1. トップ
  2. エピソード
  3. 「臭うって言ってるんだ。もっとちゃんとやれ」ゴミ置き場を自主的に掃っていた僕。だが、文句を言う男性の誤解

「臭うって言ってるんだ。もっとちゃんとやれ」ゴミ置き場を自主的に掃っていた僕。だが、文句を言う男性の誤解

  • 2026.9.30

毎朝掃いていただけなのに

僕の家のはす向かいには、町内のゴミ置き場がある。

町内会の役員さんが半月に1度、水を流して掃除してくれているが、カラスにつつかれた袋や飛んできた紙くずで、すぐに汚れてしまう。

定年してから、僕は朝に家の周りを掃くようになった。

そのついでにゴミ置き場まで足をのばし、ほうきとちりとりで毎日掃いている。

誰かに頼まれたわけではない。家のすぐ近くなので、散らかっているのを見ると気になっただけだった。

ある朝、掃除を終えて家でお茶をいれたところ、玄関のチャイムが鳴った。

戸を開けると、少し先の角に住む70代くらいの男性が立っていた。

「もっとちゃんと掃除しないと、臭うだろうが」

突然の言葉に、僕は一瞬何を言われているのか分からなかった。

「えっ、あそこは…」

「臭うって言ってるんだ。もっとちゃんとやれ」

説明しようとしたものの、男性はそれ以上聞かず、そのまま帰ってしまった。

どうやら僕がゴミ置き場の掃除当番だと思っているらしい。それからも道で顔を合わせると、「今日は掃いたのか」と聞かれることがあった。

好意で始めたことなのに、いつの間にか義務のように思われている。それが少し重く感じるようになっていた。

役員さんが伝えてくれたこと

半月に1度の掃除の日、ゴミ置き場で町内会の役員さんに会った。

60代くらいの女性で、長く町内会の世話をしている人だ。

迷った末、僕は男性から言われたことを話した。

「この前、『もっとちゃんと掃除しないと臭う』って言われまして」

役員さんは驚いた顔をした。

「えっ、そんなことを?毎日掃いてくださっているのに」

「僕が当番だと思っているみたいなんです。説明しようとしたんですけど、聞いてもらえなくて」

「そうだったんですね。では、私から話しておきます」

その日の夕方、役員さんは男性の家を訪ねてくれた。

あとで、近くにいた隣の奥さんから、そのときの様子を聞いた。

役員さんは男性に、ゴミ置き場の定期的な掃除は町内会の役員が行っていること、僕は当番ではなく、自分から毎朝掃いていることを説明してくれたそうだ。

そして、臭いや汚れが気になる場合は僕ではなく、町内会の役員に伝えてほしいと話してくれたという。

男性はしばらく黙ったあと、

「……そうだったのか」

と答えたそうだ。

隣の奥さんも、その話を教えてくれたあと、僕に言った。

「毎朝掃いていたの、あなただったのね。いつもきれいだと思ってたのよ」

数日後、男性が持っていたもの

それから数日後の朝、いつものようにほうきを持って外へ出ると、男性がゴミ置き場の近くにいた。

その手には、新しいほうきがあった。

僕に気づくと、男性は少し気まずそうに近づいてきた。

「この前は悪かった。当番だとばかり思ってた」

「いえ。分かっていただけたなら大丈夫です」

男性は小さく頭を下げた。そして僕の隣に立つと、ネットの下に吹き寄せられていた落ち葉を掃き始めた。

少ししてから、男性がぽつりと言った。

「これからは、こっちの端くらい俺がやるよ」

僕は「ありがとうございます」とだけ返し、そのまま一緒にほうきを動かした。

誰かに言われて続けていた掃除ではない。それでも、当たり前のように求められるのと、誰かが分かってくれるのとでは、気持ちはずいぶん違うものだと感じた出来事だった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ