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「お尻から血が出た…」“血便”に潜む病気に「緊急の受診が必要」「少量でも危険な場合も」【医師が警告】

  • 2025.8.31
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

トイレのあとにお尻から血が出ると、「これって痔?それとももっと怖い病気かも?」と心配になりますよね。血便やお尻の出血は、よくある症状ですが原因は様々。時には自分で判断できないことも多いものです。さらに、「便潜血検査」という言葉もよく健康診断で見かけますが、一体どんな意味なのかピンとこない方もいるかもしれません。
今回は、身体に関するさまざまな悩みを医師の目線で解説する、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニックの動画をご紹介。動画では、院長の柏木先生が『血便と便潜血について』紹介しています。

血便と便潜血の違いとは?

まず「血便」とは、便の中に血が混じっていて、肉眼で確認できる状態を指します。便の表面や中に赤い血がついているのが特徴で、見た目で分かるのが大きなポイントです。

一方「便潜血」は、便の中に血が混じっていても、肉眼では確認できないものをいいます。この場合は、健康診断などで行われる「便潜血検査」などの専用の検査を通じて初めて発見されます。

血便の色による違い

血便は「赤い血」とは限りません。

  • 鮮やかな赤い血:肛門に近い部位(直腸や肛門)の出血が多い
  • 黒っぽい便(タール便):胃や十二指腸など、上部消化管からの出血が考えられる

このように、血の色や便の状態から、出血の場所をある程度推測することができます。特に黒っぽい便は「下血」と呼ばれ、消化管上部からの出血の可能性があるため注意が必要です。

血便や便潜血の原因

考えられるもの

血便や便潜血には、さまざまな原因が考えられます。代表的なものを順に解説します。

1. 痔

最も一般的な原因が「痔」です。特に便秘でいきんだ時などに出血しやすく、肛門付近の静脈が切れて鮮やかな赤い血が便やトイレットペーパーに付着します。少量の鮮血であれば痔による可能性が高いと考えられます。

2. 大腸ポリープ

大腸にできる良性の腫瘍で、成長すると表面が傷ついて出血することがあります。放置するとがん化することもあるため、定期的な大腸内視鏡検査でチェックすることが大切です。

3. 大腸がん

早期の大腸がんでも少しずつ出血し、便潜血として検査で見つかることがあります。進行すると血便として目に見える形で出血することもありますが、初期は自覚症状が乏しいため、健康診断の便潜血検査は非常に重要です。

4. 潰瘍性大腸炎・クローン病

これらは「炎症性腸疾患」と呼ばれる病気で、腸の粘膜に慢性的な炎症が起こり、出血することがあります。潰瘍性大腸炎では「血と粘液が混じった便」が特徴的です。粘液は白っぽいものや透明なものがティッシュに付着することが多く、便の状態を観察することで異常に気付ける場合があります。

5. 感染性腸炎

ウイルスや細菌に感染することで腸に炎症が起こり、血便が出ることがあります。特に「腸管出血性大腸菌」に感染すると、激しい腹痛とともに血便を伴うことがあります。

6. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの上部消化管出血

胃や十二指腸で出血すると、血が腸を通過する間に酸化し、黒っぽい便(タール便)として排出されます。これは「上部消化管出血」のサインであり、緊急の受診が必要になることがあります。

健康診断で「便潜血陽性」が出たらどうすべき?

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出典:池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック

便潜血陽性=腸内のどこかで出血しているサイン

便潜血検査は、便の中に目では見えない微量の血液が含まれているかを調べる検査です。陽性と出た場合、腸内のどこかで出血していることが考えられます。

原因としては、

  • 痔(じ) のような良性の疾患
  • 大腸ポリープや大腸がん のように治療が必要な病気

などが含まれます。そのため、放置せずに大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受けて精密検査を行うことが重要です。

陽性=必ず危険ではない一方で、便潜血検査はあくまでスクリーニング検査(ふるい分け検査)です。ごく少量の出血でも陽性となるため、必ずしも重篤な病気とは限りません。

例えば、一時的な腸の炎症、痔による出血、食事の影響などでも陽性になることがあります。したがって、便潜血陽性=すぐに危険というわけではありません。

スクリーニング検査とは?

スクリーニング検査とは、多くの人を対象に簡易的に行い、病気の可能性がある人を見つけ出すための検査です。

便潜血検査もその一つであり、

  • 簡単に受けられる
  • 少しの出血でも拾い上げる
  • 異常があれば次の段階で精密検査を行う

という流れになっています。

つまり、便潜血検査自体が病気を確定診断するわけではなく、「精密検査につなげる入り口」としての役割を担っています。

受診をためらわないで

患者さんの中には「何年も前から出血があったけれど受診していなかった」という方も少なくありません。便潜血検査で陽性が続いていたのに放置していた、というケースも多く見られます。

「もっと早く来ていただければ…」と感じることも多いため、少しでも気になる症状がある場合には早めに医療機関を受診してほしいと思います。

当院では内視鏡検査を積極的に行い、より多くの方に検査を受けていただけるよう取り組んでいます。気軽に相談できる医師が身近にいること、それ自体が大きな安心につながります。

動画:『池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック
協力:『お尻から血が出た!これは痔なの?!血便なの?!便潜血ってなに?!|健康診断


池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院 院長:柏木 宏幸

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埼玉医科大学医学部卒業。東京女子医科大学消化器内科にて助教として勤務。複数の医療機関で臨床経験を重ね、2023年に現クリニックを開院。胃がん・大腸がんの早期発見と内視鏡検査の普及を目指し、企業や地域住民を対象とした健康診断や生活習慣病の治療をはじめ、一般内科および消化器疾患の診療に幅広く取り組んでいる。また、クリニックのYouTube(https://www.youtube.com/@HKa-wb4jw)を通じて医療知識や内視鏡検査の重要性を発信し、医療情報の普及活動にも尽力中。

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院:https://www.ikebukuro-cl.com

※本記事は動画の権利者に許諾を得た上で記事の制作・公開を行っています。