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『団地のふたり』第8話:建替え計画が動き出す夜、団地の歴史に胸が熱くなる

  • 2026.9.23

『団地のふたり』第8話:建替え計画が動き出す夜、団地の歴史に胸が熱くなる

一昨年、NHK BSで大きな話題を呼んだ「団地のふたり」が、NHKドラマ10で地上波放送に。小泉今日子と小林聡美が演じる50代の幼なじみと、団地に暮らす人々との何気ない日常を、やさしいまなざしで描いた名作です。もう一度楽しみたい人も、初めて見る人も、その見どころを振り返ります。 ※ネタバレあり

東山さん(ベンガル)はただの“偏屈な老人”ではなかった

夕日野団地もついに築58年目を迎え、これまで噂に出ていた「建替え計画」プロジェクトが現実となって動き出す。大規模な修繕をするのか、それとも建替えるか、住人たちはアンケートでどちらかを選ばなくてはならない。どちらにしても大変な作業だ。建替えとなったら一時的に引っ越しをすることになる。長く住み続けてきた自宅への愛着もあるし、自分がいつまで元気でいられるかもわからない。すぐに決断しろというのは、ずいぶん酷なことだ。

佐久間のおばちゃん(由紀さおり)が「(建替えを)やるんなら、私が死んでからにしてほしい!」と言うが、こう叫びたくなるのは、もっともだと思う。

そして建替えかどうかを考える前に、そもそも私たちは団地の成り立ちについて考えてこなかったのではなかろうか。この回では、ある人を介して、団地の歴史や戦後の宅地開発について教えてもらい、“豊かな暮らし”について改めて考えさせられることとなる。

ある日、ひとり暮らしの東山さん(ベンガル)が部屋の中で倒れてしまった。これを「日頃の行いがよかったせい」と言っていいのか悩むところだが、運よく、すぐに見つけてもらえた。そして救急車で病院に搬送されるときには、なっちゃん(小林聡美)とノエチ(小泉今日子)が同乗することとなる。

これをきっかけにふたりは東山さんと会話をする仲になり、この人の人物像が浮かび上がってくる。こちらも今まで“偏屈な老人”としてしか見ていなかったが、話が進むにつれて情がわいてくる。

実はこの人、建築学の研究者で、大学生の頃から夕日野団地と縁があったのだ。建設計画のプロジェクトから関わっていたため、団地への思い入れには並々ならぬものがあった。理事長(橋爪功)に託した「意見書」では熱い思いを語り、建替えするにしても経済効果を求めるだけのものなら反対する、と固い決意をしたためている。いままでさんざん言ってきたクレームにも、それなりの理由があったことがわかる。

意見書が読まれる場面では実際の宅地開発の映像も映し出され、団地の歴史を知ることができ、建築家たちが豊かな暮らしのために徹底した条件についても教えられる。たとえば団地の建物内に光が十分に差し込むこと、緑あふれる空間や、子どもの遊び場があることは「たまたま」ではなかった。戦後の住宅問題に挑戦した人たちの情熱を知るうちに、こちらまで胸が熱くなってくる。

福田さん(名取裕子)は「女優だった」というエピソード

そしてこの意見書に託した東山さんの願いは、このドラマの制作陣からのメッセージとして受け止めてもいいと思う。実在する団地で撮影を行い、リアルな生活空間を見せる演出で、団地の魅力、ゆとりのある空間の豊かさをじっくり見せていく。そうやって、私たちが忘れてはいけないことは何かを、語りかけてくれていると思う。

そして昨今、団地に魅力を感じている人が若い世代でも少なくないように思う。近頃の「昭和レトロ」ブームは、ぬくもりのある生活様式そのものに惹かれているから、広がっているのだ。熱意のある人たちが斬新なアイデアを出し合ってそれを形にしていけば、団地に子育て世帯がまた増えていくのではないか。そんなことを、ついつい期待してしまう。

さて、東山さんとの交流をきっかけに団地の歴史を知ったノエチとなっちゃんは、ますますここが愛おしくなっていくのだが、その一方で、未練なく去って行く福田さん(名取裕子)のような人もいる。韓国ドラマにどっぷりはまった先に、自分自身もドラマティックに生きることを選んだのだろうか。去り際の様子がちょっと危ういが、それもまた謎につつまれた福田さんらしい、というところか。

最後に彼女が「女優だった」というエピソードが出てくるが、ここでは80年代に放送された実際のドラマのシーンが映し出され、ふたりと一緒に、こちらも「かわいい、きれい、色っぽい」と当時の名取裕子に見入ってしまう。これだけ魅力的な人が去るとなると、親衛隊ならずとも、落ち込む人は続出するだろう。

福田さんみたいに恋のために何もかも捨てるなんて、とても真似できないし、そもそも憧れもしない。ふたりが心から望んでいるのは、まずは平穏無事であることだろう。その上で、のんびりと、ひっそりと自分らしい暮らしをここで続けていくこと。それが“主役”である自分の人生のあり方だ。

でもそのためには、まず団地が存続してもらわないと困る。

果たして住人たちの意見はまとまるのか。ここからどんな展開が待っていようとも、このふたりがバラバラになりませんようにと、こちらはそれを祈るばかりだ。

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