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誰も住まないのに“年50万円”も消えていく…実家を放置した50代男性を襲った“思わぬ誤算”【不動産のプロは見た】

  • 2026.2.5
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

実家が都市部から離れた地方にある場合、固定資産税も安く、持っているだけなら大きな負担にはならないと考えている方も多いのではないでしょうか。

私の母の実家も山奥の田舎にあり、固定資産税は決して高くありません。

実際に相続の相談を受けていると「とりあえず空き家のまま置いておきます」「田舎ですし、そんなにお金はかからないですよね?」といった声を耳にすることも少なくありません。

ところが現実には、誰も住まない家ほど、気づかないうちにお金が出ていくケースが多くあります。

今日は、「田舎の家だから大丈夫だろう」という思い込みから、誰も住んでいない実家の維持に年間50万円を払い続けることになった、50代会社員の男性のエピソードをご紹介します。

都市部に住む子世代が相続した、誰も住まない実家

都市部で働く50代の会社員Aさんは、数年前にご両親を相次いで亡くし、地方の農村部にある実家を相続しました。

実家は駅から遠く、周囲は田畑に囲まれた立地です。Aさん自身も家族も住む予定はなく、当面は空き家のままにしておこうと考えていました。

初めて相談を受けたとき、Aさんはこう話していました。

「田舎ですし、固定資産税も安いですよね。持っているだけなら大した負担にはならないでしょう」

この時点ではAさん自身も、その判断が後々大きな誤算につながるとは思っていなかったのです。

冬になると避けて通れない「雪下ろし」

誤算がはっきりしたのは、相続後に迎えた最初の冬でした。

Aさんの実家は雪の多い地域にあり、屋根に雪が積もると放置できない状態になります。重みで建物が傷むおそれがあり、雪下ろしは欠かせません。

とはいえ、Aさんは現地に住んでおらず、自分で作業をすることもできませんでした。やむを得ず、地元の業者に依頼することになります。

雪下ろしの費用は、1回につき数万円。しかも、冬の間に一度で済むわけではありません。

「今年は雪が多いですね」

業者からそう言われるたび、Aさんの出費は確実に増えていきました。

夏は夏で、草刈りと近隣トラブルが待っていた

雪の季節が終わると、今度は夏ならではの問題が表に出てきました。

誰も住んでいない実家の敷地は、手入れをしないまま放置すると、あっという間に草が伸びていきます。気づけば、庭だけでなく敷地の外まで草がはみ出す状態に。

しばらくすると、近隣からAさんのもとに連絡が入ります。

「草が道路にはみ出していて危ない」「虫が増えて困っている」

慌てたAさんは、急いで草刈り業者を手配しました。もちろん、無料ではありません。

気づけば、管理会社とも契約することに

雪や草の対応が続く中で、現地の管理をすべて自分で行うのは次第に現実的ではなくなっていきました。そこでAさんは、次のような作業を任せるため、空き家管理会社と契約することになります。

  • 定期的な見回り
  • 建物に異常がないかの確認
  • 簡単な清掃や通風(室内に空気を通し、湿気やカビを防ぐための作業)

遠方に住みながら実家を維持するには、こうした外部の手を借りざるを得なかったのです。

年間維持費は約50万円。それでも家はお金を生まない

固定資産税そのものは、確かに高くありませんでした。しかし、実際にかかっていた費用をすべて合計すると、想像していた状況とはまったく違っていたのです。

  • 冬場の雪下ろし費用
  • 夏場の草刈り費用
  • 空き家管理会社への委託費

これらを合わせると、年間の維持費は約50万円に達していました。

誰も住んでいない。家賃収入があるわけでもない。将来、資産価値が上がる見込みもない。実家は、毎年確実にお金だけが出ていく状態が続いていたのです。

考えるだけで「憂うつ」になった実家の存在

Aさんは、こんな言葉を漏らしていました。

「実家のことを考えると、正直、気持ちが重くなるんです」

解体して売却することも検討しましたが、実家は立地条件が厳しく、すぐに買い手が見つかる状況ではありませんでした。自治体の空き家バンクにも登録しましたが、数年が経っても問い合わせは入らなかったといいます。

「固定資産税が安いから、維持費も大したことはない」

その考えは、この時点で完全に崩れていました。

誰も住まない資産価値が低い家は、維持費でお金を奪っていく

誰も住まず、資産価値が低い家は、お金を生みません。持っているだけで、確実にお金が出ていく存在になります。

このケースから見えてきたのは、誰も住まない家には必ず維持費がかかるという現実を、最初から前提にすべきだったという点です。相続した直後に、次の点を一度立ち止まって確認できていれば、判断は違っていたかもしれません。

  • 年間でどれくらいの費用がかかるのか
  • 手放す以外に現実的な使い道があるのか

実家には感情が入りやすいからこそ、こうした点を早い段階で数字ベースで把握しておくことが重要でした。実家には、思い出や感情がつきものです。ただ、判断を先送りした分だけ、コストは確実に積み上がっていきます。

誰も住まない家を持ち続けることは、何もしない選択ではありません。それは、毎年お金を払い続ける決断だということを、忘れないでください。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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