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「月々4万円なら…」で大誤算? “子どもが生まれたらミニバン”で年収500万世帯が陥る落とし穴

  • 2026.2.6

 

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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

新しい家族を迎えるにあたり、広いクルマが必要だと考えるのは親心として自然なことです。

しかしこの時期は、働き方の変化による収入減や子育て費用の増加など、家計のバランスが最も崩れやすいタイミングでもあります。今払えるからという理由だけで、クルマを契約するのはリスクが高いかもしれません。

本記事では、これから子育てする方に向けて、クルマ選びの前にやっておきたい家計の「試運転」と、「購入時期の先送り」も含めたリスクを抑えて賢くクルマを手に入れるための“条件選び”について解説します。

子どもが生まれたらとりあえずミニバンは危険信号?家計の“激動期”に失敗しないクルマ選びの境界線

出産を控え、あるいは新しい家族を迎えたばかりの時期。「そろそろクルマもスライドドア付きの大きなサイズに買い替えるべきかもしれない」と、スマートフォンでミニバンの情報を調べ始めている方も多いのではないでしょうか。チャイルドシートを載せて、ベビーカーを積んで、家族みんなで出かける。そう想像すると、やはりミニバンの広さは魅力的に映ります。

しかし、もし現在の給与明細を見て「月々のローンが払えるから大丈夫」という理由だけで契約書にサインをしようとしているなら、その判断は、少し危険かもしれません。

実は、子どもが生まれた直後というのは、人生の中でも特に家計の収支バランスが崩れやすい激動期にあたります。実際に厚生労働省が2024年に公表した国民生活基礎調査を見ても、児童のいる世帯の6割以上が生活を苦しいと感じているというデータがあります。平均所得だけを見れば決して低い水準ではないにもかかわらず、多くの家庭が余裕のなさを感じているのが実情です。

これは単に収入だけの問題ではなく、子育て期特有の「読めない収支変動」が大きく関わっていると考えられます。何よりも避けたいのは、念願のマイカーが家計を圧迫し、生活そのものに余裕がなくなってしまうことです。

そこで今回は、具体的な車種カタログを開く前に知っておきたい、家族を守るためのクルマの買い時と支払い設計について、少し踏み込んでお話ししていきたいと思います。

なぜ子ども=ミニバンで後悔するケースがあるのか

一般的に、子どもが生まれたらミニバンという流れは、ある種のセオリーのように語られることが多いものです。もちろん、スライドドアの利便性や車内移動のしやすさは、子育てにおいて非常に強力な武器となります。しかし、この必要性という言葉だけに背中を押されてしまうと、思わぬ落とし穴にはまることがあるのです。

まず一つ目に考え直したいのが、「ミニバンの広さが本当に必要になる時期」と「購入するタイミング」のズレです。冷静に生活シーンを想像してみると、生まれてすぐの子どもはチャイルドシートに収まっている時間がほとんどです。つまり、キャンプや習い事の送迎で「広大なスペース」が不可欠になるのは、子どもが成長してからの話なのです。必要性が低いこの数年間に、あえて維持費の高い大型車を所有し続けることは、家計にとって「使わない空気を運ぶためにコストを払っている」状態になりかねません。だからこそ、「子どもが大きくなるまで待つ」という選択肢が有効になるのです。

そして二つ目の落とし穴が、今の給料でローンが組めるなら安全という判断です。独身時代や夫婦二人の時は、給料が入ればその範囲内でやりくりが完結していました。多少の贅沢をしても、翌月調整すれば済んだかもしれません。しかし、子育て期は少し事情が異なります。これから数年間は、収入が変動しやすくなる一方で、支出は確実に膨らんでいくというフェーズに入ります。

今の給与明細だけを基準に「月々4万円なら余裕がある」と判断して購入した結果、数年後に車検代の捻出に苦労したり、タイヤ交換などのメンテナンス費用が家計を圧迫したりするケースは、決して珍しいことではないのです。

月3万円なら大丈夫?家計を揺らす見えない変動のリスク

では、具体的にどのようなリスクが潜んでいるのでしょうか。専門的な制度の詳細は割愛しますが、家計に起きる現象としてはシンプルで、入りが減り、出が増えるというダブルパンチが起こりやすいという点が挙げられます。

まずは収入の面です。なぜ収入が減る可能性があるのかというと、育児休業中は給与の全額が支給されるわけではなく、復帰後も時短勤務を選択することで残業代がなくなったり、基本給が下がったりするケースが多いからです。もちろん給付金などのサポート制度はありますが、働いていた時の満額がそのまま入ってくるわけではありませんし、ボーナスの支給額が変わることも想定されます。この一時的な収入減が、固定費である自動車ローンの支払いに重くのしかかってくるかもしれません。

一方で、支出の面はどうでしょうか。オムツやミルクといった日々の消耗品に加え、地域や所得によって決まる保育料が家計に加わります。さらに、保育料の上限基準は大きな幅があり、月額数万円単位の固定費が新たに発生することも珍しくありません。

クルマのローンは一度組んでしまえば、数年間は金額を変えられない硬直した固定費です。そこに、保育料という別の固定費が積み重なり、さらに収入が一時的に下がるかもしれない。この波状攻撃に耐えられるだけのバッファ、つまり家計の余裕を持たずに契約してしまうことが、リスクの正体といえるでしょう。

購入前に試しておきたい「家計の試運転」

では、どのくらいの価格帯のクルマなら安心して乗ることができるのでしょうか。

その答えを出すために、私がおすすめしているのが「家計の試運転」です。クルマを買う前に試乗をするように、家計もシミュレーションしてみるのです。難しい計算は必要ありません。3つのステップでざっくりと確認してみましょう。

Step 1:収入を厳しめに見積もる
今の世帯収入をそのまま使うのではなく、例えば育休中や時短勤務になったと仮定して、手取りが8割程度になった状態を想像して数字を置いてみてください。ボーナス払いについても、支給がない前提で考えておいた方がより安全といえるでしょう。

Step 2:見えない支出を差し引く
その厳しめに見積もった手取りから、毎月の生活費に加え、将来かかるであろう保育料や子ども関連費を、少し高めに仮定して差し引きます。

Step 3:残った余力で維持できるか判定する
ここで残った金額が、クルマに使える実質的な上限額と考えられます。重要なのは、ここからローン返済額だけでなく、維持費も引けるかどうかです。駐車場代、ガソリン代、自動車保険料、そして毎年の自動車税。これらを引いても、まだ手元にお金が残るでしょうか。

もし収支がカツカツになるようであれば、そのクルマは現在の家計にとって負担が大きすぎる可能性があります。特にミニバンなどの大型車は、車検費用やタイヤ交換費用(4本で10万円近くかかることも!)も高額になりがちです。それらを積み立てる余力がなければ、数年後に家計がエンストを起こしてしまう恐れがあるのです。

車種選びではなく条件選びでリスクを回避する

試運転の結果、今のままでは厳しいかもしれないとなったとしても、生活の都合上、どうしても必要であればスライドドアのクルマをすぐに諦める必要はありません。大切なのは、車種をミニバンに固定することではなく、サイズ感や支払い条件を柔軟に変えてみることです。ここからは、リスクをコントロールするための賢い買い方をいくつかご提案します。

1. 「スライドドア付き」のコンパクト・軽自動車という選択肢
「スライドドアは必須だけど、維持費は抑えたい」。そんな方の最適解となり得るのが、ルーミーやソリオといったコンパクトカー、あるいはN-BOXやタント、スペーシアといった「スーパーハイト系」と呼ばれる軽自動車です。

今の軽自動車やコンパクトカーは、天井が高く設計されており、小さな子どもをチャイルドシートに乗せ降ろしする分には十分な広さがあります。何より魅力なのは、車両価格や税金、タイヤ代などの維持費が、ノアやヴォクシー、セレナといったミドルサイズミニバンに比べて大幅に抑えられる点です。「子どもが大きくなって手狭になったらミニバンへ」とステップアップする前提で、家計が不安定な数年間をこのクラスで乗り切るのも非常に賢い戦略です。

2. 「残価設定クレジット」を戦略的に活用する
どうしてもミドルサイズ以上のミニバンが必要な場合、「残価設定クレジット(残クレ)」を活用して月々の支払額を物理的に下げる方法があります。ミニバンは数年後の価値(残価)が高く設定されやすいため、残クレとの相性が非常に良いカテゴリーです。低金利キャンペーンなどをうまく活用できれば、通常のローンよりも月々の固定費を大幅に抑えることができます。

ただし、これには一つ重要な注意点があります。残クレはあくまで「据え置いている」状態であり、返却時の査定が重要になります。子育て期は、車内で飲み物をこぼしたり、シートを汚したりといったトラブルがつきものです。将来の精算時に追加費用を請求されないよう、防水のシートカバーやフロアマットを徹底して活用し、「クルマをきれいに保つ」意識を持つことが不可欠です。

3. 購入時期を「戦略的」に先送りする
これが最もリスクの低い選択肢です。「家計の試運転」の結果、不安が残るようであれば、「今は買わず、現在のクルマ(あるいはカーシェア等)で粘る」という判断は、決してネガティブなものではありません。前述の通り、0歳児のうちはミニバンの広さが必須というわけではありません。

家計の変動が激しい乳幼児期は今のクルマで乗り切り、保育料の金額が確定したり、妻の職場復帰で世帯収入が安定したりしてから購入に踏み切る。この待ちの期間に頭金を貯めれば、数年後にはより良い条件で、不安なくミニバンを手に入れることができます。買わないという決断もまた、家族を守るための立派な戦略なのです。

「買う」だけが正解じゃない。家族を守るための最適解を

クルマ選びというと、つい「どのクルマを買うか」という点ばかりに目が行きがちです。しかし、これから親になる皆さんにぜひお伝えしたいのは、家族を守るためのクルマ選びとは、安全性能は大前提として、さらに「安全な家計を維持することでもある」という視点です。

子どもが成長すれば、高校や大学への進学に向けて教育費の負担は確実に大きくなっていきます。いわば教育費の山は、まだこの先に見えているのです。その山を登るための体力を、今ここで使い果たしてしまっては元も子もありません。

計算の結果、「今はまだその時ではない」と判断して購入を見送ることも、あるいは工夫してコストを下げることも、すべては家族の未来を守るための前向きな選択です。

「この条件なら、3年は無理なく回し続けられる」。そう確信できる設計こそが、あなたと家族の未来を守るエアバッグになります。まずは今週末、ディーラーに行く前に、電卓を叩いてわが家の安全ラインを計算することから始めてみてはいかがでしょうか。


参考:2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)


ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析など、業界経験に基づいた視点での解説を行っている。


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