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優しさはライバルを出し抜く「武器」にもなっていたと判明

  • 2026.10.5
優しさはライバルを出し抜く「武器」にもなっていたと判明
優しさはライバルを出し抜く「武器」にもなっていたと判明 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

職場で、頼んでもいないのに差し入れを配ってくれる同僚がいると、ありがたいのに少しだけ落ち着かない気持ちになるものです。

優しさや気前のよさは、ふつう競争とは正反対のものだと思われています。

ところが英語には「優しさで相手を打ち負かせ(kill them with kindness)」という言い回しがあります。

セントメアリーズ大学の心理学者メアリーアン・フィッシャー氏らは、この「優しさを武器にした競争」が女性の間でどう表れるのかを調べました。

では、親切をライバル対策に使うと答えた女性には、どんな性格の特徴があったのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年9月9日に『Frontiers in Psychology』にて発表されました。

目次

  • 「優しさで競う」研究の多くは男性が中心だった
  • 優しさを武器にする女性に共通した「ある性格」

「優しさで競う」研究の多くは男性が中心だった

「優しさで競う」研究の多くは男性が中心だった
「優しさで競う」研究の多くは男性が中心だった / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

進化心理学という分野には「競争的利他主義」という考え方があります。

人は自分の評判や立場を高めるために、持ち物を分けたり人を助けたりする、という考え方です。

ただ、これまでの研究の多くは男性に注目し、好みの相手の前で気前がよくなるといった目立つふるまいを中心に扱ってきました。

女性を含めた過去の研究では、結果がばらばらだったといいます。

フィッシャー氏らは、その理由を「探す場所がまちがっていたからではないか」と考えました。

女性どうしのライバル争いは、うわさ話や仲間外れ、評判の管理といった、遠回しでリスクの低い方法で行われやすいことが、多くの研究で示されているからです。

親切は仲間と評判を得られるうえに競争だと指摘されにくいので、こうした遠回しな競争にぴったりの道具だと考えられたのです。

そこでチームは、優しさの戦略的な使い方を測る「競争的利他主義アンケート」を新しく作りました。

対象は、主にイギリス・アメリカ・カナダに住む18〜45歳の異性愛の女性103人で、オンラインの調査サービスを通じて集められました。

参加者は「有利になるために手助けを申し出る」「ライバルよりよく見えるように気前よくふるまう」といった15の文に、どれだけ当てはまるかを答えました。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(女性の嫉妬心が強まる「恋のライバルの顔」が明らかに)

同じ文には、相手が女性の場合と男性の場合に分けて2回答えています。

あわせて、人を操ろうとする性格や協調性などを測る性格テストにも答えてもらいました。

優しさを武器にする女性に共通した「ある性格」

優しさを武器にする女性に共通した「ある性格」
優しさを武器にする女性に共通した「ある性格」 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

結果を見ると、優しさを競争に使うと答えた女性ほど「マキャベリアニズム(人づきあいを、自分の得のために操るものとしてとらえる性格)」が強いという、はっきりした関係が見られました。

つまり、戦略的な親切を多く報告した女性ほど、計算高く自分の利益を優先した人づきあいをする傾向があったのです。

反対に、心からの温かさや信頼、誠実な協力に関わる「協調性」が高い女性ほど、優しさを競争に使うと答える度合いは低くなっていました。

また、こうした優しさは、男性に向けるよりも、ほかの女性に向けて使うと答える度合いのほうが高くなっていました。

一方で、外向性や勤勉さとの関係は、予想に反して見られませんでした。

「神経症傾向(不安やいらだちを感じやすい性格)」は、優しさを競争に使うこと自体ではなく、それにともなう不安やいらだちと結びついていました。

たとえば「自分の親切が本心ではないと思われないか」という心配や、親切に気づいてもらえなかった時のいらだちです。

意外だったのは、自分をよく見せようと答えるくせが強い人ほど、優しさを競争に使うと答える度合いが低かった点です。予想とは逆の関係でした。

この結果にはいくつかの読み方がありますが、その一つは、参加者が戦略的なねらいを隠さずに正直に答えたという見方です。

自由に書いてもらった答えでも、女性たちは他人の戦略的な親切を、職場の上下関係の中でのふるまいや、SNSなどで見せつける場面、人前では温かいのに陰では裏返る態度として描いていました。

ただし、注意しておきたい点もあります。

アンケートの平均点は「どちらでもない」より低く、女性たちは平均すると、戦略的な親切の文に「当てはまらない」寄りの答えをしていました。

フィッシャー氏も、この研究はどんな女性がこうした行動を報告するかを示すもので、それが日常でどれほどよくあるのかや、うまくいくのかは分からないと述べています。

さらに結果は、主に欧米からオンラインで参加した人が自分で答えたものです。新しく作ったアンケートも、より大きな別の集団で確かめる必要があり、今回の結果はまだ初期の証拠です。

それでもこの研究は、優しさと競争は正反対ではなく、親切が競争の役目を果たす場合もあることを示唆しています。

もちろん、すべての親切が競争のためにあるわけではありません。

目の前の優しさが本心か作戦かを見破ろうとするより、自分の親切がいま誰のほうを向いているかに目を向けてみるほうが、ずっと実りがあるのかもしれません。

差し入れのクッキーが1枚多かったからといって、宣戦布告だと受け取るのはやめておきましょう。こうなってくると親切か攻撃か分からなくなってしまいそうですね。

参考文献

Kindness isn’t always what it seems: The psychology of women’s competitive altruism (PsyPost)
https://www.psypost.org/kindness-isnt-always-what-it-seems-the-psychology-of-womens-competitive-altruism/

元論文

Kill them with kindness: preliminary evidence for women’s competitive altruism
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1924479

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。 好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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