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配達に行くと「赤ちゃんがいるのでインターホンを鳴らさないで」→電話すると…受取人からの“指示”に「不審者だと思われないだろうか…」

  • 2026.10.16
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さまこんにちは。元宅配員のmiakoです。

皆さんは、ネットや通信販売などで商品を注文したことはありますか?
最近のネットショッピングでは、配達時の指示ができるところも多く、置き配を指定できるサイトも少なくありません。

置き配は、不在時や在宅中に手が離せないときでも、時間を気にせず荷物を受け取れる便利なサービスです。

受け取り時間の自由度が高まるほか、再配達の削減につながり、対面せずに荷物を受け取れる点なども、今の時代のニーズに合っているといわれています。

しかし、置き配を指定する側も、届ける側も、「置き配の場所」に戸惑うことがあります。

今回は、そんな置き配場所に戸惑った出来事をご紹介します。

置き配が今ほど広まる前の出来事

あれはまだ、置き配が今ほど浸透する前のことでした。

当時担当していた町に、とあるテラスハウスがありました。
現代風にいえばテラスハウスですが、少し古い言葉でいうと「長屋」といえばお分かりでしょうか。

2軒以上の住宅が壁を共有して建てられた、連棟式の賃貸住宅です。
マンションとは違い、共用のエントランスなどはなく、各住戸に専用の玄関や庭(テラス)があります。

私が伺っていたテラスハウスは、築十数年ほどの、少し年季の入った2階建ての建物でした。

玄関は西側と東側にあり、それぞれ異なるご家族が生活されていました。玄関前には、各家2台分の駐車スペースと、少しの空きスペースがありました。

ある日のこと、そのテラスハウスの片側にお住まいだった方が引っ越され、新しい方が入居されました。

玄関脇には、それまでなかった少し大きめの家庭用収納庫が置かれ、玄関ドアのそばにあるインターホンの隣には、張り紙がされていたのです。

『赤ちゃんが寝ています。インターホンを鳴らさないでください。』

印刷された文字の下には、かわいらしい赤ちゃんのイラストが描かれ、さらに手書きで「ご用のある方は携帯まで」と書かれていました。

張り紙の指示通りに電話すると「倉庫に置いておいて」

それまでなかった張り紙を見て、私は少し緊張しながら電話をかけました。

「もしもし、宅配便です。お荷物をお届けに玄関前まで伺っているのですが…」
「あ、ご苦労様です。玄関のそばにある倉庫の中に入れといてください」

電話に出られたのは、女性でした。

「かしこまりました。倉庫、開けてもよろしいですか?」
「大丈夫です。倉庫の中ならどこに置いてもいいので、お願いします」

これが、この家に住むA様との初めてのやり取りでした。

それからというもの、A様のお宅に荷物を届ける際は、チャイムを押さず、玄関の張り紙に書かれた番号に電話するようになりました。そして、電話をかけるたびに「倉庫に置いておいて」と指示をいただいていたのです。

また、ある日のことでした。
この日は電話をかけてもお出にならなかったため、不在票を入れて荷物を持ち戻りました。

すると、その後A様から電話があり、「これからは不在だったとしても倉庫の中に入れておいてくだされば大丈夫です」と、置き配の指示をいただくようになったのです。

約2年後、倉庫も張り紙も消えていた

そんなやり取りが2年ほど続いたでしょうか。
ある日、偶然反対側のお宅へ荷物を届けに行ったとき、置き配のお宅の前に違和感を覚えました。

まず、いつもあった倉庫がありませんでした。
おや?と思いながら玄関前に行くと、インターホンの隣に貼られていた、あの張り紙もなくなっていたのです。

どこかへ引っ越されたのだろうと思い、これでこのお宅への置き配も終わったのだと、そのときは思っていました。

数か月後、見覚えのある張り紙とお名前

それから数か月後のことです。
その日は、配達していた地域からさらに奥まったところにある、山間部の町を担当していました。

荷物を積んでいるとき、伝票に見覚えのあるお名前がありました。
しかし、住所は見覚えがなく、同姓同名の方もいらっしゃるため、そのときは深く考えずに荷物を持ち出し、住所を調べました。

その住所は、しばらく空き家になっていた一軒家でした。

この町の新しい住人の方なら、今後も荷物をお届けする機会が増えるだろうと思い、新しい住人さんのお名前をメモしました。

そして、そのお宅に到着したときのことです。
荷物を手に、いざチャイムを鳴らそうとインターホンの前まで来たとき、思わず「え?」と驚きました。

『赤ちゃんが寝ています。インターホンを鳴らさないでください。』

印刷された文字の下には、かわいらしい赤ちゃんのイラスト。そして、手書きで「ご用のある方は携帯まで」の文字。

そこには、以前見たものと全く同じ張り紙があったのです。
そして、荷物の伝票には、数か月前までのテラスハウスにお届けしていたA様のお名前がありました。

引っ越し先でも、また私が担当することになるとは思わず、何だかご縁を感じてしまいました。

倉庫が見当たらない新居

しかし、今度のお宅は、玄関の周りに倉庫が見当たりません。
張り紙に書かれた番号へ電話をすると、聞き覚えのある声が聞こえました。

あのA様でした。

ということは、また置き配の指示かもしれません。

「もしもし、宅配便です。お荷物をお届けに玄関前まで伺っているのですが…」
「あ、ごめんなさーい!倉庫置いといてもらえます?」
「すみません、倉庫が見当たらないのですが…」
「倉庫でしたら、玄関から離れた庭の奥にありますので、そこに置いといてください!」

どうやら電話口では急いでいらっしゃるようで、用件を伝えると、そのまま電話が切れてしまいました。

玄関から離れた庭の奥…。

そう思いながら、足を進めます。

通常、敷地の奥深くに入ることは安全面や防犯面から避けるべきで、各宅配会社の規定や、現場の安全確認の状況によっては、ご希望に添えずお断りするケースもありますが、
今回はお客様からの強いご希望と明確な指示があったため、特別に対応することにしました。それでも、やはり緊張が走ります。
敷地の奥へ進んでいくと、そこには見覚えのある倉庫が置かれていました。

しかし、ふと隣のお宅を見ると、柵越しに家の中がちらっと見えてしまいました。

ご近所の方から、不審者だと思われないだろうか…。

そう考えると、さらに緊張してしまいます。
ようやく倉庫にたどり着き、中に荷物を置きました。

そして、不在票に指示通り倉庫へお届けした旨を記入し、ポストに投函して、その場を後にしました。

何年経っても変わらなかった倉庫への置き配

その後も何年もの間、A様のお宅では、インターホンの隣の張り紙も、倉庫への置き配指定も変わりませんでした。

私もA様のお宅へお届けに行くたびに、ご近所の方から不審者だと思われないだろうかと、毎回ドキドキしながら、平常心を保って荷物を届けていました。

その間に、宅配便のシステムも少しずつ変わり、ネット上で置き配を指定できるようになりました。

ただ、「置き配」が始まった頃は、細かな場所の指定まではできず、玄関前が主な置き配場所でした。
そのため、たまにその町の配達を担当する宅配員が、A様のお宅の倉庫への置き配ルールを知らず、困ってしまうこともありました。

雨が降っていたため、荷物を持ち戻ったところ、「倉庫に届けてほしい」と言われたものの、肝心の倉庫の場所が分からなかったという話も聞きました。

ご家族との偶然の出会いで聞いた一言

そんなことが続いたある日のことです。

A様のご家族の方と、お宅の外でばったりお会いしました。

「あ、うちの荷物?いつも留守にして悪いね。嫁さん、嫌がるから倉庫に置いといてもらって全然大丈夫なんで、これからもよろしくです」

その言葉を聞いて、宅配便が頻繁に届くのを、周囲に気づかれることに抵抗があるのかもしれないと感じました。

また、対面での受け取りにも抵抗があるからこそ、非対面で受け取れる置き配に便利さを感じ、張り紙もそのままにされているのかもしれないと、何となく感じたのです。
さらに、玄関が道路に面していることから、防犯上、玄関前に荷物を置かれることに抵抗があり、倉庫を指定されていた可能性もあります。
場所が分かりにくかったのも、おそらくそこがA様のお宅にとって、一番都合のよい場所だったからなのでしょう。

私たち宅配員にできるのは、そうしたお客様のお気持ちに寄り添いながら、荷物をお届けすることでした。

その後、改めて宅配員たちにA様のお宅の倉庫の位置を確認し、情報を共有しました。
担当する宅配員たちも、置き配場所を改めて確認できたことで、安心した様子でした。

置き配を指定するとき、届けるときに

置き配には、そのお宅ごとのルールがあります。

置き配は玄関前だけでなく、倉庫のような場所でも指定できる場合があります。指示があれば、宅配員は指定された場所へお届けします。
ただし、今回のように敷地の奥まで入る場合などは、周囲の状況によって宅配員が不安を感じることもあります。

お客様にも、置き配場所だけでなく、そこへ向かうまでの状況を少し考慮していただけると、宅配員も安心してお届けできると思うのです。

また、宅配ボックスなど、施錠できるものがあれば、置き配をより安心して利用できる方法の一つになるでしょう。

お客様が安心して荷物を受け取れるように。そして、宅配員も安心して荷物を届けられるように。
お互いの小さな気づかいが積み重なり、荷物を通じた信頼関係が、これからも続いていく宅配業界であってほしいと願っています。



ライター:miako
宅配ドライバーとして10年以上勤務した経験を生かし、現場で出会った人々の温かさや、働く中で積み重ねてきた“宅配のリアル”を、経験者ならではの視点で綴っています。
荷物と一緒に交わされてきた小さなエピソードを、今は文章としてお届けしています。


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