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35年前、名作アニメを包んだ“夜明けの疾走感” 原宿から飛び出したカラフルで熱いロックの衝動

  • 2026.4.17
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

1991年の春。新宿の摩天楼を見上げる夜、テレビの画面越しに流れてきたのは、それまでのハードボイルドな緊張感を優しく、そして力強く解き放つような歌声だった。かつて「都会の孤独」をスタイリッシュに描き出した名作のシリーズ第4作目となるその物語は、原点回帰とも言える熱量をはらんでいた。そのエンディングを飾った一曲は、重厚なドラムのビートに乗せて、不器用な優しさと弾けるような多幸感を夜の街へと振りまいていった。

AURA『SMILE&SMILE』(作詞:REDS/作曲:龍巻のPIE)ーー1991年4月10日発売

それは、音楽シーンが劇的な変化を遂げようとしていた時代の狭間に現れた、至極のポップ・アンセムであった。派手な色彩を纏った若者たちが放つ音のつぶては、冷めた都会の空気を瞬時に熱く、カラフルに塗り替えていく力を持っていたのである。

極彩色のロック精神

当時の音楽ファンにとって、AURAの存在はまさに「視覚のテロリズム」であったと言える。赤、青、緑、黄色と、メンバーそれぞれの髪色に象徴される衝撃的なビジュアルは、原宿の歩行者天国から這い上がってきたという出自を饒舌に物語っていた。まだ「ヴィジュアル系」という言葉が完全に定着する直前の、どこか無邪気で、かつ圧倒的な個性の解放。

ギターの龍巻のPIEを中心としたその佇まいは、単なるファッションとしての派手さを超え、自らの存在を肯定するための戦闘服のようにも映った。彼らが奏でる音は、そのルックスに負けないほどに分厚く、華やかで、どこまでもポジティブなエネルギーに満ち溢れていた。

特にこの楽曲は、5枚目のシングルとして世に放たれた際、彼らの持つ「陽」の魅力が極限まで高められた傑作として迎えられた。イントロから全開で鳴り響くサウンドの洪水は、聴き手の沈んだ心を引きずり出し、強制的に笑顔へと向かわせるような不思議な魔力を秘めていた。

新しい夜を肯定する言葉たち

アニメ『シティーハンター』シリーズの音楽と言えば、多くの人々が真っ先に思い浮かべるのは初代のTM NETWORK『Get Wild』だろう。しかし、シリーズが重なり、時代が1990年代へと突入した『シティーハンター'91』において、この楽曲が果たした役割は極めて大きい。

伝説的な過去作の影を追いかけるのではなく、全く新しい「1991年」という時代の空気をパッケージングすること。主人公が抱える孤独な影を否定するのではなく、その隣にそっと寄り添いながら、明日への活力を注入するような明るさ。

作詞を手がけたREDSによる言葉は、極めてストレートで瑞々しい。複雑な比喩や深読みを誘う難解なフレーズを避け、根源的な祈りを詰め込んでいる。それは、情報が溢れ始め、誰もが少しずつ理屈っぽくなり始めていた当時の社会において、ある種の清涼剤のような役割を果たした。

作曲を担当した龍巻のPIEによるメロディラインも秀逸だ。アップテンポで駆け抜ける疾走感の中に、歌謡曲的な親しみやすさとロックの衝動が完璧なバランスで共存している。サビで大きく開ける視界。それはまるで、深夜の高速道路を走り抜け、夜明けの光が見え始めた瞬間の高揚感に似ている。

色褪せない生命の賛歌

何より「自分らしくあること」を恐れなかった彼らの姿。その美学が凝縮された一曲は、単なるアニメのテーマソングという枠を超え、あの日々を懸命に生きた人々の心の中で、今もなお虹色の光を放ち続けている。

どんなに夜が深くても、このメロディを口ずさめば、私たちは何度でも「あの頃」の純粋な心を取り戻すことができる。それは、時代がどれほど移り変わろうとも、決して色褪せることのない魂の記憶なのである。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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