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「転んで頭を打った」80代女性の救急要請→しっかり“会話”はできているが…救急隊が気づいた“重大な異変”

  • 2026.10.16
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。ライターのとしです。

救急要請では、通報された内容と実際に現場で確認できる状態が、必ずしも一致するとは限りません。

今回は、「転倒して頭を打った」との通報で向かった80代女性に、別の異変も確認された事案をご紹介します。

「転んで頭を打った」との通報

80代女性が自宅で転倒し、床に頭を打ったとして、訪問していたヘルパーから救急要請が入りました。

救急隊が到着すると、まずヘルパーから転倒した状況や、その前後の様子について話を聞きました。

その後、女性本人にも声をかけ、どのように転んだのか、頭のどこを打ったのか、痛みはあるのかなどを確認していきます。

会話そのものはできていました。

ただ、話を聞いているうちに、女性の話し方が少し気になりました。

言葉がはっきりせず、ろれつがうまく回っていないように感じたのです。

「普段からこの話し方ですか」

転倒して頭を打ったのであれば、頭部のけがについて確認する必要があります。

しかし、救急隊は通報内容だけに絞って観察するわけではありません。

女性の全身を確認していくと、右側の手足にも麻痺を疑うような症状が見られました。

「この話し方や手足の動きは、普段からですか」

そばにいたヘルパーへ確認しました。

すると、

「昨日まではこんな感じではありませんでした。もっとはきはき話していました」

との答えが返ってきました。

普段の女性を知っている人から得られたこの情報は、私たちにとって重要なものでした。

どちらが先かは現場では分からない

ここで難しかったのは、何が先に起きたのかということです。

脳血管障害によってろれつの回りにくさや麻痺が出現し、その結果として転倒した可能性もあります。

一方で、先に転倒して頭部を打ち、その後に神経症状が出てきた可能性も、現場の段階では否定できません。

救急隊がその場で「こちらが原因だ」と決めつけることはできない状況でした。

だからこそ、転倒による頭部外傷と脳血管障害の両方を念頭に置きながら対応する必要がありました。

話し方の変化、右側の麻痺、そして「昨日までは普段通りだった」というヘルパーからの情報を合わせると、早急に医療機関で詳しく診てもらう必要があると判断しました。

そこで、対応可能な医療機関へ受け入れを依頼し、女性を搬送することになりました。

搬送中も意識状態や手足の動きなどを確認しながら病院へ向かい、大きな容態変化なく医師へ引き継ぎました。

搬送先で分かったこと

医療機関で詳しい検査を受けた結果、女性は脳梗塞と診断されたと聞きました。

比較的早い段階で医療機関へつなぐことができ、その後、大きな問題には至らなかったとのことでした。

今回の通報内容は「転倒して頭を打った」というものでした。

しかし、実際に傷病者と接触すると、話し方や手足の動きなど、転倒だけでは片づけられない所見も確認されました。

救急現場では、何が先に起きたのか分からないまま判断を迫られることもあります。

そのため、最初から一つの原因に決めつけず、複数の可能性を考えながら観察することが大切です。

また、普段の様子を知る家族やヘルパーから聞く「いつもと違う」という言葉も、大切な判断材料になります。

今回も、その小さな違和感を一つずつ確認していくことが、適切な医療機関へつなぐきっかけになった事案でした。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。
現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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