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27年前、グループを飛び出し、たった一人で境界線を越えた“覚醒のデビュー曲” 

  • 2026.2.21

90年代が終わろうとする足音が少しずつ大きくなり、街には期待と不安が入り混じったような、形容しがたい浮遊感が漂っていた1999年2月。コンビニの棚には新しい時代を感じさせる雑誌が並び、テレビからはデジタルとアナログが交差するような、エッジの効いたサウンドが頻繁に流れ出していた頃だ。

そんな世紀末の喧騒の中、一人の女性アーティストがそれまでの「枠」を脱ぎ捨て、たった一人でステージに立った。

OLIVIA『I.L.Y. 〜欲望〜』(作詞:T2ya・作曲:T2ya)――1999年2月3日発売

「グループ」の枠を突き破る、剥き出しの意志

1999年という年は、日本の音楽シーンにとっても大きな転換期だった。前年に鮮烈なデビューを飾った新しい才能たちがチャートを席巻し、歌声の在り方や楽曲の質感に、より個性的で生々しい表現が求められ始めていた。そんな時代に、ダンスユニット「D&D」のメインボーカルだったOLIVIAが、ソロアーティストとしての一歩を踏み出した。

沖縄アクターズスクール出身という、当時の音楽シーンにおいて最強とも言えるバックボーンを持ちながら、彼女が選んだ道は「アイドル」の延長線上にはなかった。ソロデビュー曲となったこの楽曲で彼女が提示したのは、聴く者の耳を貫くようなハイトーンボイスと、どこか冷ややかで、けれど内側に猛烈な熱を孕んだ新しい質感のロックサウンドだった。

グループ活動で見せていた眩しい笑顔とは対照的に、この作品における彼女の表情は、どこか遠くを見つめるような、鋭く透き通ったものへと変化していた。それは、与えられた役割をまっとうする少女から、自らの声を武器に戦う一人の表現者へと変貌を遂げた瞬間でもあった。

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2000年、東京・渋谷NESTで初の単独ライブを開催したOLIVIA(C)SANKEI

デジタルと体温が交差する、氷のような熱情

この楽曲のサウンドプロデュースを手がけたのは、T2yaだ。1990年代後半から2000年代にかけて、デジタルとロック、そしてキャッチーなメロディを融合させたサウンドで数々のヒットを飛ばした彼の手腕が、ここでもいかんなく発揮されている。

鳴り響くタイトなビートと、硬質なギターリフ。そこに重なるデジタルシンセの音色は、まさに1999年という「近未来」への憧憬を体現している。しかし、その無機質になりがちなサウンドを圧倒的な生命力で塗り替えていくのが、OLIVIAの歌声だ。彼女の持つバイリンガルな感性が生む独特のグルーヴと、天を突くような高音域の伸びは、単なるデジタルポップの枠を完全に超えていた。

特に、サビで展開されるドラマティックな盛り上がりは、聴く者の感情を強制的に引き上げるような力強さがある。冷たいデジタルビートの上で、剥き出しの体温を感じさせるボーカルが躍動するその構成は、当時のリスナーにとって非常に新鮮な衝撃として映った。

静かに、でも確実に刻まれた“表現者”の足跡

派手な話題性や、数字の記録だけが音楽の価値を決めるわけではない。このデビュー曲は、特定のランキングのトップに君臨し続けるような爆発的なヒットではなかったかもしれない。しかし、その後の彼女が辿った、よりオルタナティブで独創的な音楽世界、深いダークネスと美しさを共存させ、間違いなくこの1999年の冬に刻まれていた。

流行に迎合するのではなく、自分の中にある「音」をどう響かせるか。そのストイックな姿勢は、デビューの瞬間からすでに完成されていたように思える。それは、単なるデビュー曲という言葉では片づけられない、一人の表現者が誕生したことを告げる、大切な序奏だったのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。