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27年前、『お仕事系ドラマ』主題歌を放った“8等身スター” 不器用な自分を抱きしめた“希望のメロディ”

  • 2026.2.20
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観月ありさ-1999年5月撮影(C)SANKEI

 

情報が溢れ、誰もが何かに急かされるように生きる2026年の現代。ふとした瞬間に、心の隙間を埋めてくれるような「体温のある音楽」を求めてしまう。そんな今だからこそ、この一曲を紹介したい。

観月ありさ『朝陽のあたる橋』(作詞:森浩美・作曲:T2ya)――1999年2月3日発売

派手な打ち込みのダンスミュージックがチャートを賑わせていた中で、この曲が持っていた穏やかな体温は、かえって新鮮に響いたものだ。

都会の隙間で、ふと足を止めた瞬間の静寂

1990年代を象徴するスターの一人である観月ありさは、常に時代の先端を歩んでいた。8等身という抜群のスタイルと、天真爛漫な笑顔。彼女が主演するドラマはどれも活気に満ち、お茶の間の元気を象徴する存在だった。

しかし、16枚目のシングルとして届けられたこの『朝陽のあたる橋』で彼女が見せた表情は、それまでの「元気な女の子」とは一線を画していた。

この曲は、自身が主演したドラマ『天使のお仕事』(フジテレビ系)の主題歌でもあった。彼女が演じたのは、なんと不器用な新米シスター。賑やかなコメディ要素はありつつも、根底に流れていたのは「誰かのために祈ること」や「自分自身の弱さを受け入れること」という普遍的なテーマだった。

そのドラマの世界観をなぞるように、楽曲もまた、等身大の女性が抱える迷いと、そこから一歩踏み出そうとする静かな決意に満ちていた。当時の私たちは、彼女の歌声を通して、自分たちの日常に潜む小さな葛藤を肯定してもらったような、不思議な安心感を覚えたのである。

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ドラマ『天使のお仕事』撮影現場より-1998年11月撮影(C)SANKEI

完璧じゃないからこそ届く、等身大のメッセージ

この楽曲の美しさは、何と言ってもそのサウンドプロダクションにある。編曲を手がけたのは、洗練されたキーボードワークと透明感のある音作りが印象的な葉山拓亮だ。彼の持ち味である、ひんやりとしているのにどこか温かい、クリスタルのような音の粒子が、冬から春へと向かう季節の移ろいを見事に表現している

作詞を手がけた森浩美は、SMAPをはじめとする数々のアーティストに歌詞を提供してきた名手。彼が紡ぐ言葉は、決して大げさな理想を語らない。目の前にある現実、思い通りにいかないもどかしさ、それでも捨てきれない微かな光。そうした「日常の機微」を掬い上げる筆致が、観月ありさの澄んだ歌声と共鳴した。

「橋」というモチーフは、過去と未来、あるいは理想と現実を繋ぐ場所。そこを一人で歩いていくときの、少し心細いけれど清々しい気持ち。彼女のボーカルは、過剰に感情を乗せるのではなく、素朴で真っ直ぐな響きを保っている。だからこそ、聴く側の心に土足で踏み込むことなく、そっと寄り添ってくれるような優しさが生まれるのだ。

派手な奇跡よりも、確かな一歩を刻む音

1999年の音楽シーンを振り返れば、それはまさにメガヒットが連発していた「狂乱の時代」だった。しかし、この『朝陽のあたる橋』は、そうした数字の競争からは少し離れた場所で、大切に育てられた花のような気品を漂わせている。

流行に左右されない良質なポップスが持つ強さは、時間が経てば経つほど、その純度を増していく。この曲は、誰かの孤独な朝を救ったという確かな記憶として、今も心の奥底で鳴り続けている。明日という橋を渡る勇気が少しだけ足りないとき、この曲はきっと、今も変わらず朝陽のように私たちを照らしてくれるだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。