『強い薬』が効くとは限らない→医師が教える、“市販の胃腸薬”を選ぶときのポイントとは？

2025.8.26

「胃腸薬ってどれがいいの？」とドラッグストアでつい迷ってしまう人、実はとても多いんです。お腹のトラブルは誰にでも起こりうることですが、それに対する薬の種類や効果はさまざま。市販の胃腸薬は数多くありますが、どれを選べば自分の症状に合っているのか、正直わかりにくいですよね。
今回は、身体に関するさまざまな悩みを医師の目線で解説する、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニックの動画をご紹介。動画では、院長の柏木先生が『市販の胃腸薬について』紹介しています。

胃腸薬とは？主な種類と働き

市販薬の中でもよく見かける「胃腸薬」ですが、実際にはいくつかの種類に分けられ、それぞれ異なる作用を持っています。

制酸剤
胃酸を中和して、胃の粘膜を保護する働きがあります。食べすぎや飲みすぎで胃がムカムカするときや、胃酸が原因で胸やけを感じるときによく使われます。
粘膜保護薬
胃の粘膜に直接作用し、刺激から守る役割を果たします。胃の不快感や荒れが気になるときに用いられます。
整腸剤
腸内環境を整えることで、便秘や下痢などの排便トラブルを改善するお薬です。腸内フローラを整えることで、消化吸収を助ける効果も期待できます。

このように「胃腸薬」とひとくちに言っても、胃の不快感を和らげるものから腸の調子を整えるものまで、作用はさまざまです。

例えば、食べすぎや胃もたれ、胸やけが気になる方は胃薬（制酸剤・粘膜保護薬）、便秘や下痢で悩んでいる方は整腸剤 を選ぶなど、症状に合わせて適切に使い分けることが大切です。

処方薬と市販薬の違いについて

まず大前提として、処方薬と市販薬には大きな違いがあります。処方薬は、医師の診断に基づいて適切に処方される薬であり、それぞれの有効成分が十分な量で使用できるのが特徴です。たとえば、胃酸を抑える薬、粘膜を保護する薬、腸の働きを整える整腸剤など、症状に応じて単体で処方され、それぞれの「強み」を活かした治療が可能となります。

一方、市販薬は、医師の診察を受けずに薬局などで購入できる薬です。こちらは複数の成分を組み合わせた「複合薬」であることが多く、胃酸を抑える成分、粘膜保護成分、整腸成分などが1つの薬にまとめられています。そのため幅広い症状に対応しやすい反面、成分の量は控えめに設計されているため、症状が強い場合には十分な効果が得られにくいこともあります。

医師が教える市販薬の選び方とは？

「市販薬の中でどれが一番良いのか？」と迷う方も多いかもしれません。実際のところ、どの薬が最も優れているという答えはありません。それぞれの市販薬には特徴があり、含まれる成分や配合のバランスも異なります。

これは、家電製品に例えると分かりやすいでしょう。メーカーごとに強みがあり、価格やデザインなどで選び方が変わるのと同じように、市販薬も「どの成分が自分に合っているか」「実際に使ってみて効果を感じられるか」で選ぶことが大切です。

また、重要なのは「症状に合った薬を選ぶこと」です。たとえば、胃の不快感や胃酸過多が主な症状であれば、胃酸を抑える成分が含まれた胃薬を選ぶのが適切です。一方で、お腹の張りや下痢といった腸のトラブルが主体であれば、腸に働きかける整腸剤や下痢止めを検討する必要があります。

つまり、「強い薬＝良い薬」ではなく、自分の症状に合った薬を正しく選ぶことが、セルフケアにおいて最も重要だと言えるでしょう。

自己判断だけに頼らず、必要な時は受診を

市販薬は一時的な症状の改善には便利ですが、長引く症状や繰り返す不調を自己判断だけで対処するのは危険です。特に、胃腸の不調の陰には胃潰瘍や大腸の病気など、思わぬ疾患が隠れている場合もあります。

一方で、軽度の症状や一時的な不調であれば、市販薬を試してみるのも一つの方法です。どの薬を選んでいいか迷った時は、薬剤師や医師に相談し、症状に合った薬を正しく使うことが安心につながります。

動画：『池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック』
協力：『「胃腸薬ってどれがいいの？」内科専門医が市販胃腸薬について語る！』

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院院長：柏木宏幸

埼玉医科大学医学部卒業。東京女子医科大学消化器内科にて助教として勤務。複数の医療機関で臨床経験を重ね、2023年に現クリニックを開院。胃がん・大腸がんの早期発見と内視鏡検査の普及を目指し、企業や地域住民を対象とした健康診断や生活習慣病の治療をはじめ、一般内科および消化器疾患の診療に幅広く取り組んでいる。また、クリニックのYouTube(https://www.youtube.com/@HKa-wb4jw)を通じて医療知識や内視鏡検査の重要性を発信し、医療情報の普及活動にも尽力中。

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院：https://www.ikebukuro-cl.com

※本記事は動画の権利者に許諾を得た上で記事の制作・公開を行っています。