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スーパーで「レジ袋はお使いになりますか?」完全無言の男性客…お釣りを渡そうとすると→“顎でサッと指したモノ”に店員が困惑したワケ

  • 2026.10.17
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

スーパーのレジ業務といえば、ただ商品をスキャンしてお会計をするだけの仕事に見えるかもしれません。

しかし、そのレジ台ひとつを挟んだ向こう側では、毎日さまざまなドラマや思わぬハプニングが繰り広げられています。

丁寧な挨拶や「ありがとう」の一言に心が温まる瞬間もあれば、思わず首をかしげたくなるような「理不尽な対応」に直面することも少なくありません。

今回は、私がスーパーのチェッカー(レジ担当)として働いていた頃に体験した、対応に非常に苦慮したお客様とのエピソードをご紹介します。

始まりは、静かな「気まずさ」から

その日は夕方のピークタイムを少し過ぎた頃で、店内は比較的落ち着いていました。

私の並んでいたレジに、カゴいっぱいに商品を詰めた男性のお客様がやってきました。

「いらっしゃいませ!」

いつも通り笑顔で挨拶をし、手際よく商品をスキャンしていきます。牛乳、豆腐、お肉、そして惣菜や生鮮食品など、一般的なご家庭の買い物といったラインナップです。

スキャンを終え、レジ袋の有無を確認しようと声をかけました。

「お会計の前に失礼いたします。レジ袋はお使いになりますか?」

しかし、返事はありません。お客様はスマホの画面を見つめたまま、微動だにしませんでした。聞こえなかったのかなと思い、少しトーンを上げて再度尋ねます。

「恐れ入ります、レジ袋のサイズはいかがいたしましょうか?」

やはり、無言。

チラリとこちらを一瞬見たものの、口を開く気配すらありません。目線や頷きといったジェスチャーすらなく、ただ無表情で佇んでいるのです。

(……あれ? もしかして耳が聞こえにくいのかな?)

そう思い、レジ横に用意してある「指差し確認用のPOP」を示しながら、「袋はご利用ですか?」と丁寧にジェスチャーを交えて尋ねてみました。しかし、お客様はため息をつかれるだけで、まるで『急いでほしい』と言われているように感じてしまいました。

無言のまま手でしっしっと追い払うような小さな仕草をされたため、「袋はいらない」という意味だと判断し、お会計へ進むことにしました。

お会計でも続く「完全無言」のプレッシャー

「お会計、合計で4,520円でございます」

自動釣銭機の投入口を差し示しながらご案内すると、お客様はポケットから1万円札を無造作に放り込むように入れました。

「1万円お預かりいたします。お釣り5,480円でございます」

釣銭機から出てきたお札と小銭をトレーに整え、お渡ししようとしたときです。お客様は一切口を開かないまま、顎でサッと「マイバッグ」らしき折りたたまれた袋を指しました。

「……あ、こちらにお詰めしましょうか?」

確認のために尋ねますが、もちろん返事はありません。ただ、腕を組んでこちらをじっと見つめてくるだけです。

どうやらこちらで袋詰めをご希望されているようでした。

通常、うちの店舗ではセルフレジやサッカー台(商品詰める台)でお客様ご自身に詰めていただく運用になっていましたが、混雑していなかったことと、これ以上押し問答を続けても埒があかないと判断し、サービスとしてこちらでマイバッグへ商品を詰めることにしました。

口を開かないお客様との「察し合いバトル」

ここからが本当の試練でした。

商品を詰める順番や配慮には、人それぞれこだわりがあります。普通なら「重いものは下にしてください」「温かいお惣菜と冷たいアイスは別で」といったやり取りが発生する場面です。

「お肉のパック、ビニール袋にお入れしてよろしいですか?」 

「こちらのお惣菜と冷たい牛乳、分けた方がよろしいですか?」

しかし、相手は完全無言。何ひとつ答えていただけませんでした。

もし適当に詰めて、後から「潰れた!」「温かいものと冷たいものが一緒だ!」とクレームになっても困ります。私は全神経を研ぎ澄ませ、これまで培ってきたレジのノウハウをフル回転させました。

  1. 一番下に重くて丈夫な牛乳パックやペットボトルを配置
  2. お肉やお魚のトレーはすべて漏れ防止のポリ袋へ丁寧に包む
  3. 温かいコロッケと冷たいお豆腐は、バッグ内で絶対に触れ合わないよう反対側に配置
  4. 一番上には潰れやすい食パンと卵をそっと載せる

一挙手一投足、お客様の表情を伺いながら「これで文句はないはず…!」という完璧な配置でマイバッグのファスナーを閉めました。

「お待たせいたしました。こちらでよろしいでしょうか?」

最後まで笑顔を絶やさずにマイバッグを手渡すと、お客様は相変わらず一言も発することなく、ひょいとバッグを持ち上げ、そのまま背を向けて店を出ていきました。

「……ありがとうございましたー……」

去りゆく背中に向かって、力なく声を絞り出すのが精一杯でした。

「言葉のない接客」を経験して思ったこと

後からドッと押し寄せてきたのは、激しい徒労感でした。

レジの現場では、「理不尽に怒鳴られる」ことと同じくらい、相手の意図が読み取れない中で、手探りで完璧な対応を目指さなければならないことも大きなプレッシャーになります。

接客業である以上、さまざまなお客様がいらっしゃいます。もしかしたら、体調が悪い日や、声が出しづらいご事情があったのかもしれません。目に見えるやり取りだけが全てではないと、深く考えさせられた出来事でした。

「お客様は神様」という言葉が一人歩きしがちな現代ですが、レジの向こう側にいるのも同じ人間です。

ほんの少しの互いの思いやりや意志疎通があれば、日常のちょっとした買い物はもっと温かいものになるのではないか――そんなことを深く考えさせられた、忘れられない「無言のレジ体験」でした。


ライター:あんこ 
スーパー勤務歴8年のWebライター。普段はレジ打ちや品出し業務に励みながら、接客の現場で生まれる心温まる日常やクスッと笑えるエピソードを言葉に紡いでいます。長年の現場経験を生かしたリアリティのある視点と、親しみやすく読者の心により添う文章づくりが強み。日々の暮らしにちょっとした癒やしと笑顔をお届けします。


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