1. トップ
  2. 念願のマイホームも「電気代3万円超え」入居3ヶ月で“真っ黒なカビ”が…30代夫婦を襲った“落とし穴”【一級建築士は見た】

念願のマイホームも「電気代3万円超え」入居3ヶ月で“真っ黒なカビ”が…30代夫婦を襲った“落とし穴”【一級建築士は見た】

  • 2025.12.27
undefined
出典元:photoAC(画像はイメージです)

「『この家なら、冬でも半袖で過ごせますよ』という営業さんの言葉を信じ切っていました。まさか、引越し最初の冬に、アパート時代よりも高い電気代と、結露に悩まされることになるなんて……」

そう話すのは、Tさん(30代男性・夫婦+子ども2人)。

Tさんは昨年の10月、念願の「高気密・高断熱」の注文住宅に入居しました。引き渡し直後の秋は快適そのもの。「魔法瓶のような家」という説明通り、外が肌寒くなっても室内は暖かく、家族で「いい家を建てたね」と喜び合っていたといいます。

しかし、その満足感は、本格的な冬の到来とともに脆くも崩れ去りました。

入居3ヶ月で届いた“驚愕の請求書” ――想定外のコスト急増

最初に異変を感じたのは、年が明けて届いた12月分の電気料金の請求書を見たときでした。

「10月、11月はエアコンなしで快適だったので、電気代も8,000円台と安かったんです。ところが、寒波が来た12月分の請求を見て目を疑いました。3万円を超えていたんです。前の賃貸アパートでも、真冬でせいぜい1万5,000円程度でしたから……」

最新の省エネ住宅なのに、なぜ倍以上の光熱費がかかるのか。

原因の一つが「こまめなスイッチのON・OFF」でした。

電気代に怯えて暖房の設定温度を下げ、こまめにスイッチを切るようにした結果、家の中が底冷えするようになったのです。

「高気密住宅って、一度冷えると魔法瓶の中に冷気を閉じ込めたみたいになって、全然暖まらないのですね…」

電気代をケチった結果、家が“カビ”だらけに

節約のために暖房を制限したTさんを、次に襲ったのは「結露とカビ」でした。

年末の大掃除の際、北側の寝室のクローゼットを開けると、特有のカビ臭さが漂ってきました。

「服をどかして壁を見たら、真っ黒なカビがびっしりと……。新築ですよ?まだ3ヶ月しか住んでいないのに」

・高騰する電気代
・暖まらないリビング
・新築なのに発生したカビ

これらはすべて、Tさんが「高気密高断熱住宅の“正しい使い方”」を知らなかったために起きた悲劇でした。

Tさんは「性能が良い家を買えば、勝手に省エネになると思っていた」と後悔を口にします。

一級建築士が見る“冬の生活の落とし穴”

Tさんは、「家の性能」と「住まい方」のミスマッチを起こしていたのです。

1、24時間換気の停止
Tさんは「寒い空気が入ってくるから」と、換気システムのスイッチを切っていました。これにより室内の湿気が逃げ場を失い、壁内結露を引き起こしていました。

2、間欠運転によるエネルギーロス
高気密住宅は、冷え切った状態から適温にする際、莫大なエネルギーを消費します。「こまめに消す」という従来の節約術が、逆に電気代を押し上げていました。

3、部分暖房の弊害
「人がいるリビングだけ暖める」という使い方は、家の中に極端な温度差を生み、冷えた部屋(クローゼットや脱衣所)に激しい結露を招きます。

性能が良い車でも、アクセルをベタ踏みしたり急ブレーキをかければ燃費が悪くなるのと同じで、「高性能住宅には、高性能なりの運転技術」が必要なのです。

どう暮らせばよかった?――後悔しない冬の過ごし方

Tさんのような高気密・高断熱での「冬の光熱費&カビ」の失敗を防ぐには、意識改革が必要です。

1、換気は絶対に止めない
熱交換型の換気システムであっても、止めれば家は窒息します。空気の循環こそが結露防止の鍵です。

2、暖房は「低めで連続運転」
一度暖まったら、弱運転で24時間つけっぱなしにするほうが、結果的に電気代は安定し、家全体が暖まります。

3、加湿のしすぎに注意
高気密住宅は湿気がこもりやすい傾向があります。加湿器の過剰運転はカビの温床になります。

「“家を建てて終わり”じゃなかった」

「“住まい方の説明書”をもっと読んでおくべきだった」

Tさんは現在、建築会社のアドバイスを受けて換気を再開し、暖房の運転方法を見直しました。電気代はまだ高いものの、カビの進行は止まったといいます。

「“家を建てて終わり”じゃなかった。ハイスペックな家こそ、それを扱う知識がないと、ただの“金食い虫”になってしまうと痛感しました」

これから家を建てる人は、「“UA値(断熱性能)”などの数値だけでなく、“入居後の正しい運転方法”までシミュレーションしておく」。

それが、初めての冬に絶望しないための方法なのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】