1. トップ
  2. 「カッコよすぎ!」「神がかってる!」35年後も熱狂させる“強靭ボーカルの攻撃的ロック” 2人のカリスマが刻んだ“不朽の傑作”

「カッコよすぎ!」「神がかってる!」35年後も熱狂させる“強靭ボーカルの攻撃的ロック” 2人のカリスマが刻んだ“不朽の傑作”

  • 2025.9.26

1990年の春。街はまだバブルの余韻をまといながらも、その先に訪れる景気のかげりをどこかで感じ取っていた。雑誌やテレビには派手な映像や広告があふれ、人々は浮かれたムードを楽しんでいたが、その奥には「次の時代はどうなるのか」という不安が忍び寄っていた。

そんな空気を切り裂くように鳴り響いたのが、鋭いギターと強靭なボーカルが交差する一曲だった。時代の転換点に現れたその音楽は、聴く人々の胸に鮮烈な印象を刻み込んだのだ。

COMPLEX『1990』(作詞:吉川晃司・作曲:布袋寅泰)——1990年3月14日発売

二人の邂逅が生んだ、一瞬の輝き

『1990』は、COMPLEXにとって2枚目のシングルとしてリリースされた。布袋寅泰による緻密かつ攻撃的なリフと、吉川晃司のパワフルでドラマティックな歌声が重なり合ったサウンドは、まさにユニットの存在意義を証明するものだった。

発売からおよそ1か月後の1990年4月18日にはアルバム『ROMANTIC 1990』がリリースされるが、この曲はその先行シングルという位置づけでもあり、リスナーの期待を一気に高めた。

布袋と吉川、音楽シーンの中心に立っていた二人が、同じステージに立ち、同じ曲を鳴らす——そのこと自体がニュースとなり、ファンの間では「夢のユニット」として語られた。異色のカリスマ同士が正面からぶつかり合ったことで、化学反応は想像以上に強烈な輝きを放ったのである。

undefined
吉川晃司-2000年撮影 (C)SANKEI

音の鋭さに宿る“時代のスピード”

この楽曲の最大の魅力は、疾走感と緊張感を同時に抱えたサウンドにあった。イントロから繰り広げられる布袋のギターは、まるで刃物のように鋭く、聴き手の感覚を一瞬で研ぎ澄ませる。

リズムセクションは無駄のないタイトなビートを刻み、ひとつの塊となって疾走する。その上を吉川のボーカルが駆け抜けるように響き渡り、音と声がせめぎ合いながらも調和する瞬間に、圧倒的な熱が生まれた。

undefined
布袋寅泰-2006年撮影 (C)SANKEI

短い活動期間が生んだ、永遠の熱

『1990』が収録されたアルバム『ROMANTIC 1990』は40万枚を超えるセールスを記録し、COMPLEXの人気を決定づけた。アルバムはシングル曲と同様に鋭さと華やかさを兼ね備えたサウンドでまとめられ、ライブでも観客を熱狂させた。

だが、その輝きは儚くも突然に終わりを迎える。1990年11月8日の東京ドーム公演を最後に、COMPLEXは無期限活動休止に。まるで疾走する光が消えるように活動は途絶え、結果的に『1990』はユニット最後のシングルとなった。

衝撃のデビューと、あまりにも短い活動期間。その落差がさらにユニットの存在を神話的なものにし、記憶により深く焼きついた。

今も響く、刹那のロックンロール

35年という時間が経過しても、『1990』のイントロが聴こえてくると、胸の奥にざわめきが生まれる。勢いよく駆け抜けるそのサウンドは、当時のリスナーにとっても、今の世代にとっても、変わらぬエネルギーを持ち続けている。

一瞬だからこそ強く残り、短い時間だからこそ永遠になる。COMPLEXの最後のシングルは、まさにその真理を体現した作品だ。時代を駆け抜けたロックンロールは、今も記憶の中で走り続け、聴く人の心を揺さぶり続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。