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「正月に決めればいい」で税金800万円の大損? プロが警告、実家じまいで多くの人が見落とす“3年目の期限”

  • 2026.2.6
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

「正月に集まったときに決めればいい」

家族の話になると、こんな言葉で判断を先送りしてしまう方は少なくありません。特に実家の問題は、今すぐ困っているわけではないため後回しにされがちです。

誰も住んでいないだけで、大きなトラブルが起きているわけでもない。そう感じるほど、「落ち着いたら」「みんながそろったら」と先延ばししやすくなります。

しかし、土地や建物には、法律や税制で決められた期限があり、人の事情に合わせて延ばすことはできません。

今日は、その期限を正月のたびに見送り続けた結果、税金が約800万円も増えてしまった実例をご紹介します。

「まだ売らなくていい」と思っていた相続直後

この相談をしてくれたのは、都市部で会社員として働く50代の男性Aさんです。数年前、地方で一人暮らしをしていた父親が亡くなり、実家を相続しました。

母親はすでに介護施設に入っており、実家は誰も住んでいない空き家の状態でした。相続後まもなく、不動産会社からこんな説明を受けたそうです。

「早めに所定の手続きを踏んで売れば、空き家特例が使えますよ」

空き家特例とは、一定の条件を満たして売却すれば、売ったときの利益から最大3,000万円まで税金計算の対象から差し引ける制度です。うまく使えれば、税金を大きく抑えられる可能性があります。

その話を聞き、Aさんも「それなら安心だ」と感じました。ただ、その時点では次のように考えていました。

  • 今すぐ売らなくても困っていない
  • 正月に兄弟が集まったときに話し合えばいい

こうして判断は先送りされ、具体的な行動は何も起こさないまま時間だけが過ぎていったのです。

参照:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

正月のたびに繰り返された「また来年」

それから毎年、年末年始に兄弟が顔をそろえると、決まって実家の話題が出ました。

「そろそろ売る?」
「まだ急がなくていいんじゃない?」
「来年、落ち着いてから考えよう」

しかし結局、話はまとまらず、最後はいつも「じゃあ、今回は見送ろう」で話が終わっていました。

一方で、空き家の管理だけは続きます。草刈りや簡単な清掃、固定資産税の支払い。負担は少しずつ積み重なっていきました。

それでもAさんは「空き家特例があるから、いざ売ることになっても大きな問題にはならない」と思い込んでいたといいます。

突きつけられた「特例はもう使えません」

状況が変わったのは、相続から数年が経った頃でした。建物の傷みも目立ち始め、「さすがに売ろう」とAさんは本格的に動き出します。

あらためて不動産会社に相談したところ、返ってきた言葉は想定外のものでした。

「空き家特例は、もう使えません」

空き家特例には、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するという、はっきりとした期限があります。Aさんのケースでは、その期限をすでに超えていました。

特例が使えない場合、売却益には通常どおり税金がかかります。そこで税額を試算してみると、条件次第では税金が数百万円単位で増える可能性があることが分かりました。Aさんの場合、取得費や売却価格などを踏まえると、税金が約800万円※増える見込みだったといいます。

「そんな話、もっと早く言ってくれれば…」

思わずそう口にしたAさんでしたが、冷静に振り返ると、空き家特例の説明自体は相続直後に受けていました。ただ、その期限を具体的に意識しないまま、時間だけが過ぎてしまっていたのです。

結局、誰も得をしない形で、想定以上の税金を払って売却する方向で話が進みました。

※金額は、取得費の有無や売却価格、保有期間、適用される税率などによって変わります。あくまで一例であり、すべてのケースで同額になるわけではありません。

空き家は「時間が経つほど不利になる」

このケースでいちばん大きな誤算は、期限を基準に判断しなかったことでした。空き家特例は、「知っていれば得をする制度」ではありません。期限内に動かなければ、そもそも使えない制度です。

本来であれば、次のような進め方が必要でした。

  • 相続後すぐに、空き家特例の期限を確認する
  • 売るか残すかを、その期限から逆算して決める
  • 「正月に話す」ではなく、「〇月までに決める」と期限を切る

空き家は、置いておけば選択肢が増えるわけではありません。時間が経つほど、使える制度は減り、判断の余地も狭くなっていきます。

その実家、あと何年“選択肢”が残っていますか?

実家の処分は、家族の気持ちが絡むため、どうしても後回しになりがちです。ただ、その間にも、不動産や税金のルールによる期限は進んでいきます。「そのうち決める」という選択は、気づいたときには選べる制度や方法が減っている状態を招くことがあります。

相続した実家が空き家になっているなら、まず確認すべきなのは次の点です。

  • 相続から何年が経っているのか
  • 使える制度や特例の期限があとどれくらい残っているのか

話し合いの区切りは、正月ではありません。「いつまでに決めないと、選択肢が減るのか」を基準に動くこと。それが、実家処分で後悔しないための最低限の備えになります。

※空き家特例は、原則として昭和56年5月31日以前に建築された住宅が対象となります。築年数や建物の状態によっては適用できない場合があります。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。