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薬局で「もう20分も待ってるんですよ!」順番が前後し憤る60代男性…薬剤師が気づいた“怒りの裏にある事情”に「ハッとした」

  • 2026.10.12
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

寒暖差で処方せんが急に増えた10月の夕方、「後から来た人が先に呼ばれた」と3度もカウンターへ来た60代の男性。

苛立っているように見えたその態度の裏には、切実な理由がありました。

待ち時間に事情があるときに知っておきたい、ちょっとした伝え方の工夫もご紹介します。

後から来た人が先に呼ばれた、と詰め寄られた夕方の待合室

「もう20分も待ってるんですよ。今の人、私より後に来ましたよね」

急に冷え込んだ週の夕方のことです。カウンターに来られたのは60代くらいの男性でした。

手にしていた番号札は「38番」。直前にお呼びしたのは「41番」の方です。男性がカウンターに来るのは、これで3度目でした。

男性は番号札を強く握りしめていました。話している最中も、何度も自動ドアの向こうの駐車場へ目をやり、そのたびに腕時計を確認していました。

声は大きくないものの、早口で落ち着きがありません。待合室の何人かが、こちらの様子をうかがっていました。

その日は風邪症状や咳の処方が集中し、待ち時間は普段の倍近くになっていました。男性の処方せんは7種類あり、粉薬の計量も必要でした。一方、41番の方は1種類だけでした。

当薬局では調剤が終わった順にお呼びしていて、その旨は掲示もしていました。

「申し訳ありません。あと10分ほどかかります」

とお伝えすると、男性は「10分……」とつぶやき、表情を曇らせました。その顔は怒っているというより、焦っているように見えました。

苛立ちの理由は「待たされたこと」ではなかった

気になった私は、「何かお急ぎのご事情がありますか」と尋ねてみました。

男性は少し黙ったあと、声を落として言いました。

「車で妻を待たせているんです。15分で戻るって約束してきたので」

「妻が一人で待てるのは15分が限界なんです」

エンジンを切った車内に残された、認知症の妻

奥さまは認知症で、人の多い場所や呼び出しの音が苦手なのだそうです。待合室にいると落ち着かなくなるため、いつも車の中で待ってもらっているとのこと。エンジンをかけたままでは危ないからと、車のエンジンは切っていました。

以前、約束の時間を過ぎたときに、奥さまが車を降りて駐車場を歩き回っていたことがあったそうです。何度も時計を見ていたのは、そのためでした。

私は「お薬ができたら携帯にお電話しますので、奥さまのところへ戻ってください」とお伝えしました。

8分後に電話をすると、男性は落ち着いた表情で戻ってこられ、「最初からそう言えばよかったですね」と頭を下げられました。

「順番」の話だけで説明しようとしていた自分に、私はハッとさせられました。

待ち時間に事情があるときの伝え方と工夫

混んでいる時に待ち時間があるのは仕方ありませんが、伝え方を工夫するだけで苛立ちや行き違いを和らげることはできます。

順番そのものを入れ替えるのは難しくても、事情が分かれば薬局にできることはあります。

「家族を車で待たせている」「◯時から予定がある」と受付で一言伝えていただければ、できあがりのお電話や、空いている時間帯のご案内などで対応しやすくなります。

処方せんの事前送信サービスで待ち時間を減らす方法

インフルエンザワクチンの接種等が始まる10月は、医療機関も薬局も混み合います。

処方せんの写真をアプリやFAXで事前に受け付け、患者さんの到着前に準備を進められる薬局も増えています。ただし、紙の処方せんの場合は、来局時に原本を持参する必要がある点だけご注意ください。

※登場人物のプライバシー保護のため、内容の一部を変更しています。


ライター:下田篤男

京都大学薬学部総合薬学科を卒業後、調剤薬局やドラッグストアグループで薬剤師として勤務してきました。総合病院の門前店舗では管理薬剤師を務め、たくさんの患者さんと向き合う日々の中で、「薬を渡す」だけではない、人と人との関わりの大切さを実感しています。現在は薬剤師として現場に立ちながら、医療記事の執筆・編集や薬局経営コンサルタントとしても活動中。読者の皆さまに、薬局がもっと身近で頼れる場所になるような情報をお届けしていきたいと思っています。


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