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腹痛を訴える70代女性の救急要請→なぜか『自宅から離れた病院』を指定され…事情を聞いて分かった“予想外の理由”

  • 2026.10.29
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。ライターのとしです。

救急現場では、傷病者から搬送先について強い希望を伝えられることがあります。

今回は、腹痛を訴えた70代女性が、自宅からかなり離れた病院を希望した事案をご紹介します。

腹痛を訴えた70代女性

70代女性が腹痛を訴えているとして、自宅から救急要請が入りました。

救急隊が到着すると、女性から症状の経過や痛みの程度などを聞き取りながら状態を観察しました。

その結果、医療機関で診察を受けた方がよいと判断し、搬送先について話を進めることになりました。

すると女性から、ある病院へ連れて行ってほしいとの希望がありました。

ただ、その医療機関は自宅からかなり距離のある場所にありました。

しかも、女性自身のかかりつけ病院ではありませんでした。

「どうしてその病院を希望しているのだろう」

理由を確認すると、そこには家族の事情がありました。

夫が入院している病院だった

女性が希望していたのは、夫が入院している病院でした。

もし自分も入院することになった場合、夫婦が別々の病院に入院すると、子どもたちはそれぞれの病院へ行き来しなければなりません。

女性は、その負担をできるだけ減らしたいと考えている様子でした。

そのため、可能であれば最初から夫と同じ病院で診てもらいたいという希望だったのです。

一見すると、かなり離れた医療機関を強く指定しているようにも見えました。

しかし、話を聞けば、単に「この病院がいい」というだけではなく、家族のことを考えた理由がありました。

そこで私たち救急隊は、女性が希望する医療機関へ連絡しました。

女性の症状だけでなく、夫がその病院へ入院していることや、本人が同じ病院を希望している事情も伝えました。

医療機関から返ってきた答え

事情を説明したものの、希望先の医療機関からは、まずは現在地周辺で対応可能な医療機関で診察を受けてほしいとの回答でした。

そのうえで、診察の結果、入院が必要となった場合には、その時点で改めて相談してほしいという内容でした。

私たち救急隊としても、その説明はもっともだと感じました。

救急搬送では、本人の希望だけで搬送先を決められるわけではありません。

傷病者の状態や必要な診療、医療機関の受け入れ状況などを踏まえ、その時点で対応可能な医療機関へつなぐ必要があります。

女性にも、希望先の医療機関からの回答をそのまま伝えました。

また、まずは今の腹痛について診察を受けることを優先し、その後のことは診断結果を踏まえて相談していくことになると説明しました。

女性はすぐには納得しきれない様子でした。

それでも何度か説明を続けると、最終的には近隣の医療機関へ搬送することを了承してくれました。

強い希望の裏にある事情

その後、女性を受け入れ可能な医療機関へ搬送しました。

搬送中に大きな容態変化はなく、無事に医師へ引き継ぐことができました。

救急現場では、「この病院へ行きたい」という強い希望だけを聞くと、なぜそこまでこだわるのだろうと感じることがあります。

しかし、今回のように詳しく事情を聞くと、その背景に家族への負担を減らしたいという思いが隠れていることもあります。

本人の希望を聞くことは大切ですが、救急搬送では、その希望が必ずかなえられるとは限りません。

だからこそ、なぜその病院を希望しているのかを確認し、その事情も含めて医療機関へ伝えたうえで、今の状態に合った搬送先を考えることが必要です。

強い要望だけを見て判断せず、その背景にある事情まで聞くことの大切さを改めて感じた事案でした。


ライター:とし

元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。
現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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