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「積立金が月1万円なら」築10年マンションを購入も…売却時に顔面蒼白→40代夫妻を襲った“地獄”【不動産のプロは見た】

  • 2026.2.8
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

毎月の支出が少ないと「この判断は間違っていない」と感じやすいものです。マンション購入でも同じで、ローン返済額や管理費、修繕積立金の今の金額だけを見て安心してしまう人は少なくありません。

ところが、その安心が数年後に数百万円の損となって返ってくることがあります。

今日は、「管理状態が良さそう」「修繕積立金の負担が軽い」と前向きに選んだマンションが、売ろうとした瞬間に足かせになった夫婦のエピソードをお伝えします。

読み進めるうちに、「自分も同じ判断をしていたかもしれない」と感じる場面がきっと出てくるはずです。

「管理が良さそう」だった築10年弱の分譲マンション

相談を受けたのは、私が売買仲介を行っている不動産会社で働いていたときのことです。相談者は、40代の共働き世帯Aさんご夫妻。Aさんご夫妻が購入したのは、築10年弱の分譲マンションでした。

エントランスや廊下などの共用部分はきれいに保たれており、第一印象は「管理がしっかりしていそう」というものだったそうです。

とくに安心材料になったのが、修繕積立金が月1万円台だった点でした。当時は、その金額の安さを「良いマンションの証拠」だと前向きに受け取っていたといいます。こうした理由から、購入への不安はほとんど感じていなかったそうです。

購入時には、長期修繕計画(将来どのような修繕を行い、どれくらい費用がかかるかをまとめた資料)も確認しています。ただし、目を通したのは「計画が用意されているかどうか」までで、内容を細かく読み込むことはありませんでした。

転勤をきっかけに始まった売却査定での違和感

数年後、ご主人に転勤の辞令が出ました。今の住まいに住み続けるのは難しくなり、売却を考えることになります。そうして、私のもとへ査定の依頼が入りました。

室内は丁寧に使われており、状態は良好でした。立地条件も悪くなく、第一印象としては「これは売りやすい物件だ」という感覚です。

ところが、管理組合の資料を一つひとつ確認していくうちに、気になる点が出てきました。修繕積立金の残高と、今後予定されている大規模修繕の内容が、どう考えても釣り合っていなかったのです。大規模修繕とは、外壁の補修や設備の更新など、マンション全体で行う高額な工事のことです。

その費用に対して、積み立てられているお金が明らかに足りない状態でした。私はAさんご夫妻に、率直にこう伝えました。

「このままだと、次の大規模修繕で積立金が足りなくなる可能性が高いです」

その一言で、Aさんご夫妻の表情が変わったのを今でもよく覚えています。

浮上していた“一時金徴収”と積立金の大幅増額

管理組合の議事録をさらに読み進めると、状況は想像以上に深刻でした。すでに組合内では、次のような話が具体的に議題に上がっていたのです。

  • 一時金の徴収(数十万円を一度に集める案)
  • 修繕積立金の大幅な引き上げ(月数千円〜1万円以上増える可能性)

Aさんご夫妻は、この事実をそのとき初めて知りました。

「住んでいる間は、特に困ったことはなかったんです。こんな話があるなんて、まったく知りませんでした」

暮らしている間に不便を感じていなかったからこそ、余計に実感がなかったのでしょう。しかし、売ろうとした途端、見方が一変します。

マンションの購入希望者が見るポイントとして「今の住み心地」よりも「この先、お金がどれくらいかかりそうか」という点でした。そこで不安が見えると、評価は一気に下がってしまいます。

この時点で、Aさんご夫妻のマンションは、買う側から見て不安を抱えた物件になってしまっていました。

内覧は入るが、決まらない。200〜300万円の値引き要求

売却活動では、修繕積立金が不足する可能性について販売資料にきちんと記載しました。後から揉めるわけにはいかないからです。

内覧は入りますが、「将来の負担が見えない」という理由で、話はなかなか前に進みませんでした。購入希望者から出てくる条件は、周辺相場より200〜300万円の値引きばかりです。

将来いくらかかるか分からない物件は、買う側にとって大きな不安になります。その不安は、価格という形で調整されるのが現実でした。

Aさんご夫妻が突きつけられたのは「売れるかどうか」ではなく「いくら下げれば売れるのか」という厳しい判断です。結局、希望価格より300万円安い金額で売却が成立しました。

修繕積立金は「売却時」に効いてくる

このケースでいちばん大きな誤算は「毎月の修繕積立金が安い=良いマンション」と考えてしまった点でした。修繕積立金の問題は、暮らしている間はほとんど表に出ません。毎日を普通に過ごしている限り、不便を感じることも少ないからです。

ただし、売ろうとした瞬間に一気に現実になります。評価されるのは、今の快適さではなく、この先どれだけお金がかかりそうかという点です。

本来は、購入前にここまで確認しておくべきでした。

・長期修繕計画と積立金の残高が、実際の工事内容と合っているか
・将来、一時金の徴収や大幅な値上げが出てくる可能性はないか
・「今は安い」という点が、売るときの値下げ理由にならないか

マンション選びは「毎月いくら払えるか」だけで考えると、売却時につまずきます。「売るときにどう見られる管理状態か」まで含めて判断することが重要です。

安く感じていた固定費が、数年後、数百万円の値下げとして返ってくる。そんな地獄を避けるためにも、数字の意味まできちんと見ておくことが大切です。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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