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軽やかに進化する「バーバリー」 甘美なムードに“センチメンタル・バリュー”を宿して

  • 2026.9.22
© Burberry

今年、「バーバリー」は創業170周年、ダニエル・リーはチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任して4年目を迎えた。これまでメゾンの核であるトレンチコートを起点に、さまざまな女性像を描いてきた彼だが、今季は最も軽やかで若々しく、いつになくロマンチック。ロンドンらしい反抗的なアティチュードも備えつつ、今という時代と呼応する共感を呼ぶコレクションとなった。

Launchmetrics.com/spotlight

そんな空気をもたらしたのが、英国を代表するテキスタイルデザイナー、セリア・バートウェルとの協働だ。リーは5月に彼女と会い、「彼女のエネルギーや、人生に対する姿勢にとても刺激を受けた」と振り返る。「ブランド170周年という節目に、何か本当に特別なことをしたかった。ショーで誰かと本格的に協働するのは今回が初めてだし、コラボレーションが難しいことは分かってる。でも、ふさわしい相手は、見つかる時には見つかるもの」

1960〜70年代のロンドンを代表するテキスタイルデザイナー、セリア・バートウェルは、当時夫だったデザイナー、オジー・クラークとの協働で知られ、花や植物、鳥などを描いた色彩豊かなプリントで一時代を築いた。そんな彼女とリーの対話はブランドを代表するチェック柄から始まり、ショー会場内には無機質な白の空間に、彼女が手がけたぬくもりを感じる手書き風のチェック柄チェアがゲストを出迎えた。「チェック柄をもっと人間味のあるモチーフに昇華したかった」というリーは、その意図をこのように説明した。「服に感情を吹き込むため。ラグジュアリーな製品を買う時、私たちは感情的な愛着を持てる何かを求めていると思うんです。必要不可欠だから買うのではなくて、感情に触れる何かを。そこにフォーカスした今季は、服をより人間らしく感じさせたいと思いました」

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そんな彼の思いは、バートウェルとの協働で見事に結実した。彼女の作品に見られる花や鳥、そしてもちろんチェック柄が、プリントだけでなくジャカードや刺しゅうへと姿を変え、これまでになくロマンチックなムードを誘う。シグネチャーのトレンチコートはミニ丈になり、裾をふくらませたバルーンスカートのようなシルエットで、一着のドレスさながらに。あるいは、ノーカラーの首元をドローストリングで絞り、ギャザーを寄せてツイストさせたトレンチブルゾンへ。バートウェルの作品から着想した色彩も重なり、見慣れたはずのトレンチが、どこかみずみずしい表情でランウェイによみがえった。

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プロポーションの遊びを支えたのは、コレクションの大部分に用いた軽量な素材だ。薄いシルクタフタによってトレンチやカーコート、レインウェアは柔らかなボリュームを獲得し、歩くたびに空気をはらんで表情を変える。軽量レザーのトレンチやスカートには、柔らかなレザーを二層重ねてキルティングするマトラッセステッチを施し、シアサッカーのようなわずかな凹凸を生んだ。精緻な技巧を凝らしながら、見た目はあくまで軽やかに。

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一方で、軽い素材や花柄が生むロマンチシズムを、リーは決して完璧な美しさには着地させない。シワを残した生地、ウォッシュされたような表面、波打つラッフル。服にはどこか着古したような、ヴィンテージの風合いを忍ばせた。その“不完全さ”こそ、今季の若々しさを理解する鍵でもある。ストライプのトップにドレスを重ね、足元にはモカシン。デニムのような日常着も差し込み、軽やかなドレスの甘さを崩していく。きれいにまとめるのではなく、少しずらし、少し崩す。「物事が完璧に見えない時が好き。クールで、若々しく感じられるから」とリー。

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終盤に進むにつれ、刺しゅうやスパンコールなどクチュールライクな手仕事が際立っていくが、実用性を核とする「バーバリー」らしさを損なうことはない。ベルトやエポレット、カーゴポケットといったユーティリティのディテールさえ、トロンプルイユやスケッチのようなブリオン刺しゅうへと変換した。アクセサリーでも、“ダービー”バッグには手仕事によるフローラルを、“スローン”バッグには編み込んだレザーチェックを施した。足元には花柄やストライプを織りや刺しゅうで表現したパンプスやサンダル、履き込んだように加工したバイカーブーツを合わせて。服からアクセサリーまで、「バーバリー」らしい実用性を土台に、ほんのりと甘さを溶かし込んだ。

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わずかにゆがんだ線、シワの残る布、長く着込んだような風合い。今季の「バーバリー」を見ながら強く感じたのは、そんな不完全さにこそ宿る“センチメンタル・バリュー”だった。確かに、AIの台頭によって、精緻で均質なものが瞬時につくられるようになった今、逆説的に私たちが求めているのは、人の手の跡やぬくもりなのかもしれない。ラグジュアリーの価値もまた、完璧に作られているかではなく、どれだけ感情を動かし、愛着を育てられるかへと移りつつある。170年受け継がれてきたトレンチが、バートウェルの手描きの線や人の手によるクラフトにあふれた今回のコレクションは、完璧ではないから、いとおしい。そんな人間らしい温度を宿した軽やかでロマンティックなワードローブが、まだ見ぬ春夏の訪れを待ち遠しくさせてくれる。

©Burberry
Hearst Owned
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