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犬が飼い主の幸福感を高める「意外な道すじ」とは

  • 2026.9.29
犬が飼い主の幸福感を高める「意外な道すじ」とは
犬が飼い主の幸福感を高める「意外な道すじ」とは / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

夕方に犬の散歩をしていると、同じように犬を連れた近所の人と、いつの間にか立ち話が始まることがあります。

犬と暮らしている人の中には、「この子がいるから毎日が楽しい」と感じている人も多いでしょう。

では、犬を飼うことは、それだけで私たちを幸せにしてくれるのでしょうか。

麻布大学と群馬大学の研究グループは、184人の日々の暮らしを記録し、犬との暮らしと幸福感の関係を調べました。

そこから見えてきたのは、犬が飼い主の幸せに関わる、少し意外な道すじでした。

この話題の詳細は2026年9月28日に『大学ジャーナルオンライン』にて公開されました。

目次

  • 184人の「2週間の暮らし」を記録して調べたこと
  • 犬は飼い主を「直接」幸せにしていたのか?

184人の「2週間の暮らし」を記録して調べたこと

184人の「2週間の暮らし」を記録して調べたこと
184人の「2週間の暮らし」を記録して調べたこと / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

犬や猫のように人と暮らしをともにする動物は、「伴侶動物」とも呼ばれます。

伴侶動物との暮らしが私たちの心や体とどう関わっているのかは、ペットを飼う人なら誰もが気になるところです。

今回の研究では、184人の参加者について、2週間の日常生活の中での人や動物との関わりを記録しました。

記録したのは、家族との関わり、友人との関わり、地域の住民との関わり、そして犬や猫との関わりです。

さらに研究グループは、参加者の心の状態も測りました。

測ったのは、ウェルビーイング(幸福感)、自尊心(自分を大切に思う気持ち)、一般的信頼感(ほかの人を信頼する気持ち)などの指標です。

調べたのは心だけではありません。

尿にふくまれるコルチゾール(体がストレスに反応する働きに関わる物質)の濃さや、腸内細菌叢(腸の中にすむ細菌たちの集まり)も分析されました。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(日本人の腸内細菌は世界の人とどう違うのか?調査した結果)

つまりこの研究は、犬や猫との暮らし、人とのつながり、心の状態、体の中の状態を、まとめて見比べようとしたのです。

「犬を飼えば幸せになる」という単純な図式を思い描くなら、犬を飼っている人ほど幸福感が高いという結果を予想する人も多いでしょう。

ところが、データが示したのは、それほど単純な話ではありませんでした。

犬は飼い主を「直接」幸せにしていたのか?

犬は飼い主を「直接」幸せにしていたのか?
犬は飼い主を「直接」幸せにしていたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

結論から言うと、犬や猫を飼っていること自体に、幸福感を直接高める効果は認められませんでした。

少なくとも今回の調査では、犬を飼っていることが幸福感を直接押し上げる形は確認されなかったのです。

その代わりに浮かび上がったのが、「人との関わり」でした。

研究グループによると、犬の飼育は、家族との関わりや、地域の住民や友人との交流を増やしていました。

女性に限って見ると、家族とのふれあいが近所の人や友人との付き合いにまで広がっていくことが、自己肯定感や幸福感の向上と結びついていました。

研究グループは、犬を飼うことで家族とのふれあいが近所や友人との付き合いにまで広がり、それが幸福感を高めていると考えています。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(日々の幸福感を高める「3つの徳」が明らかに)

一方で、猫の飼育と、家族や地域との関わりとのあいだには、明確な関連は見られませんでした。

さらに、体の中の状態にも、人とのつながりとの関連が見つかりました。

親しい人との会話が多い人ほど、尿の中のコルチゾールの濃さが低かったのです。

また、犬の飼育や人との交流は、腸内細菌叢の構成(どんな細菌がどれくらいいるか)とも関連していました。

ただしこれらは、二つのことが一緒に見られたという「関連」であり、どちらが原因なのかまでは、ここからは分かりません。

研究グループは、伴侶動物、とりわけ犬を飼うことは、幸福感に直接はたらきかけるというより、人とのつながりを経由して間接的に役立っていると結論づけています。

そして、犬の飼育が、人とのつながりという社会的な道すじと、体の中の働きという生物学的な道すじを通じて、人の健康に役立っている可能性を示したとしています。

犬との暮らしが人の健康や幸福感にどんな効果をもたらすのか、今後さらに解明が進むことが期待されます。

犬がくれる幸せは、犬そのものの中だけにあるのではなく、犬が結んでくれた人との縁の中にも宿っているのかもしれません。

何気なく交わしている家族との会話や、散歩中のあいさつこそが、犬からの贈り物の本体なのかもしれません。

散歩の途中で犬がなかなか帰ろうとしないのは、飼い主にもう一人くらい話し相手を見つけてほしいという、犬なりの気づかいなのかもしれません。

参考文献

イヌは家族のつながりを地域へ広げウェルビーイングを高める 麻布大学と群馬大学が184名を追跡調査 (大学ジャーナルオンライン)
https://univ-journal.jp/1001929/

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。 好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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