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「検問してほしい」スキー場での飲酒に物議…「危険」「結構なスピード」→違法ではない?弁護士「法的責任を問われる可能性」

  • 2026.2.15
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出典元:phootAC(※画像はイメージです)

真っ白なゲレンデで楽しむスキーやスノーボード。午後の休憩で、レストランで美味しいランチと一緒にビールを一杯……なんて経験がある方もいるかもしれません。

しかし、「スキー場での飲酒後の滑走は、道路交通法上の飲酒運転ではないから大丈夫」と安易に考えていませんか?

実は、法的には全く問題がないわけではなく、深刻な事故につながるだけでなく、法的責任を問われる複数のリスクが潜んでいます。

今回は、弁護士の寺林智栄さんに、飲酒後のスキー滑走にまつわる法的なリスクと、事故を防ぐための具体的な対策について、詳しくお話を伺いました。この記事を読めば、安全にウィンタースポーツを楽しむための正しい知識が得られます。

飲酒後のスキー滑走、道路交通法は適用されないって本当?

---飲酒後のスキー滑走について、「道路交通法上の飲酒運転には当たらないから問題ない」という声を聞きますが、本当に法的なリスクはないのでしょうか?

寺林智栄さん:

「スキー場で飲酒後に滑走する行為は、スキーやスノーボードが道路交通法上の『車両』には該当しないため、同法の飲酒運転として処罰されることは通常ありません。しかし、法的に全く問題が生じないわけではなく、複数のリスクが存在します。

まず、刑法上の責任が問題となる可能性があります。飲酒により判断力や運動能力が低下した状態で滑走し、他の利用者に衝突して怪我をさせた場合、過失傷害罪(刑法209条)が成立する可能性があります。特に、飲酒していた事実は『注意義務違反』を基礎づける重要な事情として評価されやすく、過失の程度が重く認定されるおそれがあります。

次に、民事責任の問題です。事故により他人に損害を与えた場合、不法行為(民法709条)に基づき、治療費や休業損害、慰謝料などの賠償義務を負うことになります。飲酒後の滑走は危険性の高い行為と評価されやすく、過失割合においても不利に扱われる可能性があります。

さらに、スキー場の利用規約との関係も重要です。多くのスキー場では、安全確保の観点から飲酒後の滑走を禁止または制限しており、これに違反した場合はリフト利用停止や退場措置を受けることもあります。」

もし事故を起こしたらどうなる? 飲酒が招く法的責任とは

---飲酒後に滑走して、もし他人に怪我をさせてしまった場合、どのような法的責任が生じるのでしょうか?また、スキー場運営側の責任も問われますか?

寺林智栄さん:

「スキー場での飲酒後の滑走が法的に問題となるのは、主に事故が発生した場合です。飲酒により判断力や反応速度が低下した状態で滑走し、他の利用者に衝突したり、転倒させて怪我を負わせたりした場合には、刑事責任・民事責任の双方が問題となります。

刑事責任としては、被害者に怪我を負わせた場合、過失傷害罪(刑法209条)が成立する可能性があります。飲酒していた事実は、通常求められる注意義務を尽くしていなかった事情として重視され、単なる操作ミスよりも過失が大きいと評価されやすくなります。被害が重大であれば、業務上過失致傷罪が問題となる場合もあり得ます。

民事責任については、不法行為(民法709条)に基づき、加害者が損害賠償責任を負うのが原則です。飲酒後の滑走は危険行為と評価されやすく、過失割合の算定において加害者側に大きな過失が認められる可能性があります。場合によっては、被害者側に一定の不注意があったとしても、加害者の責任が重くなることがあります。

一方、スキー場運営者の責任が問題となるのは、明らかに泥酔した利用者を把握しながら滑走を黙認していた場合など、管理上の安全配慮義務違反が認められるケースに限られます。原則としては、飲酒後に滑走した本人が事故の責任を負うことになります。」

飲酒滑走を防ぐには? スキー場と利用者ができること

---飲酒後の滑走による事故を防ぐために、スキー場側、そして利用者側はそれぞれどのような対策を取るべきでしょうか?

寺林智栄さん:

「まずスキー場側の対策としては、レストランや売店でのアルコール提供について、滑走時間帯を考慮した提供制限や注意喚起を行うことが考えられます。例えば、『飲酒後の滑走は禁止』『飲酒後は滑走せず休憩を』といった表示を、レストラン内やリフト乗り場、ゴンドラ待ち列など目に入りやすい場所に掲示するだけでも抑止効果があります。

また、利用規約に飲酒後の滑走禁止を明記し、違反した場合の措置(リフト利用停止、退場など)を明確化することも有効です。パトロールスタッフが明らかに酒気帯び状態の利用者を発見した場合、声掛けを行い、滑走を控えるよう促す体制を整えることも現実的な対策といえます。

一方、利用者側に求められるのは『自己判断で無理をしない』姿勢です。昼食時に飲酒した場合はその後の滑走を控え、休憩や下山後の楽しみに切り替えるといった行動が安全につながります。仲間同士で声を掛け合い、『今日はもう滑らない』と決めるルールを設けることも効果的です。飲酒後の滑走は重大事故につながり得る行為であることを共有し、個人のモラルと環境整備の両面から防止策を講じることが重要です。」

スキー場での飲酒は「自己責任」だけでは済まされない!

「道路交通法ではないから大丈夫」という誤解から、安易な飲酒後の滑走は、思わぬ大きな代償を伴う可能性があることが分かりました。

飲酒による判断力や運動能力の低下は、自身の怪我だけでなく、他人に重い怪我を負わせる刑事責任や、高額な賠償金を負う民事責任に発展するリスクをはらんでいます。さらに、スキー場の利用規約違反によるペナルティも免れません。

昼食時に飲酒した際は、その後は滑走を控える、仲間と安全ルールを決めるなど、「自己判断で無理をしない」姿勢が、自分自身と周囲の安全を守ることに直結します。

ウィンタースポーツは、誰もが楽しく安全に満喫できるものであるべきです。今回の専門家の見解を参考に、今シーズンのスキー・スノーボードを、より安全に、そして心から楽しんでください。


監修者:寺林智栄
2007年弁護士登録。札幌弁護士会。てらばやし法律事務所。2013年頃よりネット上で法律記事の執筆・監修を開始。Yahoo!トピックスで複数回1位獲得経験あり。読む方にとってわかりやすい解説を心がけています。


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