才蔵の筆で書いたものを、才蔵に渡す。どれも墨がくっきりとしたよい字である。それを見て心が励まされた才蔵は、再びやる気を取り戻す。

そのとき、その目に、末が身に着けていた毛の束の装飾が目に留まる。堺で買い求めた「天竺(てんじく=インド)伝来のヤクという獣の毛じゃそうじゃ」と末が説明するや、才蔵は「これだ!」と飛びつく。「この毛を使えばできるかもしれませぬ」。驚いた末だが、ほんの少しなら使ってもよいとしぶしぶ承諾。才蔵は思い切り切り取って、それに鹿と山羊の毛を合わせて筆を作った。

そして、試し書きをしてみると、みごと端から端まで、ついに一カ所のかすれもなく線が引けたのだった。試し書きを促された秀長は、たっぷり墨を含ませた筆で「和」の一字を書いた。和を以て、この大和の国を栄えさせていく、その決意の表れだった。

筆は永徳が買い求めることとなり、才蔵の店も繁盛する。それが呼び水となり、あれほど頑固に郡山移転を拒否していた奈良の座の連中も、手のひらを返したように、郡山で商いを行うことになり、郡山は商いの町として発展していくのであった。

秀吉もついに新たな「氏」を「豊臣」と定めた。そこには自分のことを支えてくれている、自分が大切に思っているすべての者たち、万民を豊かにするという願いが込められていた。ここに羽柴豊臣朝臣(あそん)秀吉が誕生した。兄弟は大坂の空の下、郡山の空の下、同じ目標に歩を進めながら「達者にしているかのう」と互いを思っているのだった。

秀長は、紺屋町、材木町、綿町、茶町、豆腐町、雑穀町、藺(いの)町、魚塩町、本町、奈良町、堺町、今井町、柳町という13の町からなる自治組織を作った。彼らは地租が免除される見返りに、城下町の治安維持、防火、伝馬(馬の調達)などの都市機能を請け負ったと言われている。「万事円満」をモットーにした地道な秀長らしい町づくりが、今も残る町名からも感じられて、いいなあと思う。

坂口涼太郎、伊藤健太郎、間宮祥太朗などと次々豪華なゲスト出演者が現れて、そのことにも驚いてしまう2回であった。しかし、どれも強烈な印象を必要とされる役柄で、やはりこの人だからの説得力だなと感心することも多かった。一方、家臣団のムードメーカー正勝が、まさかの「ナレ死」。寂しくなるが、さて天下一統への道は、このまましばらく安泰に進むのか。いよいよ大詰めになってきた物語、次回も見逃せない。

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