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学費は?生活は?英首相や王子を輩出するイートン校の「リアルな日常」を独占公開

  • 2026.9.28
NEIL GAVIN

例年通り、イートン校最大の学校行事「The Fourth of June(6月4日)」は午前8時35分ちょうどに始まり、燕尾服とピンストライプのズボンを身に着けた数百人の少年たちが、1440年代に建てられたアーチ型の礼拝堂に列をなして入場しました。そして、『国王陛下万歳』が演奏されると、校長は参加者に対し、今日は「若者の精神と才能を称える日」だと念押ししました。

華やかな式典で彩られた6月4日は、18世紀に生徒たちがジョージ3世の誕生日を祝ったことに由来します。もっとも、この行事が、その名の通り6月4日に行われることはめったにありません。今年は、サマー・ハーフの終わりに近い6月13日に行われました。イートン校では、ハーフとは学期のことで、1年には3学期あり、サマー・ハーフ、ミカエルマス・ハーフ、レント・ハーフの3つに分かれます(元々、2学期制だったため)。また、ディヴは授業、ブロックは学年を指し、13歳のFブロックから始まり、E、D、C、Bへと進みますが、なぜかAブロックはありません。

6月4日には、伝統的な行事の一つとして、ビーグル犬を使った猟犬競技も行われる。 NEIL GAVIN

一部の人々にしか通じない用語や慣習は、よそ者をはねつけるために考案されたものなのかもしれません。英国王室のエリート育成機関であるイートン校は、何世紀にもわたって首相や王子を輩出してきました(作家のオズバート・シットウェルは、イートン校を「紳士をつくる工場」と呼びました)。そして今、13歳のジョージ王子がイートン校に入学しましたが、誰もが将来の国王と暮らしたがっているわけではないようです。「王子と同じ家には住みたくないでしょう!」と、ウィリアム皇太子と同世代のある人物は冗談交じりに言いました。「警察官が住んでいると、こっそり家を抜け出すのが難しくなりますからね」。

この神聖な学舎を歩くことは、必ずや若者に何らかの影響を与えることでしょう。「数えきれないほどの男子生徒が首相になった学校に通えば、首相になることは達成可能な目標だと感じられるものです」と、あるイートン校卒業生は私に語りました。しかも、その長い歴史にもかかわらず、この学校は驚くほど活気に満ち、先進的な考えを持っているようです。それは、イートン校の学長であるニコラス・コールリッジ卿と学校当局が、1,450エーカーもの広大なキャンパスへの異例の立ち入りを許可してくれた時、写真家のニール・ギャヴィンと私が実感したことでした。

イートン校の第43代学長、ニコラス・コールリッジ卿。妻ジョージアとともに暮らす学長公邸にて。 NEIL GAVIN

1970年代にイートン校に通い、その後3人の息子を同校に送り込んだコールリッジ卿は、2024年に同校の第43代学長に就任し、チャールズ国王の署名を得て再びイートン校に戻ってきました。コールリッジ卿は、「これが私にとって3度目のイートンでの時間です」と、妻のジョージアと暮らす荘厳な学長公邸で、紅茶を飲みながら語りました。「不思議なことに、イートン校は全く変わっていないと同時に、全く別物へと変貌を遂げているのです」。

確かに、イートン校に通う生徒は以前よりも国際色豊かで多様化していますが、依然として全員男子。約1,350人の生徒のうち、約75人がアメリカ人で、アジア、アフリカ、中東、そしてヨーロッパ大陸からも多くの生徒が来ています。変化は2015年に加速しましたが、それは、当時39歳の歴史教師だったサイモン・ヘンダーソン氏が、同校の史上最年少校長に就任したことに端を発しています。「トレンディ・ヘンディ」と一部で呼ばれたヘンダーソン氏は、学問的な厳しさと感情的知性やメンタルヘルスとのバランスを大切にしたようです。

6月4日の記念行事のワンシーン。今年は実際には6月13日に行われた。 Neil Gavin
イートン校で毎年行われるこの式典は、18世紀にジョージ3世の誕生日を祝ったことに由来する。 Neil Gavin

批評家たちは、同校がフェミニズム、ブラック・ライブズ・マター、脱植民地化、トランスジェンダーの権利、その他の問題に取り組んでいることから、彼がウォーク(覚醒)革命を扇動していると非難しました。これに対し、ヘンダーソン氏は、「もし『覚醒』という言葉が、私が考える親切、理解、尊敬、寛容、人をきちんと扱うこと、共感しようとすること、他人の視点から物事を理解しようとすることだとすれば、その通りです」と2023年のインタビューで語っています。ヘンダーソン氏はその年の5月に、次年度末に辞任する予定を発表し、50歳のイートン校卒業生であるアラステア・チャーンサイド氏が後任に指名されました。

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参考までに、私はイートン校と長年の関係を持つ家系の卒業生数名に話を聞きました。「亡くなった父が在学していた頃は、他の多くの学校と同様、かなり野蛮な雰囲気でした」と、高級ライフスタイルグループQuintessentiallyの共同創設者であり、カミラ王妃の甥でもあるベン・エリオット卿(1993年卒)は語ります。現在、息子がイートン校に在籍しているエリオット卿によると、「今ははるかに穏やかで、生徒同士もずっと気楽に接しています」とのこと。

ポーターズ・ロッジは、学校最古の区画へと続く歴史的な門。 Neil Gavin
イートン校ではクリケットは非常に重要なスポーツであり、特に宿敵ハロウ校との試合は格別なもの。 Neil Gavin

また、「少しばかり『ウォーク(覚醒・意識改革)』が必要だったのですが、振り子がとんでもなく遠くまで振れてしまいました。今はより分別のある場所に戻ってきています。現在は、以前よりもずっと思いやりのある場所になっていると思います」と語ったのは、ベンチャーキャピタリストであり、第22代セイ・アンド・シール男爵(1979年卒)のマーティン・フィーンズ氏。氏の真ん中の息子も同校の卒業生です。

しかし、年配のイギリス人と話していると、懐かしそうに「私のファグ(上級生の雑用をする下級生)」や「私のファグマスター」と語るのを耳にするのは珍しくありません。1980年、イートン校は、年下の生徒が年上の生徒の靴磨き、ベッドメイキング、使い走りなどの雑用をするという、古くからのファグ制度を廃止しました。「基本的に、奴隷でした」と回想するのは、スレッドミア第7代準男爵の息子で写真家・作家のクリストファー・サイモン・サイクス氏(65年卒)です。もっとも、サイクス氏はちっとも恨みを抱いているわけではありません。「ただやるだけでした。それが当然だったし、文句を言うこともありませんでした。ただし、意地悪なファグマスターの場合は、ひどい目に遭う可能性もありました。私の記憶では、私のファグマスターはとても親切でしたが」。

今年の独立記念日に撮影された、イートン校の広報・ステークホルダー連携・資金調達統括責任者のジャスティン・ノーラン氏。 Neil Gavin

現在の年間授業料が約8万7000ドル(約1,380万円)であることを考えると、そもそもイートン校が貧困層のために設立されたというのは意外に思われるかもしれません。1440年、ヘンリー6世は70人の「貧しい学生(poor scholars)」を教育し、住居と食事を提供する目的でこの学校を設立しました。裕福な貴族の息子たちは授業料を払いながら彼らとともに学ぶのです。イートンとウィンザーの町には彼らのために建てられた寄宿舎があり、寄宿舎に住む若い貴族たちは「オッピダン」(ラテン語で町を意味するoppidumに由来)として知られるようになりました。そして、18世紀には彼らの数は貧しい学生たちをはるかに上回るようになったのです。

学長公邸の廊下に飾られた、ウィリアム皇太子とハリー王子の肖像画。 Neil Gavin

この二重制度の名残は今もあります。厳格な特別試験に合格した70名の「王の学生(King’s Scholars)」は知的エリート集団であり、彼らはキャンパスの中心にある旧校舎に住み、ガウンを着用。名前の後に「KS」のイニシャルを付けます。一方、オッピダン(一般学生)の入学選考もはるかに厳しくなりました。「私が在籍していた頃の少年たちの多くは、今では入学できないでしょう」とフィーンズ氏。彼らの多くは、1990年代にBBCのコメディ番組で風刺された、世間知らずの上流階級の少年「ティム・ナイス・バット・ディム」に似ていると言います。「彼らは父親がそこに通っていたから入学できたし、入学できるだけの資金もまだありました。今ではそんなことは全くない。本当に才能があって頭がいいから入学できるんです」。

この日の最後のイベントは、テムズ川を下るボート漕ぎ。乗組員は立ち上がり、オールを掲げ、帽子を軽く上げながら、「ウィンザーに敬意を表します!」「国王に敬意を表します!」「イートンに敬意を表します!」と叫ぶ。 Neil Gavin

入学許可が下りると、次はどの寮に所属するかを決める選考プロセスが始まります。生徒たちは24の寮に分かれ、各寮では約55人の男子生徒が生活。通常、各ブロックから11人ずつです。各寮には寮長(寮監の役職も兼任)と、生徒たちの生活全般を支える寮母がいます。在学中は全員同じ寮に所属しますが、イートンの卒業生なら誰もが、学校生活では寮生活が何よりも大きかったと語るでしょう。

つまり、どの寮に入るかは重大なポイントなのですが、誰がそれを決めるのでしょうか?「まあ、こちらが面接するわけですが、彼らもこちらを面接しているんです」と、ある現役の保護者は言います。別の保護者によると、学校は通常、3つの寮を提案するのだとか。「それから寮長に会います。こちらが寮長を評価し、寮長もこちらを評価します。選考過程の最後に、こちらの選択が順位付けされます。寮長は、互いにうまくやっていける、そして他の学年の生徒ともうまくやっていける10人の男子生徒のグループを編成しようとします。」寮長は保護者と気が合うかどうかも重視するそう。「面接でひどい態度を取られたら、寮長は彼らを寮に入れたくないと思うでしょう」。

イートン校の校長によれば、6月4日は「若者の精神と才能を称えるための日」。 Neil Gavin
イートン校の生徒には、ボート、ヨット、水泳をする「ウェットボブ」か、クリケット、ラグビー、ポロをする「ドライボブ」のどちらかに分かれる傾向があるそう。 Neil Gavin

ジョージ王子がどの寮に配属されるにせよ、セキュリティ対策は講じられるでしょう(おそらく、叔父のハリー王子が著書『スペア』で書いたものと同様のものです)。最近卒業した学生によると、ジョージはこの夏に寮で行われたオリエンテーションに出席したそうで、「彼は本当に魅力的だった」というのが、周囲に広まっている評判です。

しかし、この魅力的な王子も他の生徒と同じように扱われるでしょう、と先の卒業生はつけ加えました。「学校側は、肩書きなどによって特別な扱いをすることは決してありません。学校側にとっては、彼は最高の教育を授けるべき1人の少年です。彼はあそこで素晴らしい時間を過ごすことになると思います」。

イートン校のすべての卒業生と同様、ジョージ王子も二者択一を迫られることになるでしょう。「ウェットボブかドライボブかのどちらかです」と語るのは、サザビーズ英国・アイルランド名誉会長のハリー・プリムローズ氏(第8代ローズベリー伯爵、1986年卒)。ウェットボブはボートを漕ぎ、ヨットに乗り、泳ぎ、ドライボブはクリケット、ラグビー、ポロをします。しかし、別の卒業生によると、どちらにも属さない「スラックボブ」も少数ながら存在するようです。

6月4日のイベントには、クリケット、フェンシング、柔道、水球、テニス、美術展、コンサート、演劇公演などが含まれる。 Neil Gavin

社交の機会についても、ジョージ王子には多くの選択肢があるでしょう。「奇妙なサークルがたくさんあって、クラブの中のクラブの中のクラブ、みたいなものなんです」と、クリスティーズUKの会長であるオーランド・ロック氏(86年卒)は語ります。その頂点にあるのがポップ(最も人望があり、優秀な学生の自治組織)で、ジョージ王子もいずれは父親のように入会するかもしれません。(ちなみに、ハリー王子は入会できなかったとのこと。)ポップのメンバーであるポッパーズは、カラフルなベストを着る権利などの特権を与えられ、キャンパスで一番の人気者です。その名前自体は、部外者がよく考えるように、ポピュラーの略ではなく、1800年代初頭にポップのメンバーが集まっていた場所、popina(ラテン語で料理店の意)に由来しています。

ある卒業生は、「最近は学校がずっと穏やかになった。生徒同士も以前よりずっと気楽に接することができるようになった」と語る。 Neil Gavin

イートン校の教育の秘訣は何でしょうか?「イートン校の生徒は、他の多くのイギリスの寄宿学校の生徒よりも自由度が高い。ここは相部屋の寮ではありません。生徒は入学当初から自分の部屋を持っています」とコールリッジ卿は言います。「イートン校は大学によく似ています。13歳で入学すると、大人として扱われる。自信は教えられるものではありませんが、ここで得られる文化資本、つまり多くのものに触れることから生まれるのかもしれません。」イートン校には、ほぼ毎晩、首相、大統領、ロックスターなど、世界中の著名人が講演や食事のために訪れ、その招待状のほとんどは生徒たちによって送られます。(今秋にはアナ・ウィンターも招待されているそうです。)

イートンにしかないもののひとつ、イートン校で考案されたハンドボールの一種であるファイブズ。 Neil Gavin

サイクス氏は母校の教育方針について、率直にこう説明しました。「イートン校は、自立心と積極性を養います。何事にもひるまず、力強く人生を突き進み、決して諦めないことを教えるのです」。

6月4日の礼拝後、クリケット、フェンシング、柔道、水球、テニス、ビーグル犬を使った狩猟、そしてイートン校で考案された秘伝のハンドボールゲーム「ファイブズ」など、様々なアクティビティが行われます。また、生徒の作品展、コンサート、そしてトゥキディデス、プルタルコス、シェイクスピアからマーク・トウェイン、アーサー・ミラー、エドワード・オールビーまで、幅広い作家の作品を暗唱するスピーチも行われました。中でも、Bブロックの男子生徒2人は、エドワード・オールビーの『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』のジョージとマーサ役で観客の目を奪いました。

NEIL GAVIN

例年通り、この日の最後はボートの行列で締めくくられました。これは18世紀に始まる伝統に則ったもので、少年たちがボートを漕いでテムズ川を下り、国王に敬礼します。

コツはボートをひっくり返さないこと。しかし、観閲台を通過する際、乗組員一人ひとりが立ち上がり、オールを上げ、花飾りのついた麦わら帽子を3回傾けながら、「ウィンザーに敬礼!」「国王に敬礼!」「イートンに敬礼!」と大声で叫ばなければならないことを考えると、これは容易なことではありません。

Photographs by Neil Gavin
Translation: Mayuko Akimoto

※この記事は抄訳です。

※この記事は、2026年9月28日時点の内容です。

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