1. トップ
  2. 35年前、日本中が虜になった“ズレてる応援歌” バブルの余韻をユーモアで切った“型破りな風刺ソング”

35年前、日本中が虜になった“ズレてる応援歌” バブルの余韻をユーモアで切った“型破りな風刺ソング”

  • 2025.9.3

「35年前、深夜番組から流れてきたあの曲覚えてる?」

1990年の夏、日本はまだバブル景気の余韻をまとい、オフィス街も繁華街もエネルギーに満ちていた。毎日の仕事に追われながらも、どこか浮かれた空気が残っていた時代。そんな空気を皮肉とユーモアで切り取ったロックナンバーが、テレビから、街角の有線から響きわたっていた。

ユニコーン『働く男』(作詞・作曲:奥田民生)——1990年7月21日発売

彼らの3枚目のシングルで、伝説的深夜バラエティ『夢で逢えたら』(フジテレビ系)のオープニングテーマに起用された。結果として27万枚を売り上げ、ユニコーンのシングルとしては最大のヒット曲となる。

“働く男”のリアルをユーモラスに

奥田民生が描いたのは、デビュー曲『大迷惑』に連なる“働く男”の姿だった。会社や恋人、親の期待に応えながら奮闘する男の日常を、軽妙な言葉遊びで切り取っている。

またサウンド面でも、キャッチーなサビと、エキセントリックなアレンジの共存が、この曲を特別なものにしている。

サビは親しみやすく、ポップスとしての強度をしっかり持っている。一方で、イントロから展開されるリズムやコード進行は意外性に満ち、時に突拍子もないようなフレーズが飛び出す。整然とした流れに乗せず、あえて少し外した“ズレ”を仕込むことで、曲全体が不思議な高揚感を生むのだ。

聴きやすさとひねくれた実験性が同居する——その二重構造が、まさにユニコーンらしい“音楽の遊び”であり、リスナーを強烈に惹きつける要因となった。

undefined
ユニコーンのボーカル・奥田民生-1996年撮影 (C)SANKEI

深夜バラエティと響き合った軽快さ

『夢で逢えたら』は、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、清水ミチコ、野沢直子(後に降板)が出演し、90年代のテレビ史を語るうえで欠かせない伝説の深夜バラエティ番組だ。

そのオープニングに『働く男』が流れると、コントのユーモラスな空気とシンクロし、視聴者の記憶に強烈に残った。番組の持つ実験的な笑いと、楽曲の風変わりな明るさが響き合い、音楽とバラエティの幸福な結びつきが生まれていた。

リードトラックなのにまさかの“2曲目”

『働く男』のユニークさは楽曲だけではない。シングル収録順では、なぜか表題曲でありながら2曲目に置かれており、1曲目には『CSA〜ロック幸せ』が収められていた。

通常のヒット狙いのシングルでは考えにくい構成だが、ここにも“型に収まらないユニコーンらしさ”があった。リスナーにとっては戸惑いもありつつ、「やっぱり彼らは一筋縄ではいかない」と思わせる仕掛けになっていた。

ユニコーンを象徴する“ひねりの名曲”

『働く男』は、シングルとして最大のヒットであると同時に、ユニコーンというバンドの個性を象徴する1曲だ。キャッチーさとひねくれた仕掛け、共感と皮肉。そのすべてが絶妙なバランスで同居しているからこそ、時代を越えて聴き継がれている。

35年の時を経て耳にすれば、当時のテレビ画面や街のざわめきが一瞬でよみがえる。忙しい毎日の中で肩の力を抜かせてくれるような軽快さが、今も変わらず息づいている。

『働く男』は、ユーモアで日常を映し出しながら、時代を超えて響き続ける稀有なポップソングなのである。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。


【体験談募集】母が作ったラーメンに謎の黒い点々が…まさかの正体に「今でも理解できない」【2分で完了/匿名OK】