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転勤決定で「2月中に売りたい…」50代男性が焦った結果、“現金客”に300万円も安く買い叩かれたワケ

  • 2026.2.4
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

期限が決まっていると、つい判断を急いでしまう。そんな経験はないでしょうか。

引越しや転勤、子どもの進学など、人生の節目には動かせない期限がつきものです。不動産の売却も例外ではありません。

むしろ、この「期限」があるときほど、人は冷静さを失いやすくなります。本来であれば確認すべき条件や、まだ交渉できたかもしれない余地を、焦りから見落としてしまうことがあるのです。

今日は「現金で買います」という言葉に安心しすぎた結果、条件面で大きな後悔を残してしまった売却のケースをご紹介します。

転勤決定。売却期限は「2月中」と決まっていた

この話は、私が不動産業で独立して2年が経った頃に受けた、50代の会社員Aさんからの相談です。

Aさんは、長年暮らしてきた持ち家に住んでいましたが、年末に突然、地方への転勤が決まりました。新しい勤務地での勤務開始は4月。社宅の都合もあり「2月中に引き渡しを終えたい」というはっきりした期限がありました。

売却活動は12月からスタート。この時点では、売却が長引くことや、条件面で苦労することなど、ほとんど想像していなかったのです。

繁忙期ならすぐ売れる。その読みが外れ始めた

売却活動が始まると、内覧の反応自体は悪くありませんでした。ただ、実際に出てくる話は、価格交渉ばかり。

「もう少し下がりませんか?」
「この条件なら前向きに考えられるのですが…」

手応えはあるはずなのに、話はなかなか決まりません。その頃から、Aさんの中に少しずつ焦りが生まれ始めます。

「2月に間に合わなかったらどうしよう」
「引越し先の家賃と、今の家のローンを両方払うことになるかもしれない」

考えないようにしても、不安が頭から離れなくなっていきました。繁忙期だから大丈夫。そう信じていた気持ちが、少しずつ揺らぎ始めていたのです。

「現金で買います」という一言に思わず救われた

そんな中、Aさんの前に現れたのが、住宅ローンを使わず、現金で購入したいという買主でした。

ローン審査がなく、途中で話がひっくり返る心配も少ない。その条件を聞いた瞬間、Aさんの気持ちは一気に軽くなりました。買主からは、続けてこんな提案がありました。

「2月の引き渡しに対応してもらえるなら、具体的な条件を詰めたいです」

Aさんは、この言葉に強く惹かれました。何よりも「期限に間に合う」という安心感を、最優先に考えてしまったのです。

気づけば、こちらが妥協する条件ばかりになっていた

交渉は、Aさんが想像していた以上に厳しい内容でした。話し合いが進むにつれ、少しずつ条件を求められていきます。

  • 相場よりも大きな価格の値下げ
  • シロアリ予防工事を売主負担で行うこと
  • 売主側での建物状況調査(インスペクション)の実施
  • 通常より細かい範囲まで求められたハウスクリーニング

どれも一つだけ見れば、受け入れられなくはない条件でした。

「現金で買ってもらえるなら、仕方ない」

Aさんはそう自分に言い聞かせながら、条件をのみ込んでいきました。

せっかく売れたのに、残ったのは後悔だけ

契約が成立してしばらく経った頃、Aさんはふと立ち止まりました。

「…あの条件、本当に受け入れる必要があったのだろうか」

そう思ったときにはすでに契約は成立しており、条件を見直す余地はありませんでした。

結果として、売却価格は当初の想定より約300万円低い金額に。さらに、シロアリ予防工事や建物状況調査(インスペクション)、ハウスクリーニング費用など、売主負担の出費も重なりました。

望んでいた早期売却は実現したはずなのに、Aさんの胸に残ったのは「もっと違う進め方があったのではないか」という後悔でした。

本当に不利だったのは、急いでいた売主側だった

このケースで見えてきたのは、急いでいたのは買主ではなく、売主側だったという事実です。

繁忙期であっても、引き渡し期限が決まっている売主は交渉で不利になりやすくなります。その期限自体が、相手にとって交渉を有利に進めるための材料になるからです。

現金での購入は魅力的に見えますが、それだけで有利になるわけではありません。あくまで条件の一つに過ぎないのです。

振り返ってみると、判断を誤らせたポイントは次の点に集約できます。

  • 期限を交渉材料にされていた
  • 判断を一人で抱え込んでいた
  • 価格と条件を同時に処理しようとしていた

売却期限があるときほど、「こちらが急いでいる」という状況を相手に悟らせない工夫が欠かせません。安心できそうな条件に飛びつく前に、その安心は誰のためのものなのか。

一度、立ち止まって考えてみてください。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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