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SNSで投資先を選ぶ人、自信は高いのに実際の知識は低かった

  • 2026.10.6
SNSで投資先を選ぶ人、自信は高いのに実際の知識は低かった
SNSで投資先を選ぶ人、自信は高いのに実際の知識は低かった / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

通勤電車でSNSを開くと知らない誰かが投資のコツを熱く語っていて、見ているうちに自分まで詳しくなった気がしてきます。

今や投資のアドバイスは、指でスクロールするだけで手に入る時代です。

YouTubeやTikTok、Redditなどでは、株の選び方からSNSで話題の銘柄まで、さまざまな投資情報が次々と流れてきます。

けれども、そうした情報で投資を学んだ人は、本当に投資に詳しくなっているのでしょうか。

米ジョージア大学の研究チームは、2,500人を超えるアメリカの投資家のデータを使い、この疑問に迫りました。

研究の詳細は、2026年7月3日付で学術誌『International Journal of Bank Marketing』に掲載されました。

目次

  • 投資の「自信」と「実力」をどう測ったのか
  • SNSで投資を学ぶ人の自信と実力は釣り合っていたのか?
  • 売買が多いのは「乗り遅れたくない」から?

投資の「自信」と「実力」をどう測ったのか

投資の「自信」と「実力」をどう測ったのか
投資の「自信」と「実力」をどう測ったのか / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

投資について「自分はどれくらい知っているか」という感覚と「実際にどれくらい知っているか」は、同じとは限りません。

研究では、前者を「主観的な知識」、後者を「客観的な知識」と呼んで区別しています。

情報の入り口がSNSなのか、新聞やテレビなのかで、この2つの関係が変わるのかどうかが今回の焦点です。

研究チームが使ったのは、2021年に行われた全米規模の2つの調査のデータです。

対象は、退職用の口座とは別に投資をしている2,500人以上のアメリカの成人でした。

参加者はまず、投資についてどのくらい知っていると思うかを、1から7までの7段階で自己評価しました。

その次に待っていたのが、いわば「答え合わせ」です。

株や債券、リスクとリターン、インデックスファンド(株価指数に連動するように運用される投資信託)、空売り(借りた株を売り、値下がりしてから買い戻す取引)、オプション取引(決められた値段で売り買いする権利をやりとりする取引)などを扱った11問の選択式の問題に答えてもらったのです。

さらに調査では、投資先を選ぶ時にSNSのグループや掲示板を頼りにしているか、YouTubeやFacebook、Reddit、TikTokなどで投資を学んでいるかも尋ねました。

新聞や雑誌、テレビ、ラジオといった従来のメディアを使っているかどうかや、どのくらいの頻度で売買しているかも調べています。

こうして、情報源ごとに「自信」と「実力」のずれを比べられるようにしたのです。

SNSで投資を学ぶ人の自信と実力は釣り合っていたのか?

SNSで投資を学ぶ人の自信と実力は釣り合っていたのか?
SNSで投資を学ぶ人の自信と実力は釣り合っていたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

まずは、参加者がどこから投資の情報を得ているのかを見てみましょう。

投資の情報集めにSNSを使っていると答えた人は4人に1人以上、どの株に投資するかを決める時にSNSを頼りにしている人はおよそ5人に1人でした。

一方で、新聞やテレビなどの従来のメディアから投資の情報を得ている人は、75%近くにのぼりました。

そして肝心の「自信」と「実力」の関係を分析したところ、情報源によってはっきりとした違いが見えてきました。

投資先選びをSNSに頼っている人は、自分の投資の知識に強い自信を持っている傾向にありました。

ところがその人たちは、問題で測った実際の知識が低い傾向にあり、会社の株や空売りといった基本的なテーマの問題に苦戦していたのです。

つまりSNSに頼る人たちでは、「自分は分かっている」という感覚と実際の理解の間にずれが見られたわけです。

これとは対照的に、新聞や雑誌、テレビ、ラジオといった従来のメディアを使う人は、自信と実際の知識のどちらも高い傾向にありました。

従来のメディアの利用者は、自分は分かっていると感じていて、実際にも分かっていたのです。

研究の責任著者で、ファイナンシャル・プランニングや消費者経済学を専門とするスワーン・チャタジー教授は「基本的に、人々がSNSを使っていると、自信は高まるけれど本当の知識は高まらないということが分かりました」と述べています。

筆頭著者で同大学の博士課程の学生であるシャオユアン・スン氏も「SNSから投資の情報を得ているなら、おそらく深いところまでは分かっておらず、仕組みも知らず、その投資商品が自分に合っているかを確かめることもできないでしょう」と話しています。

違いが見られたのは、知識だけではありませんでした。

投資の情報集めにSNSを使うことも、従来のメディアを使うことも、どちらも売買の頻度の高さと結びついていました。

その中でも、SNSで情報を集める人は、従来のメディアを好む人に比べて売買の回数が多い傾向にありました。

さらに研究チームは「媒介分析」(ある要因と結果の間に入って両者をつなぐ要因を調べる手法)を使い、SNSの利用と売買の多さの関係に、実際の知識がどう関わっているのかも調べました。

その結果、実際の知識が、SNSの利用と売買の頻度の関係を負の向きで媒介していることが報告されています。

売買が多いのは「乗り遅れたくない」から?

売買が多いのは「乗り遅れたくない」から?
売買が多いのは「乗り遅れたくない」から? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

では、なぜSNSで情報を集める人は売買が多い傾向にあるのでしょうか。

チャタジー教授は、その背景に「取り残されることへの恐れ(FOMO)」が関わっている可能性を挙げています。

「次の注目株や投資のチャンスについて誰かが話しているのを絶えず目にしていると、チャンスを逃したと感じる前に飛びつきたくなってしまうのです」と教授は語ります。

とはいえ、SNSが投資家にとって悪いことばかりというわけではありません。

YouTubeやRedditのようなプラットフォームは、これまで投資を怖い、分かりにくいと感じていた人にとっても、金融の情報を見つけやすくしています。

チャタジー教授も「ある意味で、SNSは(投資の情報を)民主化していて、人々のアクセスを広げる助けになっています」と認めています。

ただし、情報に手が届きやすいことと、その情報の質が良いことは別の話です。

金融の専門家には仕事を縛るルールや規制がありますが、SNSで発信する人にはそれがなく、誰でも金融の情報や意見を発信できます。

短い動画や投稿は複雑な話題を分かりやすくしてくれる一方で、その途中で細かな部分が抜け落ちてしまうこともあります。

また、この研究には注意しておきたい限界もあります。

使われたのはある一時点の調査データなので、SNSを使ったから自信だけが高まったという因果関係までは言い切れません。

研究チームは今後、同じ人を長く追いかける調査や実験によって、時間とともに何が変わるのかを分析できるとしています。

それでも研究チームは、SNSが過剰な自信や行き過ぎた売買を後押ししうる可能性を指摘しています。

研究者たちは、投資家にSNSのアプリを消すよう勧めているわけではありません。

そのかわり、SNSで見つけた金融情報をそのまま信じず、問い直す力を身につけるよう呼びかけています。

論文も、金融サービスの専門家やアドバイザー、規制当局は、投資の知識とあわせて情報を批判的に見極める力の大切さを、顧客や消費者に伝えるべきだとしています。

スクロールするたびに増えていくのが本当の知識なのか、それとも「分かったつもり」なのかを、ときどき立ち止まって確かめてみる価値はありそうです。

SNSでいちばん確実に増えていくのは、どうやら資産ではなく「あとで見る」に保存した投稿の数なのかもしれません。

参考文献

Social media may make investors feel more confident than they should be (Phys.org)
https://phys.org/news/2026-09-social-media-investors-confident.html

元論文

From media exposure to trading behavior: evidence from social media, traditional media and investor knowledge
https://doi.org/10.1108/ijbm-01-2026-0001

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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