1. トップ
  2. カルチャー・教養
  3. ウェッブ望遠鏡の最大級の1枚、主役はちりに隠れた星だった

ウェッブ望遠鏡の最大級の1枚、主役はちりに隠れた星だった

  • 2026.9.29
ウェッブ望遠鏡の最大級の1枚、主役はちりに隠れた星だった
ウェッブ望遠鏡の最大級の1枚、主役はちりに隠れた星だった / Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, K. Luhman, C. Alves De Oliveira, M. Zamani (CC BY 4.0)

夜空を見上げると目に入るのは明るく光る星ばかりで、そのすき間の暗がりまで気にかける人はあまりいません。

ところが宇宙では、そうした暗がりやちりの陰に、思わぬ天体が隠れていることがあります。

このほどジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、これまでに公開された中でも最大級のパノラマ画像を届けました。

写っているのは、ペルセウス座の方向に約1000光年離れた星のゆりかご「IC 348」です。

そして、このにぎやかな画像のあちこちには、「星とは何か」という定義そのものを揺さぶる奇妙な天体が潜んでいました。

それは、いったいどんな天体なのでしょうか。

この話題の詳細は2026年9月27日に『Live Science』にて公開されました。

目次

  • すぐ近くの星のゆりかごに潜む「失敗した星」
  • ちりに隠れていた「失敗した星」は、どこまで小さかったのか?

すぐ近くの星のゆりかごに潜む「失敗した星」

すぐ近くの星のゆりかごに潜む「失敗した星」
すぐ近くの星のゆりかごに潜む「失敗した星」 / Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, K. Luhman, C. Alves De Oliveira, M. Zamani (CC BY 4.0)

IC 348は、地球から最も近い星のゆりかごの1つです。

種類としては「反射星雲」(近くの星の光をちりが反射して光って見える星雲)にあたり、いままさに星が生まれている場所です。

今回の近赤外線画像では、星や光るガス、大きくたなびくガスとちりの雲が、入り組んだ風景のように写っています。

暗い雲と明るく光る雲のあいだには、若い星たちが点々と散らばっています。

天文学者たちはこの領域で、星が生まれる過程でできる天体の中でも、特に小さなものを調べています。

その主役が「褐色矮星」です。

星の大きさはさまざまで、ほんの数百万年で超新星爆発を起こす巨大な星もあれば、何十億年も輝き続ける最も小さくありふれた星「赤色矮星」もあります。

さらにその下には、木星のような巨大ガス惑星と星のちょうど中間にあたる、星未満の天体「褐色矮星」がいます。

褐色矮星は、ふつうの星と同じように、ちりとガスの分子雲が自分の重力でつぶれることで生まれます。

ところが星と違い、その中心は水素をヘリウムに変える核融合が起こるほど熱くはなりません。

このため褐色矮星は、ときに「失敗した星」とも呼ばれます。

では、この失敗した星はどこまで小さくなれるのでしょうか。

実はこれは、天体物理学でもまだ答えの出ていない問題です。

そこで研究者たちは、ウェッブ望遠鏡を使ってIC 348に隠れた小さな褐色矮星を探しました。

ちりに隠れていた「失敗した星」は、どこまで小さかったのか?

ちりに隠れていた「失敗した星」は、どこまで小さかったのか?
ちりに隠れていた「失敗した星」は、どこまで小さかったのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

研究者たちはまず、ウェッブ望遠鏡の観測装置「NIRCam」(近赤外線カメラ)でIC 348の一部を調べました。

その結果、褐色矮星の候補が39個見つかりました。

翌年には、別の観測装置「NIRSpec」(光を波長ごとに分けて調べる近赤外線分光器)を使って、このうち15個の光を詳しく調べています。

すると9個が、この星団に新たに加わる星未満の天体だと特定されたのです。

中でも最も暗いものは、質量が木星のおよそ2倍しかないと見積もられました。

これらは、これまでに見つかった中で最も軽い褐色矮星とされています。

星と惑星の中間とされる天体が、木星2つ分ほどの重さで見つかったことになります。

今回の画像に写る褐色矮星たちは、失敗した星がどこまで小さくなれるのか、その限界を絞り込むのに役立つと見られています。

もっとも、この画像の見どころは失敗した星だけではありません。

星が最も密集しているのは画像の中心付近で、明るい星からはウェッブ望遠鏡に特有の光の筋「回折スパイク」が伸びています。

この筋は星そのものの形ではなく、望遠鏡の光学的な構造によって生まれるものです。

また画像の右上では、ちりの奥に隠れた成長途中の原始星が、周りのガスやちりに向けてジェットを噴き出しています。

こうして生まれる明るく目を引くジェットや流れは、「ハービッグ・ハロー天体」と呼ばれます。

この巨大なジェットは、宇宙空間に数兆マイルも伸びることがあります。

それほど巨大な構造でさえ、この最大級の画像の中ではほんの小さな一部分にすぎないのです。

なおIC 348は、NASAのチャンドラ観測衛星でも最近撮影されており、星のゆりかごがX線の光で紫色に輝く姿がとらえられています。

ちりに覆われた暗い雲は、星になりきれなかった小さな天体たちが身を潜める、宇宙の物陰でもあるのでしょう。

私たちが「星」と呼んできたものの境目は、思っていたよりずっとあいまいなのかもしれません。

失敗した星と呼ばれてはいるものの、これだけ天文学者の目を集めているのですから、宇宙の人気者としてはむしろ大成功と言えそうです。

参考文献

James Webb telescope shares one of its biggest images ever, with record-breaking stars hiding in the dust (Live Science)
https://www.livescience.com/space/astronomy/james-webb-telescope-shares-one-of-its-biggest-images-ever-with-record-breaking-stars-hiding-in-the-dust-space-photo-of-the-week

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ