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「100万円近い差が生じる」お金のプロが警告。『年金の受給額』が大きく変わる…見落としがちな「意外な制度」とは?

  • 2026.2.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

 

年金受給が始まる際、条件を満たせば「家族手当」のように加算される「加給年金」。しかし、この制度には大きな落とし穴があります。それは、条件を満たしていても自動的には振り込まれない「申請主義」であるという点です。さらに、毎年届く「ねんきん定期便」にも金額が記載されないため、自分が対象であることに気づかず、受給権を放置してしまうケースが後を絶ちません。 本記事では、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の中川佳人さんに、加給年金の届け出漏れが起きる背景と、時効によって数十万円単位で損をしてしまうリスクについて詳しく伺いました。複雑な支給条件や、今すぐ取るべき具体的なアクションを整理し、受け取れるはずの年金を確実に守るための知恵をお届けします。

なぜ「加給年金」は見落とされるのか?定期便には載らない制度の罠

---加給年金の届け出漏れが起きてしまう背景には、年金制度のどのような複雑さや情報不足が関係しているのでしょうか?

中川 佳人さん:

「加給年金の届け出漏れが起きやすい最大の理由は、制度そのものが『自動的に支給されない仕組み』であることに加え、年金定期便などを見ても受給者が気づきにくい構造になっている点にあります。

加給年金は、条件を満たしていても本人が申請しなければ支給されない『申請主義』の制度です。しかし、多くの人は『条件を満たせば自動的に反映される』と考えがちで、この思い込みが最初の見落としにつながります。

さらに、毎年届く『ねんきん定期便』に加給年金の金額が記載されていない点も、届け出漏れを招く要因です。日本年金機構は、配偶者の年齢や収入、生計維持の実態を正確に把握できないため、誤解を避ける目的で加給年金をあらかじめ表示していません。その結果、制度の存在自体を知らないまま受給年齢を迎えてしまう人も少なくありません。

加えて、支給条件が複雑であることもハードルになります。本人の厚生年金加入期間が20年以上あることに加え、配偶者の年齢や年金加入歴、受給状況など、複数の要件が重なります。特に近年は制度改正により、配偶者が実際に年金を受け取っていなくても『受給権があるだけで支給停止』となるケースが増え、判断が一段と難しくなっています。

このように、情報が目に入りにくく、条件も分かりづらい構造が重なった結果、受給できたはずの加給年金に気づかないまま過ごしてしまう人が生まれています。通知の有無だけに頼らず、自ら制度を確認する姿勢が重要と言えるでしょう。」

放置すると「5年」で権利が消える。時効による損失の実態

---加給年金の受給資格があるにもかかわらず、届け出をしないまま放置してしまった場合、後から遡って受給できるのでしょうか?

中川 佳人さん:

「加給年金は、届け出をしていなかった場合でも、一定期間であれば後から遡って受給することが可能です。ただし、遡れる期間には明確な上限があります。
年金制度では、各月の年金を受け取る権利に『5年の消滅時効』が定められています。そのため、申請時点から過去5年分までしか遡って受給できず、それ以前の分は原則として受給する権利が失われます。

たとえば、65歳時点で加給年金の条件を満たしていたにもかかわらず、72歳になって初めて申請した場合、67歳以降の5年分は一括で受け取れますが、65歳から67歳までの2年分は時効により受給できません。配偶者加給年金は年額で40万円を超える水準になることもあるため、数年の放置でも数十万円から100万円近い差が生じる可能性があります。

注意したいのは、『制度を知らなかった』『自分は対象外だと思っていた』といった理由では、時効が延びない点です。年金機構側の記録誤りなど、例外的なケースを除き、申請漏れについては原則として本人の責任と判断されます。

そのため、少しでも対象となる可能性があると感じた時点で、早めに行動することが重要です。判断に迷う場合は、年金事務所へ問い合わせを行い、自身の状況で制度が適用されるかを確認してみましょう。こうした一手間が、将来受け取れる年金額を守ることにつながります。」

確実に受給するための第一歩。今すぐチェックすべき3つのポイント

---加給年金の届け出漏れを防ぎ、確実に受給するために、読者が今すぐ確認すべきポイントや具体的な手続きの第一歩を教えていただけますでしょうか。

中川 佳人さん:

「加給年金の届け出漏れを防ぎ、確実に受給するためには、『自分が対象かどうかを早めに確認すること』が重要です。加給年金は、条件を満たしていても自動的に支給される制度ではありません。受給者自身が行動しなければ、気づかないまま時間が経過してしまいます。

自ら確認する必要がある理由は、加給年金が本人の申し出を前提とした『申請主義』の制度だからです。毎年届く『ねんきん定期便』には、家族構成や生計維持の状況が反映されないため、加給年金の金額は記載されていません。その結果、受給資格があっても放置してしまい、5年の消滅時効により受け取れない期間が生じる可能性があります。

今すぐ確認しておきたいポイントは、まず本人の厚生年金加入期間が20年以上あるかどうかです。そのうえで、65歳未満の配偶者や、一定年齢までの子どもを扶養しているかを整理してください。特に近年は、配偶者が実際に年金を受け取っていなくても、一定の加入歴があるだけで加給年金が支給停止となるケースがあり、制度の判定が難しくなっています。

具体的な第一歩としては、必要書類を集める前に、『ねんきんダイヤル』や最寄りの年金事務所に連絡し、自身の状況で受給資格があるかを確認することをお勧めします。早めに専門窓口へ相談することが、加給年金を確実に受け取るための近道となります。」

『もらえるはず』を現実に。早めの確認が老後の安心を左右する

加給年金は、知っているか知らないか、そして動くか動かないかだけで、受け取れる総額に大きな差が出る制度です。中川さんが指摘するように、制度の複雑さや通知の不親切さに不満を感じるかもしれませんが、時効という厳しいルールがある以上、受給者自身の「確認する姿勢」が何よりも求められます。 「自分は対象外だろう」と決めつけず、まずは厚生年金の加入歴と家族構成を再確認してみてください。少しでも心当たりがあるなら、最寄りの年金事務所やねんきんダイヤルへ一本の電話を入れること。その小さな「最初の一歩」が、老後の大切な資産を守る確実な防衛策となります。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。
専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。


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