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「外車の車検は高い」は半分間違い? 多くの人が怯える“高額請求”に「実は…」クルマの専門家が教える“意外な正体”

  • 2026.2.4

 

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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

信号待ちでふと隣を見たとき、洗練されたデザインの輸入車に目を奪われ、「かっこいいな」と憧れを抱いた経験。きっと多くの方にあるはず。しかし、いざ「自分の愛車にする」ことを想像した途端、「維持費がすごそうだし、今の生活では無理だ」と、その思いを打ち消してしまってはいないでしょうか。

実は、その「高い」と言われる費用の正体は、ブラックボックスではありません。中身を正しく知れば、その漠然とした不安は「計画的に準備できる予算」へと変わります。

憧れをただの憧れで終わらせないために、まずは維持費のカラクリを一緒に紐解いていきましょう。

外車の維持費の高さ

「外車は維持費が高い」

この言葉には、せっかく芽生えた大人の憧れを一瞬で打ち消してしまうほどの、強力なブレーキ効果があります。

友人との会話やインターネットの掲示板でこのフレーズを目にするたび、「やはり自分には分不相応なのかもしれない」と、現実的な計算をする前に思考を停止してしまう。そして、そっと検討リストから外してしまう。そんな経験はないでしょうか。

確かに、国産車と比較すれば、維持にかかるコストが大きくなる傾向にあるのは事実といえるでしょう。しかし、その差額が具体的に何に由来しているのか、論理的に説明できる人は意外と少ないものです。

多くの人が抱く「維持費が怖い」という感情。その正体のほとんどは、実は「何にいくらかかるか分からない」という“不透明さ”から来ているのではないでしょうか。

しかし、その正体が構造的な違いや設計思想にあると分かれば、どうでしょうか。それはもはや得体の知れない“怪獣”ではなく、対策可能な管理コストへと姿を変えるはずです。

今回は、多くの人が入り口で引き返してしまう「維持費の壁」について、その中身を冷静に分解していきましょう。

「外車だから高い」は本当か?まずは一番の不安材料、“車検”の中身とは

車を維持する上で、ガソリン代や駐車場代といった毎月の出費は、ある程度計算ができるものです。しかし、多くの人が「外車は怖い」と感じる最大のハードルは、やはり2年に1度やってくる「車検」ではないでしょうか。

「請求書を見たら、目が飛び出るような金額だった」

そんな噂話を聞くと身構えてしまいますが、まずは落ち着いて、車検費用の「内訳」をイメージしてみてください。実は、車検の費用は大きく二つの箱に分かれています。

一つは、国や保険会社に支払うお金。

もう一つは、整備工場に支払う、点検や修理のお金です。

このうち、前者の国に支払うお金に関しては、意外に思われるかもしれませんが、輸入車であっても国産車であっても、基本的なルールは全く同じなのです。

ここには自動車重量税や自賠責保険料、印紙代などが含まれますが、これらをまとめて専門用語で「法定費用」と呼びます。

例えば、重量税はその名の通り車の重さで決まります。自賠責保険料も、自家用乗用車(登録車)であれば車種による差はありません。つまり、同じ重さの車であれば、それが国産のミニバンであろうと、ドイツ製のセダンであろうと、国に納める金額(基本となる税額)は同じなのです。「外車だから税金を高くしよう」というルールは存在しません。

では、なぜ「外車の車検は高い」といわれるのでしょうか。税金部分が変わらない以上、差が生まれるのはもう一方の、整備工場に支払うお金(点検整備費用)ということになります。しかし、ここにも単なる価格差だけではない、もっと根本的な「車づくりの思想の違い」が隠されているのです。それを知ると、見積もりの見え方が少し変わってくるかもしれません。

差がつく理由は“国籍”ではなく“思想”?欧州車特有の「予防整備」とは

輸入車、特に欧州車の整備費用が高く見える最大の理由は、彼らが予防整備という独自の設計思想を強く持っている点にあります。

かつては「国産車は壊れない」「外車は壊れやすい」というイメージが一般的だった時代もあります。しかし、近年のJ.D.パワー・ジャパンによる自動車耐久品質調査などを見ても、輸入車ブランドが上位にランクインすることは珍しくなく、もはや品質や耐久性において国籍による単純な優劣は存在しないといえます。

しかし、故障率は同等だとしても、「メンテナンスに対するスタンス」には明確な違いがあります。

国産車は、ユーザーの負担を減らすため、比較的「部品交換なしで長く乗れること」を重視した設計が好まれる傾向にあります。そのため、車検時の部品交換も「少し消耗しているけれど、まだ動くから交換は次回にしよう」という判断が許容されやすいのです。

一方で、欧州車を中心とした輸入車は考え方が少し異なります。「車は本来、性能を維持するために定期的に部品を交換して乗るもの」という前提で設計されていることが多いのです。

これは、アウトバーンのような超高速域での走行が日常的に行われる環境も影響しているのかもしれません。彼らにとって整備とは、「壊れた箇所を直す」ことではなく、「壊れる前に新品に戻す」ことであり、新車時のパフォーマンスを安全に発揮し続けるための、いわば“儀式”のようなものです。

そのため、メーカーが推奨する部品交換のリストは、国産車に比べて多岐にわたり、ブレーキパッドやディスクローターといった消耗品はもちろん、ゴム製の部品やセンサー類に至るまで、「一定の距離や期間が来たら交換する」ことが前提となっているのです。

また、部品そのもののコスト構造にも違いがあります。本国からの輸送コストが含まれる点に加え、輸入車では不具合のある小さなパーツ単体ではなく、それを含むユニット全体をごっそりと交換するケースが多く見られます。これも、一回あたりの単価が高くなる要因の一つです。

さらに身近な例を挙げれば、「エンジンオイル」一つとっても事情が異なります。

国産車では一般的で安価な規格のオイルが使えることが多いですが、欧州車では高速走行時のエンジン保護性能を重視した独自の規格(ACEA規格など)が指定されることがほとんどです。

「ガソリンスタンドにある一番安いオイルでいいよ」というわけにはいかず、どうしても規格をクリアする高価な高機能オイルを選ばざるを得ません。こうした厳しい基準も、維持費のベースを押し上げる要因となっています。

そして最後に、「技術料(工賃)」の差も加わります。輸入車は専用の診断機(コンピュータ)が必要だったり、整備の手順が複雑だったりと、専門的な知識と技術が求められます。そのため、正規ディーラーなどの整備工場では、時間あたりの工賃が高めに設定されていることが一般的です。

つまり、見積もりが高くなるのは「ぼったくられている」からではなく、「安全と性能を新車同様に維持するための提案」が手厚く盛り込まれているから、と捉えることができます。

とはいえ、これらはすべて、安心の裏返しでもあります。高いと感じるか、必要経費と感じるか。ここが、輸入車オーナーになれるかどうかの最初の分岐点と言えるかもしれません。

そして、構造は理解できたとしても、「実際に支払えるかどうか」はまた別の話です。そこで重要になってくるのが、オーナー自身の「準備」と「行動」です。

維持費が高く感じる人、そうでもない人。分かれ道は「事前の設計」にあり

不思議なことに、同じ輸入車に乗っていても、「維持費が大変で手放した」という人と、「思ったほどかからないよ」と涼しい顔をしている人がいます。この両者の違いは、一体どこにあるのでしょうか。

それは、維持費を「突発的な事故のような出費」として扱っているか、それとも「計画的な予算」として暮らしに組み込んでいるか、という点にあるようです。

維持費を高く感じてしまう人の多くは、「警告灯が点灯してから慌てる」というパターンに陥りがちです。先ほど触れた通り、輸入車は定期的な部品交換を前提としています。それにもかかわらず、「まだ走れるから」と交換を先送りにし続けると、ある日突然、大きなトラブルに見舞われる可能性があります。

警告灯が点いてからディーラーに駆け込み、緊急で部品を手配し、修理をする。こうなると、選択肢が限られてしまい、提示された見積もり通りに支払うしかありません。これが重なると、「外車はやっぱり金食い虫だ」という印象が強くなってしまいます。

一方で、維持費をコントロールできている人は、車のコンディションを「予算化」しています。

「次の車検ではタイヤ交換が必要だから、月々これくらい積み立てておこう」「ブレーキパッドの残量が減ってきたから、ボーナス時期に合わせて交換しよう」といった具合に、出費を先回りして予測しているのです。

また、すべての整備をディーラーに一任するのではなく、内容によっては輸入車に強くディーラーよりも安価な専門ショップを活用するといった使い分けも、賢いオーナーに見られる特徴です。

大切なのは、「いつ、いくらかかるか分からない」という状態をなくすこと。これさえできれば、輸入車は決して「一部のお金持ちだけの道楽」ではなくなるはずです。

「見えない不安」を「計算できる予算」へ。憧れを現実にする第一歩

「外車は維持費が高い」。その言葉の正体は、見えないお化けのようなものではなく、明確な部品代と工賃、そして整備思想の積み重ねでした。

車検費用のベースとなる税金などの「法定費用」は国産車と同じ。差が出るのは、その車が持つパフォーマンスを維持するための「設計図」が違うからです。それを単なる「コスト」と捉えるか、「安心への投資」と捉えるかで、愛車との付き合い方は大きく変わります。

もし、あなたが輸入車の購入を迷っているのなら、まずは「覚悟」を決めるのではなく、「計算」をしてみてはいかがでしょうか。ディーラーでメンテナンスパックの内容を聞いてみるのも良いでしょうし、欲しい車の消耗品交換サイクルを調べてみるのも良いでしょう。

「なんだ、これなら月々2万円の積立で十分に賄えるな」

そんな計算が立ったとき、憧れの輸入車は、遠いショーウィンドウの中の存在から、あなたの日常を彩るパートナーへと変わるはずです。



ライター:根岸 昌輝
自動車メーカーおよび自動車サブスク系ITベンチャーで、エンジニアリング、マーケティング、商品導入に携わった経験を持つ。
現在は自動車関連のライターとして活動し、新車、技術解説、モデル比較、業界動向分析など、業界経験に基づいた視点での解説を行っている。