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50代男性「一番強い風邪薬を2箱ください」急いで購入しようとする客…薬剤師が見逃さなかった“見落としがちなリスク”

  • 2026.10.18
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

寒暖差で風邪をひく人が増えた10月、「一番強い風邪薬を2箱」とドラッグストアのカウンターに来た50代の男性。

服用する方について尋ねると、表情を硬くして会計を急ぎました。「疑っているんですか」という言葉の裏にあったのは、遠方で一人暮らしをする父への“仕送り”と、見落とされていた飲み合わせのリスクでした。

家族に市販薬を送る前に確認したいポイントもお伝えします。

市販薬コーナーで交わした、かみ合わない雑談

「この中で一番強い風邪薬、2箱ください」

10月の週末、50代くらいの男性が総合感冒薬の箱を手に、カウンターへ来られました。

咳止めの成分も含まれた商品です。この種類の薬は、乱用を防ぐため、複数個を購入される場合に使う方や理由を確認することになっています。

「お飲みになるのはご自身ですか」と伺うと、男性の表情がさっと硬くなりました。財布を開いたまま、「そうですけど」と短く答えます。

「2箱ということは、ほかの方も飲まれますか」と続けると、男性は「家族みんな寒暖差でやられてて」と言い、レジの方に視線を移しました。

「早くしてもらえますか。疑ってるんですか」

「そんなつもりでお聞きしたのではないんです。飲む方に合ったお薬かどうか確かめたくて」とお伝えすると、男性はしばらく黙り込みました。

強い薬を求めた本当の相手

やがて男性は、ぽつりと話し始めました。そこには、男性なりの理由があったのです。

「一人暮らしの親父に送ってやりたいだけなんです」

80代のお父さまが遠方で一人暮らしをしていて、毎月、食品や日用品をまとめて送っているそうです。電話で「風邪気味だ」と聞き、すぐ送ろうと考えたとのことでした。

「親父は病院が嫌いで。薬局で相談すると、『病院を受診させてください』と言われるのが分かっていたから、言いたくなかったんです」

電話で確認して分かった、父が毎日飲んでいる処方薬

お父さまが普段飲んでいるお薬を伺うと、男性は「確か血圧の薬くらいだったと思う」と言い、その場で電話をかけてくださいました。お父さまに確認してもらったところ、血圧の薬に加えて、前立腺肥大の薬も飲まれていることが分かりました。

男性が選んだ風邪薬には、尿が出にくくなる副作用が出るおそれのある成分や、血圧に影響する成分が含まれていました。説明を聞いた男性は、「何も知らずに送るところでした」とつぶやきます。

結局、お父さまにはかかりつけの薬局で相談してもらうことにして、その日はマスクと経口補水液を買って帰られました。

最初は警戒されていた男性の不器用な親孝行を知り、こちらまで救われたような気持ちになりました。

家族に市販薬を送る前に確認しておきたいこと

送る相手の“今飲んでいる薬”を把握しておく

高齢のご家族は、複数の処方薬を飲んでいることが少なくありません。

風邪薬や花粉症の薬にも、持病の薬と相性の悪い成分が含まれていることがあります。送る前に、お薬手帳の内容を電話で読み上げてもらうなどして確認しておくと安心です。

薬剤師に相談する時は、飲む人の情報を先に伝える

「飲むのは◯歳の父で、血圧の薬を飲んでいる」と最初に伝えていただければ、より適した商品を選びやすくなります。

薬剤師の質問は、疑っているからではなく、安全に使っていただくためのものです。


※登場人物のプライバシー保護のため、内容の一部を変更しています。

ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。


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