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22年前、若き5人が放った“終わりの始まり”の旋律 “異例の自作ラップ”が響いた“等身大のエール”

  • 2026.2.27
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※Google Geminiにて作成(イメージ)

2004年の初め。まだ折り畳み式の携帯電話が主流で、放課後のチャイムが響くたびに「これから何をするか」を必死に考えていた時代。冬の冷たい空気が春の予感に混じり始める2月、あの5人が放った一曲が、当時の若者たちの心に深く、静かに突き刺さった。

嵐『PIKA★★NCHI DOUBLE』(作詞:SPIN、櫻井翔・作曲:森元康介)ーー2004年2月18日発売

派手な演出や装飾を取り払い、ただ真っすぐに「今」という時間を生きる少年の姿を映し出したようなこの曲は、リリースから20年以上が経過した今でも、聴く者の心をあの日の放課後へと連れ戻す力を持っている。

情熱と虚無が同居した、あの頃の空気感

2004年という年は、社会全体が大きな変化の渦中にあった。インターネットが少しずつ日常に浸透し始め、人々の繋がり方が変わりつつあった頃。けれど、当時の若者たちが抱えていた葛藤や不安、そして根拠のない万能感は、今よりもずっと生々しく、手触りのあるものだったように思う。

この『PIKA★★NCHI DOUBLE』という楽曲は、彼ら5人が主演した映画『ピカ★★ンチ LIFE IS HARD だから HAPPY』の主題歌として制作された。原案はV6の井ノ原快彦で、堤幸彦がメガホンをとり、前作『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』(2002年)の続編として、綺麗事だけでは済まされない若者たちのリアルな日常を描き出し、多くの共感を呼んだ。

「最高に退屈な日々」を共に過ごした仲間たちが、それぞれの道を選び、離れ離れになっていく切なさ。それでもなお、前を向いて歩き出さなければならないという「終わりの始まり」を、この曲は見事に捉えている。アイドルというキラキラとした枠組みを借りながらも、その奥底に流れているのは、誰もが経験する「大人への階段」を上る瞬間の痛みそのものだった。

言葉を詰め込んだ「サクラップ」が描く、リアルな心の機微

この曲を語る上で欠かせないのが、メンバーの櫻井翔が手がけたラップパート、いわゆる「サクラップ」の存在だ。

当時のアイドルシーンにおいて、自らがリリックを書き、本格的なラップを披露することはまだ珍しい挑戦だった。しかし、彼の綴る言葉は、単なるリズムの心地よさを超え、楽曲に圧倒的な「真実味」を与えていた。

夢を追うことの苦しさ、そしてそれ以上に、夢を諦めて現実を生きていくことの重み。そうした複雑な感情が、疾走感あふれるメロディの上で激しく、そして丁寧に編み込まれている。

彼の言葉は、上から目線の応援歌ではない。同じ目線で、同じ痛みを感じながら、そっと横に並んで歩いてくれるような、不思議な温度感を持っていた。だからこそ、そのメッセージは時を超えて、私たちの心に深く、鋭く突き刺さるのだ。

王道だけど切ない、緻密に計算された「静かな熱狂」

サウンド面に目を向けると、この曲の構成がいかに精緻であるかに驚かされる。

イントロから響き渡る爽快なギターサウンドと、楽曲全体を支えるストリングスの重なり。それはまるで、止まることのできない時間の流れそのものを音にしたかのようだ。

楽曲の展開は王道のポップスでありながら、サビに向かって高まっていくエモーショナルなコード進行は、聴く者の感情をなだらかに、けれど確実に揺さぶってくる。

アレンジャーの石塚知生による巧みな構成は、メロディの美しさを最大限に引き出し、聴き終わった後に心地よい余韻を残してくれる。

余計な音を削ぎ落とし、5人の歌声が持つ個性を最大限に生かす。そのストレートなアプローチこそが、この曲を「色褪せない名曲」たらしめている大きな要因だろう。

特にサビのユニゾンで聴かせる、情熱的なボーカルは、若さゆえの危うさと力強さが奇跡的なバランスで同居しており、聴くたびに胸の奥が熱くなるのを感じる。

永遠に終わらない、僕たちの「今」のために

『PIKA★★NCHI DOUBLE』がリリースされてから、世界は驚くほどのスピードで形を変えていった。通信環境は劇的に進化し、かつてのような「離れ離れになることの絶対的な孤独」は、少しだけ薄れてしまったのかもしれない。

けれど、この曲が描き出した「不器用な僕たちの背中」は、今も変わらずそこにあり続けている。

たとえ時代が変わっても、青春が終わっても、あの日交わした約束や、共に見た夕暮れの景色は、私たちの魂の中に静かに息づいている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。