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電車で服を汚されて相手が立ち去ろうと…「腕をつかんで引き止める」は要注意?弁護士が解説

  • 2026.10.7
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出典元: photoAC(画像はイメージです)

満員電車では、周囲の人との距離が近く、思わぬトラブルが起こることもあります。飲み物をこぼされたり、食べ物や化粧品が服やカバンについてしまったり……。お気に入りの衣類や大切な持ち物を汚されてしまったら、「クリーニング代は請求できる?」「汚れが落ちなかったら弁償してもらえる?」と気になる人もいるでしょう。

SNSでも、電車内で他人の衣類や持ち物を汚してしまったというトラブルや、周囲の人の飲食やメイクによって「自分の服やカバンが汚れないか心配」といった不安の声が見られます。

では、実際に服や持ち物を汚されてしまったら、どう対応すればよいのでしょうか。相手にクリーニング代や弁償を求めることはできるのか、さらに相手がその場から立ち去ろうとした場合、引き止めても問題ないのか。法的な責任や被害に遭った際の対応について、弁護士の寺林智栄さんに詳しく解説していただきました。

服にファンデーションが付着…クリーニング代や弁償を求められる?

---電車内でメイクをしていた人が転倒し、化粧品などによって他の乗客の服やカバンを汚してしまった場合、クリーニング代や弁償を求めることはできるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「電車内でメイクをしていた人が転倒し、化粧品などによって他の乗客の服やカバンを汚してしまった場合、状況によっては、被害を受けた人がクリーニング代や物品の損害について賠償を求めることができます。

法律上、故意または過失によって他人の権利を侵害し、損害を与えた場合には、不法行為として損害賠償責任を負います(民法709条)。 電車は揺れたり急停車したりする可能性がある場所です。そのため、立ったまま、あるいは不安定な状態で化粧品を使用していたなど、周囲の人の持ち物を汚す危険が予測できたのに十分な注意をしていなかった場合には、『過失』が認められる可能性があります。

服についた汚れがクリーニングで落ちるのであれば、基本的には必要かつ相当なクリーニング代が損害となります。一方、汚れが落ちず、カバンなどが使用できなくなった場合には、その物の価値に応じた賠償を求めることも考えられます。ただし、必ず新品の購入価格全額を請求できるわけではなく、使用年数や傷み具合なども考慮されます。

もっとも、予測できないほどの急停車で転倒したなど、本人に落ち度がなかった場合には、賠償責任が認められないこともあります。また、誰が汚したのか、汚れがその事故によって生じたのか、損害額はいくらなのかを確認できない場合には、実際の請求が難しくなることがあります。」

相手が逃げようとしたら「引き止めていい」?腕をつかむのは要注意

---服や持ち物を汚した相手がその場から立ち去ろうとした場合、被害者が引き止めることはできるのでしょうか?

寺林智栄さん:

「衣類や持ち物を汚した相手がその場から立ち去ろうとする場合、被害者が『連絡先を教えてほしい』『駅員室で事情を確認したい』などと求めること自体は問題ありません。後日、クリーニング代などの損害賠償を請求するためにも、相手の氏名や連絡先を確認しておくことは重要です。

ただし、物を汚したというだけで、被害者が当然に相手の身体を拘束できるわけではありません。相手が立ち去ろうとした際に、腕を強くつかむ、押さえつける、長時間にわたって取り囲むなど、相手の行動の自由を実力で奪う行為は、状況によっては暴行罪や逮捕・監禁罪などの問題が生じる可能性があります。

また、『弁償するまで帰さない』などと威圧したり、相手のスマートフォンや荷物を取り上げて立ち去れないようにしたりすることも、脅迫罪や威力業務妨害罪等に該当する恐れがあるため避けるべきでしょう。トラブルが大きくなりそうな場合には、無理に自分で相手を拘束するのではなく、駅員や警察に対応を求めるのが安全です。

なお、犯罪を行った者を現行犯人として私人が逮捕できる制度はありますが、単に不注意で他人の服やカバンを汚したという民事上のトラブルで当然に現行犯逮捕ができるわけではありません。被害者としては、まず相手に連絡先の確認や駅員室への同行を求め、応じない場合には駅員や警察に相談するのが適切です。」

汚れた服はすぐ洗わないほうがいい?被害に遭ったら残しておきたい「証拠」

---実際に電車内で衣類や持ち物を汚されてしまった場合、その場でどのように対応すればよいのでしょうか? また、後から損害賠償を求めるために残しておくべきものを教えてください。

寺林智栄さん:

「電車内で飲み物をかけられるなどして衣類や持ち物を汚された場合、まずは落ち着いて相手に事情を確認し、可能であれば氏名や電話番号などの連絡先を交換しておくことが大切です。相手が責任を認めている場合でも、後日連絡が取れなくなる可能性があるため、その場で確認しておいた方がよいでしょう。

また、汚れた衣類やカバンなどは、拭いたり洗ったりする前にスマートフォンで写真を撮り、汚れの場所や程度が分かるよう記録しておくことをおすすめします。発生した日時、乗っていた電車や車両、どのような経緯で汚されたのかについてもメモしておくと、後日の話し合いに役立ちます。

当事者間で話がまとまらない場合や、相手が立ち去ろうとしている場合には、無理に相手を拘束するのではなく、駅員に事情を説明して対応を求めるのが適切です。必要に応じて警察への相談も検討します。

その後、クリーニングを依頼した場合には領収書を保管し、汚れが落ちなかった場合には、クリーニング店からその旨を説明してもらえる資料があると損害を示しやすくなります。高価な衣類やバッグなどについては、購入時期や購入価格が分かるレシートや領収書、保証書、購入履歴などがあると良いでしょう。ない場合には、ネット上で価格を調べるなどして記録しておくことが望ましいです。

損害賠償を求める際には、『何が起きたのか』と『実際にどの程度の損害が生じたのか』を客観的な資料で示せるようにしておくことが重要です。」

服を汚されたら、まずは相手の連絡先と被害状況を記録

電車内で他人に衣類や持ち物を汚された場合、相手に過失が認められれば、クリーニング代などの損害について賠償を求められる可能性があります。ただし、汚れが落ちなかったとしても、必ず新品の購入価格全額を請求できるわけではなく、使用年数や傷み具合なども考慮されるとのことです。

また、相手が立ち去ろうとしても、腕を強くつかむなどして無理に拘束することは避けたほうがよいでしょう。まずは連絡先や被害状況を記録し、当事者同士での対応が難しい場合には駅員や警察に相談することが大切です。

被害に遭った直後は、汚れた衣類などをすぐに洗うのではなく、まず写真に残しておくこともポイント。クリーニングの領収書や購入履歴なども保管し、「何が起きたのか」「どの程度の損害が生じたのか」を示せるようにしておきましょう。


監修者:寺林智栄

2007年弁護士登録。札幌弁護士会。てらばやし法律事務所。2013年頃よりネット上で法律記事の執筆・監修を開始。Yahoo!トピックスで複数回1位獲得。読む方にとってわかりやすい解説を心がけています。

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