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15年経ったのに“再上映”「忘れられない」「傑作だと思う」日本アカデミー賞“10部門”最優秀賞のヒット映画

  • 2026.10.17
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永作博美(C)SANKEI

公開から15年が経った今もなお「忘れられない作品」「傑作だと思う」そんな称賛を浴びる映画それが、2011年公開、永作博美が主演の映画『八日目の蟬』だ。北九州の老舗映画館・小倉昭和館で再上映が行われ、その根強い人気が伺える。また、檀れいと北乃きい主演のドラマ版がNetflixで配信開始となり、映画と合わせて観直すことができる今、映画『八日目の蟬』の魅力について改めて紐解いていきたい。

※以下、映画の内容に触れています。

誘拐犯に育てられた女がたどり着く場所

映画『八日目の蟬』は、直木賞作家・角田光代のベストセラー小説を、成島出監督が映画化したヒューマンサスペンス。第35回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞をはじめ10部門で最優秀賞に輝いた。

妻子ある男を愛し、子を宿しながらも母になることがかなわなかった野々宮希和子(永作博美)。絶望の中で衝動的に不倫相手の赤ん坊・秋山恵理菜を連れ去り、逃避行を続ける。やがて小豆島にたどり着いた二人は、母と娘として暮らすが、誘拐から約4年後、希和子は逮捕される。

実の両親のもとに戻った恵理菜(井上真央)は、育ての母が誘拐犯だったという事実を抱え、心を閉ざしたまま成長する。21歳になったある日、恵理菜は自分の妊娠に気づく。その相手もまた、かつて希和子が愛した男と同じく、家庭を持つ男性だった。

“母”と“娘”の間で揺れる、愛と傷

本作が長く心に残るのは、善悪だけでは割り切れない人間の複雑さを、正面から描いているからだろう。希和子は、他人の子どもを奪った誘拐犯だ。それでも、4年間にわたって恵理菜に注いだ愛情まで、偽物だったと言い切れるだろうか。一方、恵理菜にとっては、実の両親のもとに戻ることが、そのまま心の傷の癒やしにつながるわけではなかった。

永作博美は、逃げながらも懸命に「母」であろうとする希和子の、狂おしいほどの愛を体現し、第35回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した。井上真央もまた、怒りや悲しみ、希和子への慕情が入り交じる恵理菜の複雑な心情を繊細に演じ、同賞最優秀主演女優賞に輝いている。

二人の演技が真に迫るからこそ、観る者は一つの立場だけで物語を受け止められなくなる。母であるとはどういうことか。愛情と、相手を自分のもとにつなぎとめたいという願いは、どこで重なり、すれ違うのか。本作は、母と娘それぞれの痛みを通して、容易には答えの出ない問いを投げかける。

監督と脚本家、その歩みから見つめる『八日目の蟬』

本作を手がけた成島出監督は、助監督や脚本家として経験を重ね、2004年に『油断大敵』で長編商業映画の監督デビューを果たした。『フライ,ダディ,フライ』(2005)、『孤高のメス』(2010)などを経て、『八日目の蟬』では第35回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞。その後も『ソロモンの偽証』前後篇(2015)、『いのちの停車場』(2021年)、『銀河鉄道の父』(2023)、『52ヘルツのクジラたち』(2024)など、多くの文芸作品を映画化してきた。

医療、家族、学校、社会の中での孤立。扱う題材は幅広いが、その作品群から見えてくるのは、傷や葛藤を抱えた人が他者と出会い、再び生きていこうとする姿へのまなざしだ。人物の感情を丁寧に積み重ね、簡単には答えの出ない問題を、人間同士の関わりを通して描いてきた。2026年8月24日に65歳で逝去したが、遺された作品に触れることで、そのまなざしをたどることができる。

脚本を務めた奥寺佐渡子は、1993年に『お引越し』で映画脚本家としてデビュー。『学校の怪談』(1995)で第19回日本アカデミー賞優秀脚本賞を、『八日目の蟬』で第35回同賞最優秀脚本賞を受賞している。

細田守監督の『時をかける少女』(2006年)、『サマーウォーズ』(2009年)、『おおかみこどもの雨と雪』(2012年/細田監督との共同脚本)なども手がけ、実写とアニメーションの両分野で活躍。『国宝』(2025)では、第49回日本アカデミー賞最優秀脚本賞や第47回ヨコハマ映画祭脚本賞などに輝いた。

成島と奥寺は、『八日目の蟬』のほか、『草原の椅子』(2013)や『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』(2020)でもタッグを組んでいる。先日、小倉昭和館で上映された『八日目の蟬』と『グッドバイ』は、趣の大きく異なる2作品。重厚な人間ドラマと軽妙な喜劇を見比べることで、二人の表現の幅にも触れられるだろう。

初めて観る人にも、かつて観た人にも、今だからこそ心に届く感情があるかもしれない。監督と脚本家の歩みにも思いを巡らせながら、『八日目の蟬』が描く愛と傷を、改めて見つめてみてはいかがだろうか。


出典:成島出監督〜2本立て | 小倉昭和館公式サイトより

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