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自転車通勤を隠して『電車定期代』を受給→会社にバレたら…?アディーレ法律事務所の見解は

  • 2026.9.18
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「電車通勤」と申請して定期代相当の通勤手当を受け取りながら、実際には定期券を購入せず、自転車や徒歩など別の方法で通勤する――こうした行為が、会社とのトラブルに発展するケースがあります。

SNSでは「手当としてもらっているお金なのだから、使い道は自由かと思ってた」という声も見られますが、これは立派な「不正受給」であり、発覚すれば手当の返還だけでなく、就業規則によっては懲戒解雇処分の対象にもなり得る重大な問題です。

こうしたケースでは、どこまで責任が問われるのでしょうか。また、通勤方法の変更を届け出ていなかったことに気づいた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。アディーレ法律事務所の島田さくら弁護士に伺いました。

定期代をもらって自転車通勤…「不正受給」になる?詐欺罪が問題となる可能性も

---会社に電車通勤として申請し、定期代相当の通勤手当を受け取りながら、実際には定期券を購入せず、自転車や徒歩などで通勤していた場合、法的にはどのような問題が生じる可能性がありますか?

島田さくら 弁護士(東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所:

「従業員が、『電車通勤をしている』と申告して定期代相当額を受給しながら、実際には、徒歩や自転車で通勤していたり、会社近くに引っ越してきたのに住所変更の届出をせず、通勤距離に応じて支給される高い通勤手当を受給し続けたりした場合、不正受給に該当する可能性があり、民事上および刑事上の問題が生じます。

まず、民事上の責任として、会社の就業規則や賃金規程で、実際の通勤方法や通勤距離に基づいて手当を算出し、支給すると定められている場合、本来受給する権利のない金銭を受領したと評価され、不当に受給した通勤手当の返還を求められることとなります。意図的に虚偽申請をした場合(故意がある場合)だけでなく、通勤方法や住所の変更について会社への届出をうっかり忘れていた場合(過失がある場合)でも、返還を求められることがありますので、注意しましょう。

また、刑事上は、詐欺罪が問題となります。詐欺罪は、人を欺いて金銭などの財産的利益を得た場合に成立する犯罪です。詐欺罪の法定刑は、10年以下の拘禁刑です。通勤実態がないのに、意図的に虚偽申告を行い、会社から通勤手当の支給を受けた場合には、詐欺罪に該当し得ます。

実務上は、通勤手当の不正受給のみを理由として、直ちに刑事事件化することは多くなく、まずは不当に受け取った通勤手当の返還請求や懲戒処分など社内手続による対応が取られることが一般的です。もっとも、不正受給の期間が長く金額も高い場合や、証拠を偽装するなど悪質な場合には、会社が刑事告訴を検討する可能性も否定できません」

会社にバレたら「懲戒解雇」も?処分の重さを左右するポイント

---通勤手当の不正受給が会社に発覚した場合、返還を求められるだけでなく、懲戒処分を受ける可能性もあるのでしょうか?

島田さくら 弁護士(東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所:

「会社が通勤手当の不正受給を把握した場合、まず検討するのは、不正に受給した手当の返還請求です。多くの会社では、就業規則や賃金規程で、通勤方法や住所に変更があった場合の届出義務を定めています。そのため、申告していた交通機関を利用していなかったことなどが判明すれば、過去の支給分について返還を求められることになるでしょう。

懲戒処分については、会社の就業規則の記載に応じて処分内容が決められることになります。懲戒の種類としては、戒告(注意)、減給、出勤停止、降格、諭旨退職、懲戒解雇があります。会社がどの処分を選択するかについては、不正受給が故意によるものか、継続期間はどれくらいか、不正受給額はいくらか、管理職などの立場にあったか、発覚後に誠実な対応をしたかなどの事情が判断要素となります。

なお、懲戒処分については、『客観的合理的理由』と『社会的相当性』が必要とされており、特に、懲戒解雇処分を受けた場合には、後に裁判で解雇の有効性が争われることがあります。

実際の裁判例では、通勤経路を変更したにもかかわらず、会社に届け出ず、4年8か月にわたり、約35万円の通勤手当を過大受給して懲戒解雇処分を受けたケースで、裁判所は、当初から過大請求をしようと不合理な経路を申告して手当を騙し取ろうとするような場合よりも悪質性が低いこと、直ちに返還する準備をしていることなどの事情から、懲戒解雇を無効と判断しました」

「申請と違う」と気づいたら?放置せず、速やかに会社へ申告を

---自分が申請内容と異なる方法で通勤し、通勤手当を受け取っていることに気づいた場合、どのように対応することが望ましいのでしょうか?

島田さくら 弁護士(東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所:

「従業員自身が、通勤手当を不正受給している状態に気づいた場合には、すぐに会社へ申告することが、最も適切な対応となります。不正受給を放置すると、その分だけ受給額が増加し、返還金額も大きくなります。また、発覚した際に、『知りながら放置していた』『途中からは意図的だった』とされると、懲戒処分上も不利に扱われます。

会社に申告する際には、いつから実際の通勤方法が申請内容と異なっていたのか、受け取った通勤手当はいくらかを説明し、返還の意思を示しましょう。自分から申告し、反省の態度を示すことは、会社側が処分の要否や処分内容を検討する際にも重要な事情となります。

もちろん、自分から申告をしたからといって、不当に受給した通勤手当の返還義務がなくなるわけではありません。しかし、懲戒処分をするかどうか、どの重さの処分にするかについては、差が生じる可能性があります。実務上も、自主的に申告して返還に協力し、深く反省しているケースでは、戒告など比較的軽い処分にとどまる場合があります。

一方、会社の調査等により不正受給が発覚して初めて事実を認めた場合や、当初は否認していたものの証拠を示されてやっと認めた場合、処分が重くなる可能性も否定できません。

通勤手当の不正受給状態に気づいた場合には、できる限り速やかに会社へ申告し、事実関係の説明や返還手続に誠実に協力することが大切です」

「定期代が支給されているから自由に使っていい」とは限らない

通勤手当の支給条件は会社の就業規則や賃金規程によって異なります。実際の通勤方法や距離に基づいて支給することが定められている場合、申告内容と実態が異なれば、不当に受給した分の返還を求められる可能性があります。

さらに、意図的な虚偽申告で通勤手当を受け取っていた場合には、懲戒処分だけでなく、詐欺罪が問題となる可能性もあるとのことです。一方、懲戒処分の重さについては、不正受給の期間や金額、故意の有無、発覚後の対応など、さまざまな事情が考慮されます。

通勤方法や住所が変わった場合には、勤務先のルールを確認し、必要な届出を行うことが大切です。すでに申請内容と実態が異なっていることに気づいた場合には、そのままにせず、できる限り速やかに会社へ申告しましょう。


監修者:島田さくら 弁護士(東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所

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島田さくら 弁護士(東京弁護士会所属) アディーレ法律事務所

退職代行、不当解雇、パワハラなどの労働問題全般に精通。在日ASEAN加盟国大使館の領事担当官に対し、民間の法律事務所初となる労働法講演を行った実績を持つ。TVやラジオ、雑誌などメディアの出演歴も長く、幅広い分野への対応力にも定評がある。
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