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22年前、デビュー後4枚目で響いた“剥き出しのボーカル” 嘘のない“透明のメロディ”

  • 2026.2.20

「22年前、冬の終わりの柔らかな光を覚えているだろうか?」

2004年2月。街にはまだ冷たい風が吹いていたけれど、どこか新しい季節の予感に満ちていたあの頃。携帯電話の画面はまだ小さく、けれどそこから繋がる世界に誰もが胸を躍らせていた時代。忙しなく過ぎ去る毎日の中で、ふと立ち止まった瞬間に耳に飛び込んできた、温かくて真っ直ぐな歌声があった。

光永亮太『believe』(作詞:光永亮太、阿閉真琴・作曲:Sin)――2004年2月4日発売

派手な喧騒で塗りつぶすのではなく、心の隙間にそっと入り込んでくるような旋律。それは、当時の私たちが無意識に求めていた「等身大の肯定」そのものだったのかもしれない。

飾らない声が運んできた、新しい風の記憶

光永亮太というアーティストが登場したとき、音楽シーンには爽やかな衝撃が走った。2003年にデビューするやいなや、その圧倒的な歌唱力と、聴く者を包み込むようなオーガニックな質感を持つ歌声で、瞬く間に多くのリスナーを虜にした。彼の魅力は、何といってもその「透明感」にある。飾ることのない、けれど芯の強いボーカルは、どこか海風のような心地よさを運んでくれた

本作『believe』は、彼にとってメジャー4枚目となるシングルだ。デビュー当時の勢いをそのままに、より深く、より繊細に、表現者としての深みを増し始めた時期の作品である。この楽曲で彼が映し出したのは、誰もが抱える不安や迷い、そしてそれを乗り越えようとする内なる意志だった。

SinとYANAGIMANによって編み上げられたサウンドは、瑞々しいアコースティックの響きと、洗練されたリズムが絶妙なバランスで共鳴している。それは、当時のJ-POPが持っていた「温かみ」と、新しい時代に向かう「洗練」が同居した、特別な質感を持っていた。

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光永亮太-2004年撮影(C)SANKEI

鏡の向こうの自分に、そっと魔法をかけるように

この曲を語る上で欠かせないのが、TBS系ドラマ『コスメの魔法』との幸福な出会いだ。萬田久子演じるカリスマ美容部員が、化粧を通じて女性たちの心までも解きほぐしていく物語。そこで流れたこの曲は、ドラマのメッセージを鮮やかに補完していた。

「大丈夫、今のままでも十分に輝ける」

そんな優しい囁きのように聞こえたのは、光永亮太の歌声が持つ、嘘のない響きゆえだろう。ドラマを観終えた視聴者たちが、鏡の前の自分を見つめ直し、明日への一歩を踏み出すためのまさに心のサプリメントのような役割を、この一曲は果たしていたのだ。

作曲を手がけたSinによるメロディラインは、緩やかに上昇しながら、サビで一気に視界が開けるような開放感をもたらす。そこに重なる光永亮太と阿閉真琴による言葉たちは、日常の風景を鮮やかに切り取りながら、普遍的な祈りへと昇華されていった。

また、編曲に関わったYANAGIMANの職人技も見逃せない。リズムの刻み方ひとつとっても、聴き心地の良さを追求しながら、楽曲に確かな体温を宿らせている。この時代特有の、デジタルとアナログが美しく溶け合った音響設計が、20年以上経った今聴いても、全く色褪せない瑞々しさを保っている理由なのだろう。

季節が変わっても、消えない光を胸に

22年という月日が流れ、私たちの生活は劇的に変化した。けれど、ふとした瞬間にこの曲が流れてくると、2004年のあの冬の空気、そして春を待ちわびていたあの頃の感情が、鮮明に蘇ってくる。

光永亮太がこの曲に込めた「believe」という言葉。それは、単なる願望ではなく、自分自身と向き合い続ける覚悟のようなものだったのかもしれない。大きな成功や数字だけが音楽の価値を決めるのではない。たった一人の誰かの心に深く刺さり、その人の人生を支え続ける。そんな「名曲」の定義を、この歌は静かに教えてくれる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。