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「団地のふたり」最終回。今はまだ、物語が終わった気が全くしない。この団地の“引力”は半端じゃない

  • 2026.10.7

「団地のふたり」最終回。今はまだ、物語が終わった気が全くしない。この団地の“引力”は半端じゃない

一昨年、NHK BSで大きな話題を呼んだ「団地のふたり」が、NHKドラマ10で地上波放送に。小泉今日子と小林聡美が演じる50代の幼なじみと、団地に暮らす人々との何気ない日常を、やさしいまなざしで描いた名作です。もう一度楽しみたい人も、初めて見る人も、その見どころを振り返ります。第10話、最終回です。 ※ネタバレあり

赤いエプロン姿で頭には三角巾をつけたキョンキョン

なんと団地に平凡な“日常”が戻ってきた。それはつまり、まさかの「どんでん返し」が起こったわけだが、そのおかげで穏やかな生活の魅力を再認識できる。前回、前々回と、団地のみんなが住まいのことで翻弄される様子をじっくり見せたのは、平凡な暮らしの中にある幸せを際立たせるための、巧みな演出だったように思う。

大騒ぎの末に、団地の建替え計画はデベロッパーの撤退という形で白紙になった。ふたりが離れずにすんだのはなによりだが、あいかわらずノエチ(小泉今日子)は大学での仕事が見つからない。そこでアルバイトを始める。近所のスーパーでレジに立ったり、ときに喫茶店の入場整理係をやったり、慣れないことばかり。

ノエチはバイトの休憩時間も惜しんで職探しをするのだが、携帯に届いたお知らせを見ては、ため息をつく。赤いエプロン姿で頭には三角巾をつけたノエチが、スマホの画面を見つめる様子には、ほんのり悲哀も感じられ、同年代として他人ごとと思えなくなってくる。

そんな矢先、信じられないような幸運が舞い降りてきた。東山さん(ベンガル)が、とある大学教授を紹介してくれたのだ。

その後は順調に話が進み、来年の春からは常勤講師として働けることが決まった。ノエチの業績が評価されたことをなっちゃん(小林聡美)も自分のことのように喜ぶ。そこからはふたりとも終始ご機嫌で、クリスマス会、そしてお正月を迎える準備、どの場面にもかわいいエッセンスがぎゅっとつまっている。まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなハッピーな時間だ。

そして、この団地になくてはならない「名物」の佐久間のおばちゃん(由紀さおり)や福田さん(名取裕子)も、いつの間にやら戻ってきている。この団地の“引力”は半端じゃない。

息子夫婦とは「スープの届かない距離」がちょうどいい、と気づいたおばちゃん。ひとり暮らしを続けながら、ご近所の人たちとゆるやかにつながる生活が、自分にとって一番いいと再確認できた。

そして12月31日の夕方には、ノエチとなっちゃんがご近所のみなさんから託されたリストを持ってデパートに買い物に行く。どうやらこれは恒例行事らしい。閉店間際の時間を狙ってお値打ち品をゲットするのが大事なミッションなのだ。

ノエチが持って帰ってきた豪華なおせち料理を見てお母さん(丘みつ子)は「これが半額~!」と歓声を上げる。団地で新年を迎えられることが夢のようなのだ。いろいろあった1年だったが、こうやっていつもどおりの生活を送れるようになったことが、今は最高に嬉しい。

こんなふうに団地には平和な時間が流れ、それぞれに家族や親友とともに穏やかな年末を迎えようとしている。

いつの間にか、自分がこの団地に住む一員であるかのような

そして、大晦日の晩にはとっておきのサプライズで「ふたり紅白歌合戦」が用意されていた。ここでは80年代にタイムトリップしたかのように、ふたりが当時のヒットソングを熱唱していく。アカペラでコミカルに歌う様子は当時のコント番組を見ているようでもあり、懐かしさがこみ上げる。曲のチョイスも絶妙で、たとえば「ウエディング・ベル」(Sugar)では最後のフレーズも挟み込んで、サービス精神満点だ。そして最後は、きっちり「蛍の光」で締めくくる。

このドラマは最後の最後まで日常の風景を描くことに徹していた。悪人は出てこないし、警察沙汰の事件も起きなければ、三角関係や嫉妬で人間関係がこじれることもない。それにもかかわらず、驚くほど引き込む力を持っている。その理由を考えるに、まずふたりのお気楽な会話のなかに笑いのエッセンスがたっぷり含まれていたこと。そして他の登場人物も愛らしく、どこかとぼけた要素を持っていて、こちらの気持ちをほぐしてくれることにあったと思う。

また、誰かの悪口が出てこないのが物足りないかというと、そうでもない。このふたりは言葉にはしなくても、ときに心の中でボヤいたりして、多面性を持った人物であることが分かるので、言動一つひとつに共感できた。

そしてドラマで扱われるテーマが親の老い、自分の体のこと、家の老朽化の問題など、どれも視聴者にとってリアルなことなのだが、そこにユーモアセンスを感じる展開が用意されていたことで、ずいぶん救われた。

さらに言わずもがな、俳優たちの魅力、確かな演技、すばらしい演出の力によるところも大きい。これら魅力的な要素があいまって、いつの間にか、自分までもがこの団地に住む一員であるかのような感覚ではまり込んでいったのだと思う。

今はまだ、物語がここで終わった気がまったくしない。当分は頭の中に、団地の個性的な面々が住み続けるだろう。それならば、ひとつ居心地のよさそうな喫茶店を探してみようか。そして親しい誰かとの会話を楽しみ、甘いものをほおばって、幸せなひとときをかみしめるのだ。

ふたりのような暮らしをときに思い描きながら、日常の生活の中にある“ご機嫌”な時間を大切にして、ゆったりのんびりやっていこう。

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